ウエストランド、M-1グランプリ優勝後の現在地 いつまでも変わらない関係性とコンビ間格差
#ウエストランド
7月31日に発売となったお笑い語り本「お笑いファン」(鹿砦社)に収められているインタビューの一部を当サイト限定で特別掲載。ウエストランドのおふたりの絶妙な掛け合いをご覧ください。
エントリー7261組と過去最多の出場者で争われた「M-1グランプリ2022」で18代目王者に輝き、一躍時の人となったウエストランド。それから半年以上経った今も勢いはとどまるところを知らず、テレビで見ない日はない状況が続く中、再びコンビ間格差が生じているという彼らの現在地に迫る。
――M-1に優勝して半年以上経ちますが、忙しさは変わらないですか。
井口浩之(以下、井口) 優勝直後は記憶がなくなるぐらいの忙しさで、そこまでじゃないですけど、いまだに休みなく働いています。
河本太(以下、河本) ちらほら相方一人の稼働が増えてきたので、僕は適度に休めています。家族サービスもできていますし、忙しいサラリーマンぐらいの状況ですかね。
井口 もっと忙しいサラリーマンはたくさんいますよ。こいつは連休もざらですから。
――2008年にコンビを結成して、2010年にタイタン所属。なかなかブレイクできない時期も長かったですが、どうして一度も解散せずに、ここまで続けられたと思いますか。
井口 なんだかんだ早くからお仕事があったんですよね。何もなきゃ辞めてる可能性もありますけど、忙しくないにせよ、一カ月先に予定が入っていると辞められないですしね。
――確かにウエストランドは早くから頭角を現して、テレビにも出ていましたよね。
井口 お笑いだけで食えないまでも、何かしら仕事はありましたからね。みんな何も仕事がないから解散すると思うので、するタイミングがなかったというのもあるかもしれないですね。
――一度も解散の危機はなかったんですか。
井口 よく聞かれますけど、トピック的なエピソードはないですね。かと言って、別に仲良しという訳でもないんですけど、他のコンビと変わらないと思います。めちゃくちゃ仲良いアピールをしているのに、本当は仲が悪い奴らよりは、仲は良いと思いますけど。
――M-1優勝後、コンビとしての変化はありますか。
井口 それまで僕だけの仕事しかなかったのが、コンビの仕事が圧倒的に増えましたね。そこが大きな変化です。
――井口さんのピン仕事しかない時期、河本さんはどんなモチベーションだったんですか。
河本 給料が折半なんですよ。相方が動いててくれればお金がもらえるので、仕事がないこと自体はなんてことなかったです。ただ家族がいるので養わなきゃいけないし、ずっと家にいると、それはそれで嫁さんに怒られる。だからリフォーム業を始めて、いくつか資格を取って、収入を補っていました。
井口 そんな奴に仕事が来るか! やる気ない奴って思われるだけだろう。
――コンビ間格差に焦りはなかったんですか。
河本 ないと言えば嘘になるけど、焦ってもしょうがないなと。もちろんテレビには出たいんですけど、なにぶん技術もないですから。
――井口さんからアドバイスすることはあったんですか。
井口 ありましたけど、言ってもしょうがないというか。この感じなんで、すぐに忘れるし。おそらく来年にはまたいなくなるんじゃないですかね(笑)。
――一貫してネタ作りは井口さんが全てやっているんですよね。
井口 そうですね。だから相当すごいと思うんです。デビューして間もなく『オンバト+』(NHK総合)に出たり、『THE MANZAI』で認定漫才師になったり。結果、M-1で優勝してるんですけど、一つもネタに定評がないんですよ。『お笑いファン』って本のインタビューでアレですけど、お笑いファンからは相当軽んじられていると思います。
――ウエストランドの漫才は、初期に比べると、どんどん河本さんのセリフが少なくなっていますよね。
井口 そりゃあボケの人が憑依して、いろんなことをやってくれるんだったらありがたいですけど、できないんで。ボケを多くしたこともありますけど、3行ぐらいでスラスラ言えなくなるので諦めるしかなかったんです。他の人とやっていれば、2016年ぐらいにはM-1で優勝してたと思いますよ。
――それでも優勝できたわけですからね。
井口 相当すごいですよ! 最悪なパートナーと優勝できた訳ですから、とんでもない偉業だと思いますけどね。
河本 僕ができないので、どんどんセリフが少なくなっていって、最小限のセリフで相方について行ったら優勝したので、間違いなくこいつは天才です。
――番組の企画で、他の芸人さんとコンビを組む機会もありますよね。
井口 あります。誰と組んでもやりやすいですし、なんなら一般の人でもやりやすい、こんなにやりにくい奴はいないですよ。
河本 誰でもできますから。
――自分で言うんですね(笑)。でもYouTubeチャンネル『ウエストランドのぶちラジ!』(YouTubeやPodcastで配信されているラジオ形式の番組)を見ていると、河本さんの発言量も多いですよね。
井口 ラジオですから、誰だってブスッとしたままはやれないですよ。ただ、よく考えたらラジオでも大して喋ってないんですよ。エピソードトークの一つもしないんだから。普段のイメージが本当に喋らないから、「ラジオだとめっちゃ喋りますね」って言われるんですけど、みんなのハードルが下がっているだけなんです。
――テレビのバラエティに臨むにあたって、今日は喋ろうみたいな気持ちはあるんですか。
河本 昔は“我”みたいなものもありましたけど、隣がこんなんなんで、だんだん「まあ、いいや」ってなっていきました。
井口 人のせいにするな!
河本 全部やってくれるし、結果も出してくれるし。なんなら僕がやろうとしてもワーッて言われるんで、じゃあいいやって。
井口 喋ったところでウケないと意味がないですからね。
――MCの方から、河本さんに振られることも多いわけですよね。
井口 ありがたいことにM-1優勝後は特にそうですね。
河本 優勝してからはコンビで呼んでいただくことも多いですし、振ってくださることも多いんですけど、名だたるMC陣をことごとく裏切ってきましたから。だんだん振られなくなっていますし、振られても変なことを言っちゃうんですけど、どっちみち相方が何とかしてくれるんで。
井口 自分でやれよ! インタビュアーの方も今ちょっと怒ってるはずだよ。振られてるのに、ちゃんと答えてないんだから。
――そういうお二人のやり取りがハマることもありますよね。
井口 キャンプとか資格の話をして、(明石家)さんまさんが食いついてくださったりして、パチッとハマるときもあります。それが笑いになるんで、僕からしたら、それをどんどんやってほしいなと思いますけどね。
河本 みなさんそう言ってくださるんですけど、自分では何が良かったのか分からないんです。逆に自分で「今日良かったな」って思ったときが、すごく良くなかったりするんです。
井口 全カットになったりしてな。だからピンチですよ。
河本 手応えがあったときがダメで、相変わらず今日も何もできなかったなというときに良かったよって言われて……。
井口 辛い人生ではありますよね。
河本 だから、あんまり深く考えなくていいやと。
――多忙で一つひとつの仕事を振り返るのも難しいですよね。
井口 そうですね。そんなにじっくりとかはなかなか。反省してたらキリがないっていうのもありますしね。
――井口さんは様々な局面で毒舌を求められることも多いかと思いますが、これは難しいと感じたことはありましたか。
井口 僕としては、毒舌というつもりでやっていないですからね。ウケることを考えてやっているだけなんですけど、それがキャッチーに捉えられているだけで。そもそも、僕は意外と酷いことは言わないですから。誰かの暴露をしているわけでもないですし。地上波でも大丈夫な範囲でしか基本は喋ってないです。あと、こんな奴が言ったところで、相手にされてないというのもありますけど。
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取材・文=猪口貴裕/写真=増永彩子
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