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【緊急寄稿】文春vs木原官房副長官…「迷宮」入りした事件をめぐる攻防を沖田臥竜はどう見る?

「週刊文春」は疑惑追及のキャンペーンを継続中

4年前にサイゾーから出版された沖田臥竜氏の書籍『迷宮』がここに来て大きな話題になっている。迷宮入りしたとされる、未解決事件の深層をレポートした本書の一編に、「週刊文春」が独自報道を続ける、木原誠二官房副長官の妻が、その元夫の不審死に深く関与しているのではないかという、いわゆる「木原事件」と相似したケースが掲載されていたからだ。沖田氏は、2018年にこの事件の再捜査が始まった直後から、事態の推移を把握していたということなのか。一方、文春は、これまでに4週にわたり追及記事を掲載、さらに当該事件の取調官だった元警察官も登場し、報道と疑惑は混迷を深めているが……ここまでの流れを沖田氏はどう見るのか?

本当に「事実無根」「マスコミ史上稀に見る人権侵害」といえるのか

《会見速報》木原誠二副長官妻の元夫“怪死事件”をめぐり遺族が記者会見 「テレビや新聞で広く報じてほしい」と涙の訴え

 木原誠二官房副長官(53)の妻X子さんの元夫・安田種雄さん(享年28)が2006年4月に文京区大塚の自宅で不審死した事件をめぐり、7月20日、種雄さんの遺族が東京高等裁判所内の司法記者クラブで会見を開いた。これに先立つ7月17日付で遺族は管轄の警視庁大塚警察署長に宛てて、捜査再開を求める上申書を提出していた。

(「文春オンライン」より引用)

  7月5日、「週刊文春」が木原誠二官房副長官の妻X子さんの前夫不審死事件の第一報を報じると、木原副長官の代理人らは、「司法記者クラブ、新聞社各位、テレビ局」宛に、「御通知(至急)」と題した文書を送付。その中で、「事実無根」「マスコミ史上稀にみる深刻な人権侵害と言わざるを得ません」「その結果、依頼人とその家族の人権が著しく侵害されることになりました」「文藝春秋社及び記事掲載にかかる関与者について刑事告訴を行い、法治国家における、このような取材及び報道のあり方の公正さ、社会的相当性について公に問う」などと文春を厳しく糾弾したのだった。対して、文春側と歩調を合わせる形で行われたのが、冒頭に紹介した安田種雄さんの遺族による記者会見である。東京高等裁判所内の司法記者クラブで会見を開いた遺族は「事実無根ではない」「真実が知りたい」と訴え、捜査再開を求める上申書を警察に提出する事態になったのだ。

 2006年4月に都内で起きた不審死事件が、17年の時を経て、その真相をめぐり、加熱してきたわけだが、文春が本件を報じたとき、私の個人的感想は「ついにこの時が来たか」というものだった。

 文春の報道から、2018年に始まった本件の再捜査にかかわった捜査関係者が、文春サイドに当時の捜査状況を積極的に伝えているのだろうな、という感触があった。それは捜査関係者しか知り得ない内容だったからだ。だが、はっきり言ってしまえば、それだけだった。文春によって真相が明らかにされたわけでも、疑惑が深まったわけでもない。だが、報道の波紋は拡大し、その後、捜査に関わった元取調官までが実名で告白し、記者会見するまでに加熱することになる。その原因の一旦となってしまったのは、木原副長官の代理人弁護人から出された前述の「御通知」の文言にあったのではないだろうか。

 現時点で、真相はもちろん誰にもわからない。だが、すべてを「事実無根」「マスコミ史上稀に見る人権侵害」と言われれば、文春は、それを引用し、反論記事を出すのに躍起になるに決まっているではないか。

 もちろん、木原サイドからしたら、X子さんが元旦那を殺害したことについては、断固として抗議したい気持ちはわかる。しかし、すべてが「事実無根」かといえば、果たしてそう言い切れるかといえば、違うだろう。例えば、警視庁サイドは、安田種雄さんの死因について、自殺であったかどうか疑念を持ち、2018年に再捜査を開始している。それは事実だ。その際、家宅捜索や任意によるX子さんへの事情聴取までなかったかといえば、そうではないだろう。それも事実である。

 未解決事件とは必ずしも、殺人事件だけを指す言葉ではない。交通事故だって、解明されていなければ未解決事件である。2006年当時、安田さんの死はあくまで「自殺が濃厚」というもので、自殺として断定されたものではない。つまり完全解決はしてないのだが、こういった案件は、その後はまず捜査されることはなく、未解決事件となるのだ。

 だが、2018年に警察署のロッカーに眠っている資料を見返していた捜査員の1人が「これは他殺の可能性があるのではないか」と疑問を持ったことから、今日に続く疑惑が生まれたのだ。一方で、当時の捜査資料の現場写真が少な過ぎたことも、立件や真相究明への懸念材料になっていたといわれている。

 私が断定した書き方を極力したくないのは、その先の真実に辿り着く要素が本当にあるのか、と思うからだ。商業媒体でもある週刊誌には「週刊誌ジャーナリズム」という独特の価値観が存在し、そこには必ずしも「正義」が前面にあるかと言えば、そうではないだろう。対して、犯罪もしていないのに、そんな週刊誌に記事にされたことを恨みに思う人たちも必ずいるのだ。

 そうした記者たちの葛藤は、これから始まる、私が原作を務めたマンガ『インフォーマ』の中でも描かれている。スクープを出した記者が、必ずしも諸手を挙げて喜んでいると思うか。記者は、バズれは満足というようなYouTuberではない。みんな苦悩の中で、仕事だからやっているのだ。それを「たかだか記者ごときが」と否定されれば、誰だってムキになる。それが、「御通知」なる文書を突きつけられた、今回の文春の気持ちではないだろうか。誰だって必要以上にぶった斬られれば、「なにを!」とならないか。

 私はいつも客観的に物事を見ている。それは自分のことにおいてもだ。木原官房副長官の妻のX子さんの記事が波紋を呼び、現在、私が4年前に「ビジネスジャーナル」で書いた記事【参照「警視庁が秘かに追う13年前の自殺」】や、さらなる詳細を記したレポートを収録した書籍『迷宮』がクローズアップされている。それが、今回の文春が報じた件と同じかどうか、私は明言しない。明言する気があるならば、そもそも原稿で伏字など使ってはいない。当時も今も、この事件に関しては伏字にするべきだと判断したからこそ、そこについては言及しないのだ。私は常に人よりも、もっともっと先を見ている。そして小説『インフォーマ』の中にも、わからないように描いているところがある。まだ、それは誰にも気づかれていない。

 そういえば、先週、テレビを観ていてCM中にパッと携帯を触るとTwitterのフォロワーが急に増えていて、「なにっなにっなにっ、オレなんかしたの!?」とびっくりさせられたのだが、前述した通り、4年前に私が書いていたことを百田尚樹さんが取り上げてくれていたからだった。自らなにも仕込んでいないのに、突然フォロワーが増えたりするのは初めてだったので、ヒヤッとさせられたのだった。

 小説『インフォーマ』の中にも書いてあるが、本当に凄い人間というのは、誰にも気づかれないから凄いのである。だが自分だけは理解しているのだ。自分が誰にも真似できないくらい努力し、人のために汗を流してきたことを。それを、ジャンルを問わずに、世で「天才」と呼ばれる人間が、ときに見抜いてみせるのである。

 行間を読むという言葉があるが、そういった視点で、小説『インフォーマ』、そして、話題になった記事が収録されている『迷宮』を読んでもらえれば、何か見つけてもらうことができるかもしれない。

(文=沖田臥竜/作家)

『迷宮 三大未解決事件と三つの怪事件』


沖田臥竜/1430円(税込)
文京区変死事件、足立区強盗殺人事件、歌舞伎町雑居ビル火災、世田谷一家殺人事件、八王子スーパーナンペイ事件、 柴又・女子大生放火殺人事件……報道されることのなかった怪事件から「三大未解決事件」まで、6つの闇の奥にあったものとは?

 

 

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/08/09 10:38
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