『ローカル路線バス乗り継ぎの旅W』赤江珠緒の“ポンコツ感”がぬるさを払拭する?
7月22日に『ローカル路線バス乗り継ぎの旅W』(テレビ東京系)が放送された。
以前、放送されていた『ローカル路線バス乗り継ぎの旅Z』のメンバーである羽田圭介&田中要次は、残念ながらリストラに遭った模様。一部の視聴者から「田中不要次」とまで揶揄された田中のやる気のなさが足を引っ張ったか? そして、羽田は今回の新シリーズをテレビで見ていただろうか?
兎にも角にも、新シリーズだ。Zの次だからWであり、WはWOMANの頭文字でもある。今回のバス旅のメンバーは、番組史上初の全員が女性。赤江珠緒、三船美佳、高城れに(ももいろクローバーZ)の3人であった。路線バスだからといって、徳光和夫のお守りをする田中律子はいない。
率直に言って、変な組み合わせだ。どうやって選んだのだろうか。どういう人選? この3人が、ときに訪れる10キロ単位の長距離を徒歩という決断に踏み切れるのか? あと、かつて『正直さんぽ』(フジテレビ系)の枠で放送されていた、関根麻里、柳原可奈子、松岡茉優による『正直女子さんぽ』はいつの間にかしれっと終了してしまっただけに、こちらは長く続くかも見ものだ。
ちなみに、三船と高城に関してはバス旅系の番組にすでに出演済み。赤江だけが初体験だ。似たような髪型をしているが、決して“軍曹” 村井美樹ではない。メインパーソナリティを務めていた帯番組『たまむすび』(TBSラジオ)から卒業して時間ができた分、赤江の仕事の幅は広がったらしい。彼女が、いわゆる“ポンコツ芸人枠”か? あと、三船がいるだけに絵的に一気に“旅サラダ感”が漂ってしまうのも強烈だ。
女性だけの3人旅である。しかも、タイプ的に3人全員の性分が仕切りたがり。これは揉めないわけがないだろう……という期待感がある。そもそも、この番組は道中にこぼれ落ちるギスギス感を楽しむ番組だ。
ももクロ・高城れに、バス旅の怖さを認識していない?
今回は、栃木県中禅寺湖から千葉県野島埼灯台を3泊4日で目指す旅のよう。関東から関東を、チェックポイントもなしに3泊4日で行く旅だ。はっきり言って、楽勝なのでは? 太川陽介や羽田&田中なら2泊でも行けてしまう気がする。
地図を広げる際、高城は「今回のルートは……」とつぶやいたが、進むルートを決めるのは番組ではなく出演者たち自身だ。オープニングを見ただけで少し不安になったが、大丈夫だろうか?
「私、館山(野島埼灯台は館山の近く)で1回バーベキューしたことあって、めっちゃ良かったんで、早く着いたらバーベキューしたい」(高城)
「早く着いたら」と、バス旅の怖さを認識してない感がだだ漏れの高城。さらに、恐れ知らずの態度を貫く彼女。日光を経由してゴールを目指そうという話になった際、こんな希望を口にしたのだ。
「(日光東照宮に)行きたいです、行ったことない! 修学旅行で1個上の代まで日光だったんですけど、私の代から長野県になっちゃって」(高城)
日光への想いを語っているうち、無意識に長野ディスの流れ弾を撃ってしまう高城。というか、ももクロのメンバーが丸々4日間スケジュールを空けられるようになったのも、かつてを思うと信じられないキャスティングだ。
女性3人組という並びのメリットは、出発してすぐに表れた。中禅寺温泉バスターミナル・インフォメーションセンターの男性職員に乗り継ぎについて質問すると、ありえないくらい根気よく各バス停の発車時刻を調べてくれたのだ。相手が羽田&田中だったら、こんな親身にはなってくれなかった気がする。ひょっとして、モノノフなのだろうか?
過酷なバス旅が、緊迫感のかけらもない女子旅に
今回のバス旅の特徴として強く印象に残ったのは、キャピキャピした雰囲気だ。
路線バスに乗り込む際、整理券を取り忘れるなどバス慣れしていない様子が窺えた彼女たち。席に着くと、そこからは和気あいあいとしたトークが展開された。番組が開始してわずか10分弱で、羽田&田中が2時間半で交わすであろう会話量をあきらかに超えている。どれだけ羽田&田中が会話していなかったか、3人のやり取りを見て気付かされた。
ただ、この元気がいつまで持つかが見ものだ。というか、このお気楽な雰囲気のままでは単なる女子旅で終わってしまう。それこそ、『朝だ!生です旅サラダ』(テレビ朝日系)となんら変わらない。
そんなこんなで、宇都宮に到着した一行。
「宇都宮だもん、餃子とビールじゃん。ランチビールとかダメなのかな?」(三船)
「餃子を食べて、(それからバスに)乗ります!」(赤江)
宇都宮に来た途端、“餃子ファースト”になる始末だ。基本、考えが甘い3人。これは、田中要次が3人いるようなものか?
バスに乗って真岡市台町に着いた一行は、県境に向かって歩くことに。すると、線路沿い付近でSLの“ポゥ~!”という汽笛が聴こえてきた。
「あぁ~! SL~! カッコいいーー!」(三船)
沸きに沸く女子旅御一行。というか、バス旅なのにSLの登場にアガるスイッチがよく考えると不可解だ。
その後、カフェに入店してタピオカを飲むなどキャッキャし続けた3人。結果、1日目の旅は小山で終了となった。どうやら、1日で栃木を脱出することはできなかったようだ。
この日の総括を兼ね、宿の近くで食事をとった3人。彼女たちが選んだのはイタリア料理店で、入店してすぐにいちご入りのスパークリングワインをオーダーするという展開が新機軸である。今までのバス旅を思い出すと、スゴい映像だ。1杯1,188円と、スパークリングワインの値段も妙に高いし。前シリーズでは、居酒屋で羽田が生中を一気飲みするのがお決まりだった。
今のところただの女子旅でしかなく、緊迫感のかけらもない。もはや、全員がマドンナみたいだし。華やかすぎて、別企画を見ている感覚なのだ。視聴者は、出演者が苦しむ姿をもっと見たいのだけど……。
次第にポンコツ具合を露呈し始める赤江珠緒
夜が明けて、バス旅の2日目はスタートした。
それにしても、三船のファッションがスゴい。頭にターバン風の布を巻き、意気揚々と登場する三船。MISIAというかSPEEDの新垣仁絵というか、フランソワーズ・モレシャンみたいなのだ。風呂上がりみたいにも見える。
その一方で、次第に持ち味を発揮し始めたのは赤江だ。食堂のお蕎麦を食べ、直後にバスに乗った一行。車中では高城がももクロに入った経緯を語っていた。その隣で、うなずきながら高城の話に耳を傾ける三船。また、その隣では赤江もじっくり話に聞き入っている……と思いきや。
「でも、輝き続けてるからすごいですよねぇ……ねえ、眠い?」(三船)
「ハハハハハ! すごく心地いいなと思って(笑)」(赤江)
全然会話に加わらないと思ったら、普通に寝ていた赤江。昼食を食べ、車に揺られると眠くなる病は、完全に蛭子ばりだ。隣に太川がいたら、どうなっていたことか。
千葉県野田市~柏市のルートにおいては、徒歩を選んだ一行。途中でバスに乗れたら、儲けものだが……。
「あ、あれ、バス停?」(赤江)
赤江が指した先にあったのは、バス停ではなくゴミ置き場だった。バス停の時刻表とゴミ置き場のカレンダーを、彼女は見間違えたらしい。だんたんと、ポンコツ具合を露呈し始める赤江。
3日目は、もっとヤバかった。バスの乗り継ぎがうまくいかず、苦境のなかで策を練る3人。ここで、赤江は口を開いた。
「こういうのは、乗ってもいいんだよね?」(赤江)
駅の掲示板に貼ってあるトロッコ列車のポスターが視界に入り、ひらめいたつもりになる赤江。
「これはダメじゃないんですか? バスじゃないから」(高城)
「あ、そっか。バスだもんね(苦笑)」(赤江)
「そろそろ疲れてきてるから、休みましょう(笑)」(三船)
「ごめん。なんで、これを乗っていいと思ったんだろう?」(赤江)
論外のプランをブチ上げ、みんなから休養を勧められる赤江。彼女も自問していたが、なぜトロッコをアリと思ったのか? 彼女を見ると、顔がまっかっかだ。3日目にして壊れ始める赤江。
赤江だけじゃなく、3日目はほかのメンバーもキツかったらしい。この日の締めの食事を見ると、豚肉のお好み焼きにハイボールであった。1日目はあんなにキラキラした食事風景だったのに、急に食べものが男臭くなる3人。いい雰囲気だ。太川の名言に「3日目がギスギスする」という語録があるが、ようやく彼女たちも大変さが沁みてきたようだ。
なのに、夜が明けて4日目の服装を見ると、普通にサンダルを履いている三船。この本気感のなさが、彼女の通常運転か。
なぜ、今回のバス旅は物足りなかったか?
言っても、今回はかなり簡単なミッションである。4日目は、大きな波乱もなかった。
強いて言えば、バス乗車中に3人全員が遠慮なく寝る前代未聞のシーンが登場したくらい。前シリーズまでは太川か羽田が必ず起きていたから、メンバー全員が寝るというミラクルは今回が初めてだったと思う。
そんな“らしさ”を経て、4日目の午後4時26分に一行は野島埼灯台にゴール! 栄えある初回は、3人のメンバーの笑顔で終了した。
かなり期待して視聴した新シリーズだったが、感想としては“仲良し女子旅”に終止し、ぬるすぎた気がする。我々のようなバス旅ファンは、ギスギスの瞬間を期待しているからだ。だから、物足りなかった。
お互いを気遣いつつ、探り探りな感じは女子旅っぽくもあった。ただ、遺恨を残さないキャスティングで置きにいきすぎた感は無きにしもあらず? 腹黒さや、笑顔の下にあるドロドロの部分が出ないと、女性でのみでキャスティングする意味はあまりない気がする。正直、「別の番組を見ている?」と思うくらい今までとは違う内容だった。
性格のいい人ばかり揃えるのではなく、毛色が違う人を混ぜたほうが絶対におもしろい。協調性があり、感じのいい人ばかり揃えても、イレギュラーなおもしろに出くわさないのだ。端的に、オチ担当が必要だ。とはいえ、安直に芸人を入れるのも違うと思う。わかりやすく言うと、“女性版・蛭子能収”がいてほしい。もちろん、簡単な話じゃない。蛭子のような、憎めないクズ芸能人は希少な存在だからだ。実は、今までのバス旅は初代(太川&蛭子)も二代目(羽田&田中)も絶妙なバランスだった。
もし、このメンバーのまま続けるとしたら、鍵になるのは赤江。ラジオで発揮していたポンコツっぷりを、バス旅でも引き出すしかない。
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