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『VIVANT』堺雅人演じる主人公こそが最大の謎…「VIVANT=別班」はミスリード?

『VIVANT』堺雅人演じる主人公こそが最大の謎…「VIVANT=別班」はミスリード?の画像
ドラマ公式サイトより

 堺雅人が主演を務めるTBS系日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』の第2話が、25分拡大の79分スペシャルで7月23日に放送された。「冴えない商社マン」乃木憂助(堺雅人)が誤送金問題の濡れ衣を着せられたことを発端に、壮大なスケールの”アドベンチャードラマ”である本作。タイトルである「VIVANT」の意味が早くも第2話で解明される展開にはミスリードとの考察もされ、逆にますます謎が深まっている。

 誤送金問題を発端に砂漠の広がる国「バルカ共和国」でテロリストと誤解され現地警察に追われた乃木。警視庁公安部の捜査員で乃木を保護するとしている野崎守(阿部寛)、巻き添えを食らって行動をともにすることになった日本人医師・柚木薫(二階堂ふみ)の3人は何とか日本大使館にたどり着いた。

 そこで日本に帰国するために大使の西岡英子(檀れい)に協力を要請。快諾する西岡だったが、実は裏ではバルカの外務大臣・ワニズ(河内大和)とつながっており、バルカ側に情報を流す。乃木たちが脱出に使った大使館の極秘トンネルの出口には現地警察のリーダー格・チンギス(Barslkhagva Batbold)ら地元警察が待ち構えていた。野崎は大使の通訳・ナジュム(ブルース・テイラー)の協力を得て、逆に大使館に戻り、野崎の協力者・ドラム(富栄ドラム)と合流し脱出に成功する。

 しかし、国境の警備はすべて厳しく固められており、やむなく現地人も「死の砂漠」と恐れるアド砂漠を横断するルートを取ることに。厳しい自然環境のなかを進む一行だったが、薫の姿が乗っていたラクダの背からいなくなっているシーンで第2話は幕を閉じる。

 緊迫した脱出劇の後は砂漠の美しい景観と、息をするのも忘れるぐらい見ごたえ抜群だった第2話。早くも物語の核心に迫る謎解きもあり、放送終了後もSNSはトレンド1位に輝くほどの盛り上がりを見せた。

 第1話でテロ組織の幹部・ザイール(Erkhembayar Ganbold)が乃木に放った「ヴィヴァン」という言葉の謎に野崎が挑む。バルカ人が「ベッカン(別館)」を「ヴィカン」と発音することから「ヴィヴァン」は「ベッパン=別班」ではないかと推察する。劇中のセリフにもあったように、実際に2013年に共同通信が〈陸上自衛隊の秘密情報部隊〉として陸上幕僚監部運用支援・情報部別班(別班)に関する報道をし、菅義偉内閣官房長官(当時)が記者会見で存在を否定したことがある“闇の組織”だ。

 しかしはたして本当に「VIVANT」は別班のことなのか。時折挟まれる回想シーンからして、乃木は幼少期に両親が何らかの組織の犯行の犠牲になり、自らも拉致された過去があると見ていいだろう。フランス語の「VIVANT」の和訳「生きている」が、乃木が何らかの事件の「生き残り」を意味するとも考えられる。野崎が言及していた、得体の知れない謎の組織「テント」と関係があるのだろうか。野崎が調べた乃木の経歴には「怪しいところがひとつもなかった」とのこと。乃木が本当に公には存在が認められていない別班の諜報員なのだとしたら、乃木の過去の経歴が改ざんされていても不思議ではない。ザイールやその背後にいる組織・テントの話を聞くと、乃木がその情報の出どころを野崎に確認していたのも気になる行動だった。

 ただ、乃木の命を救ったバルカの少女・ジャミーン(Nandin-Erdene Khongorzul)は人間の善悪を直感的に見抜くことができるといい、乃木のことも信頼していた。となると、やはり乃木の二重人格的な要因がカギとなるのか。前回も触れたが、マルチリンガルでCIAに親友がおり、イスラム教の作法にも通じ、手に乗せるだけで1kgまでならほぼ10gの誤差に留めて重さを量れるという謎の特殊能力を持つ……とてもただの冴えない商社マンには思えない。乃木にしか見えない“もうひとりの乃木”が妙に野崎を警戒しているのも気になる。いったい乃木憂助とは何者なのか。こここそが本作の最大の謎といえそうだ。

 本作のキャッチコピーでもある「敵か味方か、味方か敵か」の通り、裏切りを重ねて進むストーリーに毎回ハラハラされられることになることを考えると、野崎の推理どおりにそのまま「VIVANT」が別班を意味するとは考えにくい。テロ組織の幹部であるザイールですら、“VIVANT”が目の前に現れたと知るや、「家族を守るために」自爆を決行するほどであり、一国家の裏組織にとどまらない、もっと恐ろしいもののように思える。

 裏切りといえば、第2話では大使の西岡が裏切り、逆にいかにも怪しそうな行動を取っていた通訳のナジュムが野崎に協力していた。来週からは舞台は日本に移り、誤送金問題の謎に挑むことになりそうだが、ここでも意外な人物に足元を救われる展開になりそうなのは想像にたやすい。薫がジャミーンを託した看護師のイリア(真凛)も気になる存在だ。ドラムに渡すためのジャミーンの薬や点滴を、病院へ捜査にきたチンギスの目の前で落としてしまうシーンがあったが、チンギスは特に問い詰める様子もなく親切に拾い上げて渡し、院内へ入っていく。実はこれが伏線になっており、後に乃木たちをピンチに陥らせることになるのでは……というのは考えすぎだろうか。いや、逆にそれぐらいスリリングな展開に期待したい。

 次回予告では、日本でのシーンが描かれ、ハッカーの役で出演している濱田岳の姿も。登場人物も一気に増え、ファンが今か今かと待ちわびる松阪桃李の初登場への期待も高まる。ただ、バルカ脱出も手に汗握る展開がまだまだ控えていそうだ。今夜放送の第3話も15分拡大版。放送枠もスケールも通常の枠では収まりきらない好発進ドラマは、今夜も我々を素晴らしい冒険に連れていってくれるだろう。

■番組情報
日曜劇場『VIVANT
TBS系毎週日曜21時~
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、迫田孝也、飯沼愛、山中崇、河内大和、馬場徹、二宮和也、井上順、林遣都、檀れい、濱田岳、坂東彌十郎、橋本さとし、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李、役所広司 ほか
プロデューサー:飯田和孝、大形美佑葵、橋爪佳織
原作・演出:福澤克雄
演出:宮崎陽平、加藤亜季子
脚本:八津弘幸、李正美、宮本勇人、山本奈奈
音楽:千住明
製作著作:TBS
公式サイト:tbs.co.jp/VIVANT_tbs

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/07/30 12:00
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