フジテレビ『27時間テレビ』が面白かった、と言えてうれしい
#テレビ日記 #飲用てれび
ノブ「人を笑かすのが嫌いになりました」
さて、千鳥やかまいたちやダイアン、そしてほいけんたも声優を務めた『サザエさん』の時間などを挟み、『27時間テレビ』はエンディングへ向けて加速する。
まずは、鬼レンチャンの名物企画である400m走サバイバル。相変わらず奇天烈な言動を繰り返しながらスパイク着用などダーティーな立ち回りも見せる森脇健児、走る前に「足がつらないポテサラ」を食べる石橋遼大(四千頭身)、ラストの直線で元プロ野球選手の鳥谷敬をシンプルな走力で振り切り優勝したおばたのお兄さんなど、いろいろな見どころがあった。
続けて、芸人たちの大縄跳び。こちらも過去の『鬼レンチャン』放送時に、足を痛めた和田まんじゅう(ネルソンズ)をほかの芸人たちが抱えて跳ぶという“奇跡”を生んだ企画だ。今回も当然、挑戦するメンバーのなかには和田まんじゅうがいる。千鳥チームとかまいたちチームの対決形式で進んだこのチャレンジは、幾度もの逆転を挟みつつ盛り上がりを見せていき、最後にはやはり和田が足を痛める。もちろんこの場面、本当に足を痛めているのか、痛めている設定で立ち回っているのかはよくわからないままのほうがいい。
とにかく“奇跡”は作るもの。今回も足を痛めた和田を抱えて芸人たちが満身創痍で跳ぶ。敵チームからも和田を抱えるための要員を呼んで跳ぶ。最終的にチャレンジは失敗してしまうのだが、芸人たちが“奇跡”を作ろうとするプロセスの面白さはほかに代えがたいものだった。
そして最後は総合司会の3組による約1時間の耐久リレー漫才。千鳥らが27時間のなかで起こったことを折り込みながら、次々と漫才をしていく。SMAPが総合司会を務めた2014年の『27時間テレビ』でのノンストップライブを思い起こさせる構成だ。漫才をはじめる直前、ノブが27時間をふりかえって「人を笑かすのが嫌いになりました」と耐久漫才の大変さを印象づけるようなコメントをしていたけれど、いやいや、実際の漫才は27時間を経たからこそ帯びる疲労困憊の様子も含めた面白さがあったし、27時間を経た上でもマイク1本でこの場を笑わせることを楽しむ感じがにじみ出ていたように思う。
さて、津田の母親が歌う中島みゆき『時代』、そして集団「ゴイゴイスー」で終わりを迎えた今回の『27時間テレビ』。もちろん、27時間もあればすべての時間が面白かったわけではない。「ラブメイト10」はもうツラい。いや、さんまが好きな女性についてあれこれ言うのは個人的にはノイズではない。それを周りの後輩芸人たちが「いつまでそんなこと言ってるんですか」みたいにツッコミつつも実際には持ち上げている構図が私はもうキツい。
そんなところがありつつも、全体としてはとても面白く見た。フジテレビのバラエティ番組のかつての面白さが戻ってきたような、そんな印象も受けた。同時に、これまでの『27時間テレビ』から変化した部分も多々見られたように思う。たとえば、これまでは系列局を中継で結んだ企画が27時間を通じた軸になっていたけれど、今回そのような中継はオープニングに集約、しかも短時間でテンポよく見せる構成だった。
そんなオープニングに象徴されるように、全体的にテンポの良さを感じた。過去の『27時間テレビ』では出演者が進行を無視して延々と遊び続ける時間があったものだが、そんな時間は今回あまりなかった。次々と出てくるスゴ技素人、次々と出てきて歌う歌手、瞬時に出る生クリーム砲、瞬時に出てくる画面上のテロップ、特に400m走サバイバルの画面は収録での通常放送と見紛えるような映像だった。時代にあわせた演出だったのだろう。
昔のフジテレビみたいで面白かったという感じと、新しく進化していて面白かったという感じ。そのどちらも感じた。理想的ではないか。
楽しいを塗りかえろ。そんなフレーズが何度か出てきた今回の『27時間テレビ』。フジテレビの『笑っていいとも!』や『SMAP×SMAP』、『めちゃ×2イケてるッ!』や『とんねるずのみなさんのおかげでした』といった番組が立て続けに終わったときには、同局のバラエティ番組それ自体の終焉といった言説が繰り返された。『いいとも』のグランドフィナーレは「テレビの最終回」とも評された。SMAPが“生前葬”の設定でオープニングを行った2014年の『27時間テレビ』には「テレビの葬式」といった声もあったと記憶する。そんな記憶が、今回まさに塗りかわる感じがあった。過去のあれこれを継承しつつも更新し、次の世代にバトンが受け継がれた感があった。
今年の『27時間テレビ』が面白かった。そして、これからも面白そうだ。テレビ好きとして、そう言えることが改めてうれしい。
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