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男女の産み分けは可能か? 約6万人対象調査でデータ取得

男女の産み分けは可能か? 約6万人対象調査で兄弟姉妹の性別データはの画像1

「今度は男の子が欲しい」「女の子が欲しい」とは言っても、男女の産み分けはできない。

 浜松医科大学と国立研究開発法人国立環境研究所の研究チームは7月14日、過去に同じ性別の子どものみを妊娠・出産している場合は、次も同性の確率が高く、特に、連続して男児のみを妊娠・出産している場合は、連続して女児のみを妊娠・出産している場合よりも、男児を妊娠・出産する確率が高いとの調査・分析結果を発表した。

https://www.hama-med.ac.jp/topics/2023/29031.html

 発表文によると、研究チームは「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の約6万人を対象に、生まれてくる子どもの性別と子どもの兄弟姉妹の性別の関連性について調べた。

 エコチル調査は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、10年度から全国の約10万組の親子を対象として、環境省が開始した大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。

 このエコチル調査で収集されたデータのうち、主に生まれてくる子どもの性別と子どもの兄弟姉妹の性別データを利用した。

 子どもの生物学的な性別は受精卵の段階で決まる。つまり、卵子にX染色体を運ぶ精子が受精すると女児になり、Y染色体を運ぶ精子が受精すると男児になる。このような受精時の性比を一次性比と呼ぶ。

 受精卵が女性の子宮内膜に着床した後、流産や死産、または中絶となることもあるため、出産時の性比は一次性比と区別され、二次性比と呼ばれる。

 多くの生物の性比が1:1であることを説明するために、1930年にロナルド・フィッシャーが「自然選択の遺伝学的理論」の中で提唱した理論「フィッシャーの原理」に従い、多くの動物の二次性比は1:1となるが、ヒトではわずかに男児の方が多いことが知られている。

 この理由として、一次性比が男児に偏っていることが原因であるという報告もあれば、二次性比に影響を与える流産や死産となる女児の割合が男児に比べて多いために、結果として二次性比が男児に傾くという報告もある。

 そこで、研究チームは「エコチル調査」に参加した約10万人の妊娠初期の女性を対象に、過去に妊娠した子どもの性別と今回妊娠・出産に至った子どもの性別に関連性があるかどうかを調査した。

 調査は、エコチル調査参加者10万4062名のうち、過去に妊娠した子どもの性別が不明もしくは記載されていないことが多い流産、死産、中絶などを経験したことがある女性を除外し、6万2718名を対象に実施した。

 対象者のうち、今回が初産(第一子)であった場合の子どもの二次性比は女児1に対して男児は1.055(以下、比率はいずれも、女児1に対する男児の比率)だった。

 これに対し、第一子が男児であった場合の第二子の二次性比は1.068、反対に女児だった場合は1.039であり、わずかに第一子と同じ性別の子どもが生まれる傾向があった。

 さらに、第三子以降では、過去に連続して男児のみを妊娠・出産している場合の子どもの二次性比は1.112であり、男児へのより高い偏りを認めた。反対に、連続して女児のみを妊娠・出産していた場合では0.972と女児への偏りを認めた。

 統計的な解析の結果、過去に連続して男児を妊娠・出産している場合は、連続して女児を妊娠・出産している場合より、次回も男児となる確率が7%程度高いことが明らかになった。

 さらに、「男男」兄弟の場合の次の子どもの二次性比は1.100であるのに対し、「男男男」では1.169、「男男男男」では1.750と、男児がより多く連続している場合は次回も男児を妊娠する可能性が高くなっていく傾向を認めた。

 また、「女女」姉妹の場合の次の子どもの二次性比は0.987であるのに対し、「女女女」では0.824、「女女女女」では0.750と、女児がより多く連続している場合は次回も女児を妊娠する可能性が高くなる傾向を認めた。
 つまり、<性比の偏り>は、

=連続して男児の場合=
・第一子、第二子が連続して男児の場合、第三子の比率女児1:男児1.100
・第三子まで連続して男児の場合、第四子の比率女児1:男児1.169
・第四子まで連続して男児の場合、第五子の比率女児1:男児1.750

=連続して女児の場合=
・第一子、第二子が連続して女児の場合、第三子の比率女児1:男児0.987
・第三子まで連続して女児の場合、第四子の比率女児1:男児0.824
・第四子まで連続して女児の場合、第五子の比率女児1:男児0.750

となり、連続して同性の子どもを妊娠・出産するほど、次も同性となる確率が高いということになる。

 さらに、過去に連続して男児のみを妊娠・出産している場合は、連続して女児のみを妊娠・出産している場合よりも、次の妊娠機会で男児を妊娠・出産する確率が高いことがわかった。

 研究チームは、「統計上このような子どもの性別の偏りが偶然生じる確率は極めて低く、何かしらの要因の結果として引き起こされた偏りであると考えている」とコメントしている。

 今回の調査・分析結果では、連続して同性の子どもを産んでいる場合には、同性の子どもが生まれる可能性のほうが、異性の子どもが生まれる可能性よりも高くなることが判明した。ただ、研究チームでは、「このような子どもの性別の偏りの原因が父親と母親のどちらにあるのか、あるいは夫婦の相性による問題なのかは興味深く、今後は、その点について調べることが課題となる。この点を明らかにすることは、ヒトの性比に関する理解を進めることの一助になると考えている」としている。

 研究の成果は6月24日付で国際学術誌『PLOSONE』に掲載された。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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Twitter:@tohrusuzuki

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最終更新:2023/07/24 11:00
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