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『最高の教師』夏ドラマの台風の目に?先の読めない展開、芦田愛菜の迫真の演技

『最高の教師』夏ドラマの台風の目に?先の読めない展開、芦田愛菜の迫真の演技の画像1
ドラマ公式サイト」より

 夏クールのドラマが続々と始まっているが、大胆なキャスティングとストーリー展開によって台風の目となりそうなのが『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(以下、『最高の教師』)だ。

 日本テレビ系の土曜ドラマ(土曜夜10時放送)枠で放送されている本作は、鳳来学園3年D組の担任教師・九条里奈(松岡茉優)が卒業式の日に、担任している生徒の誰かに突き落とされる場面から始まる。死を覚悟した九条だったが、気がつくと彼女は、1年前の始業式の日に教室で生徒たちの前に立っていた。

 生徒たちの仕草や発言に既視感を覚えた九条は、自分が二度目の人生を過ごしているのだと悟る。目の前にいる生徒30人の誰かが自分を突き落とそうとしたのだと推測した九条は、再教育をするために生徒たちに寄り添おうと決意。そして、クラス全員からイジメの標的にされている鵜久森叶(芦田愛菜)を救うために動き出す。

 本作は2019年に日本テレビで放送された『3年A組 -今から皆さんは、人質です-』(以下、『3年A組』)を手がけたプロデューサーと監督によるオリジナルドラマだ。『3年A組』は菅田将暉が演じる教師・柊一颯が、卒業式の9日前に29人の生徒を人質にとって教室に立て篭もる異色の学園ドラマだった。柊の目的は最初、謎に包まれているが、やがて自殺した生徒を死に追いやった犯人を突き止めようとしていたことが明らかとなる。

 ミステリー色の強い学園ドラマとして同作は話題となった。扇動的な物語と強いメッセージ性ゆえに賛否両論だったが、最終話で柊が語るSNS批判の長台詞は今でも語り草となっている。

 また、連続テレビ小説『半分、青い。』(NHK)でブレイクした永野芽郁を筆頭とする生徒役の俳優がとても豪華で、富田望生、川栄李奈、上白石萌歌、堀田真由、今田美桜、福原遥、森七菜、神尾楓珠、片寄涼太、萩原利久、望月歩といった、現在のテレビドラマで活躍する若手俳優の出世作でもあった。

 今回の『最高の教師』の生徒役にも、久々のテレビドラマ復帰となる芦田愛菜を筆頭に、子役時代にこども店長のCMで話題になった加藤清史郎、窪塚洋介の息子・窪塚愛流、茅島みずき、田中美久(HKT48)、當真あみ、本田仁美(AKB48)、詩羽(水曜日のカンパネラ)といった豪華メンバーが勢揃いしている。

 『3年A組』は菅田将暉の熱演に引っ張られる型で永野芽郁たち生徒を演じた若手俳優が激しい演技をぶつけ合う作品として、とても見応えがあったが、『最高の教師』も演技ドラマとして面白くなる予感に満ちており、第1話では松岡茉優と芦田愛菜の緊張感のある芝居の応酬が素晴らしかった。復帰した芦田は、迫真の演技で女子生徒役を好演しており、新たなステージに入ったと言えるだろう。

 もちろん、名前が知られていない生徒役の俳優も、今後の演技次第で注目が集まることは確かだ。その意味で、新鋭若手俳優の発掘場としても注目されている。

 また、『3年A組』は先の展開が読めないスピード感のあるストーリーが話題となったが、『最高の教師』の第1話も大胆な駒運びとなっており、今後の展開が全く読めない。

 何より驚いたのは、本作がタイムリープモノだったことだ。卒業式で何者かに殺された九条は始業式に戻るのだが、一度目の人生の記憶が残っているため、先回りして、自分の殺害を企てる生徒が出ないように、問題の火種を潰していこうとする。

 こういった一度バッドエンドの結末を見せた後で時間を遡り、人生をやり直すストーリーは近年流行っている手法だ。かつては筒井康隆の小説『時をかける少女』のようなSF作品に特化したアイデアだったが、近年ではジャンルを問わず採用されているゲーム的な見せ方で、映画『東京リベンジャーズ』や、冬クールに放送されたテレビドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)が、うまく活用し話題となった。

 第1話では、鵜久森叶がクラスメイト全員にいじめられている証拠となる映像と音声を九条が突きつけ、鵜久森を九条が守ると宣言し、生徒たちと全面対決を決意する場面で物語は終わった。いじめの首謀者だけでなく見て見ぬフリをする傍観者の生徒たちの無自覚な加害性を徹底的に描くことで、誰の中にもある人間の醜悪な本性を炙り出していく見せ方は『3年A組』なら終盤で描いたストーリーで、ここで最終回でもおかしくない異常な盛り上がりだったが、これを第1話で描くということは、まだまだ別の切り口が用意されているのかもしれない。

 基本的な流れは、一人ひとりの生徒の問題をピックアップしていく『3年A組』の見せ方を踏襲していくと同時に、九条がタイムリープを繰り返しながら自分を殺そうとした犯人を見つけ出すSFミステリー的な物語となるのではないかと思うのだが、一方で、九条が夫の蓮(松下洸平)から離婚を突きつけられるなど、火種が多数ちりばめられているため、これからの展開が楽しみである。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2023/07/22 06:00
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