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文部科学省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避

厚生労働省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避の画像1

 2040年の大学の入学者数は、22年の入学者数より約11万人減少して51万人台になる。こんな衝撃的な将来推計が、文部科学省から公表された。少子化の進展により、40年には22年の大学入学定員の総数の約2割も減少することになり、定員割れする大学が続出し、大学経営に大きな影響を与えそうだ。
 https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/000245198.pdf

 この将来推計は、中央教育審議会大学分科会で示されたもので、40年から50年の大学入学者数を推計している。推計は18年度~21年度における都道府県別、男女別の大学進学率の伸び率によって今後50年まで大学進学率が上昇すると仮定し、国立社会保障・人口問題研究所の18歳人口の将来推計に大学進学率を掛け、新型コロナウイルスの影響により、20年度~22年度は外国人留学生数が一時的に激減したことを踏まえ、19年度の外国人留学生 数が維持されると推定して、これを加えた。

 18歳人口の将来推計では、40年の82万3000人から41年は79万4000人に減少するが、その後は79万7000人から80万1000人の間で推移する。これに対して、外国人留学生の比率3.07%の現状のケースでは、大学入学者数は40年の51万人から41年には49万3000人に減少するが、その後は49万7000人から50万人の間で推移すると推計されている。(グラフ1)

厚生労働省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避の画像2

 40年の推計では、日本人の大学進学者数が49万781人、これに外国人留学生数の1万7096人とその他の2233人を加え、51万110人となっている。これに対して、大学入学定員の総数は62万6532人のため、11万6244人の入学生不足が生じると推計されている。

 少子化の進展による急速な人口減少のため、大学進学率の伸長を加味したとしても、40年代の各都道府県の大学進学者数の合計は40万人台にとどまり、外国人留学生の数を加えても、現在の大学の入学定員の規模が維持された場合には、定員充足率は80%を割る年が発生することになる。

 そこで、この将来推計では外国人留学生の比率を現状の3.07%以外にも、OECD(経済協力開発機構)加盟国の平均の外国人留学生の比率4.77%、G7(主要7か国)の平均8.08%で、外国人留学生が増加したケースの大学入学者数の定員充足率を推計している。

 OECDのケースでは充足率は81%台、G’のケースでも84%台での推移にとどまると推計されており、外国人留学生が増えようとも、充足率を満たすことはできない。(グラフ2)

厚生労働省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避の画像3

 では、都道府県別では、どの程度の影響が出る可能性があるのだろうか。まず、21年の県内の高校生が、自県の大学へ進学する割合をみると、自県進学率が最も高いのは愛知県の71.3%、次いで、東京都の67.7%だ。一方、低いところでは奈良県の14.3%、鳥取県の15.2%となっている。(表1)

厚生労働省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避の画像4

 地元の高校生が進学して来ない以上、他県から入学生を獲得するか、外国人留学生を多数獲得するなどの対策をとらなければ、定員を大きく割り込むことは必至だ。東京都は自県進学率が67.7%だが、他県に流出する進学者よりも他県から流入してくる進学者の方が7万5000人以上も多い。しかし、奈良県では流入進学者数が流出進学者数よりも、3000人以上少ない。

 このように、大都市を抱えていない県の多くでは、進学者数は流入よりも流出が上回っており、大学の入学者数充足率が低い状態が恒常化している。

 40年の入学定員充足率の推計では、上位に千葉県の86.6%、沖縄県の85.1%などが入る一方で、下位には大分県の70.0%、徳島県の74.2%が入っている。そして、21年の自県進学率では下位に入っていた島根県、茨城県、長野県も40年の入学定員充足率の推計では上位に入っている。(表2)

厚生労働省、将来の大学入学者数大幅減少を予測…定員割れ続出不可避の画像5

 これは、進学率の上昇による進学者数の増加や県の大学数など、さまざまな要因によって上位に入っているわけだが、最上位に推計されている千葉県ですら86.6%の充足率であり、いずれにしても、定員を満たすだけの入学者数は見込めないということだ。

 すでに、特に大都市を抱えない地方県では、大学での定員割れが相次いでおり、経営に深刻なダメージを与えている。現時点から大学改革を進め、大学の経営破綻や閉校が起きないようにしていく必要がありそうだ。

鷲尾香一(経済ジャーナリスト)

経済ジャーナリスト。元ロイター通信の編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで様々な分野で取材・執筆活動を行っている。「Forsight」「現代ビジネス」「J-CAST」「週刊金曜日」「楽待不動産投資新聞」ほかで執筆中。著書に「企業買収―会社はこうして乗っ取られる 」(新潮OH!文庫)。

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最終更新:2023/07/20 10:52
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