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あの頃のテレビや芸能界には高揚感や中毒性があった…令和に話題になる「復活」

あの頃のテレビや芸能界には高揚感や中毒性があった…令和に話題になる「復活」の画像1
Getty Images

 6月の終わりに次のようなニュースが舞い込んだ。

 「しのざき見兆、6月から芸能事務所入りで本格復帰」

 皆さんはこのお名前を見てピンと来ただろうか? 僕は正直ピンと来なかった。しかしニュースになるということはきちんと知名度がある方で、しかも芸能事務所に入り本格復帰ということは元々芸能人か何かしらの著名人で知名度があり、その方が何かしらの理由で芸能界から離れていて、そしてこの度復帰するということなのである程度僕も知っている人物の可能性があるのだが、このお名前はやはりわからない。

 一体この方は誰なのだろうか?しかしその謎はすぐに解けたのだ。この「しのざき見兆」というお名前は2018年に改名しており、テレビで活躍していた当時は別の名前だったのだ。当時のお名前は「しのざき美和」さん。薄っすらと見覚えがあるお名前。間違いなく僕の脳みそには刻まれているお名前。しかしすぐに思い出すことは出来ない。

 そこで現在のお顔を画像で拝見することにした。その洋服の派手さから間違いなくバラエティで活躍されていた方というのはわかるのだが、現在のお顔を見ても僕の記憶の扉は開かない。こうなったら活躍していた頃のお顔を見るしかない。

 「しのざき美和」と検索し画像を拝見した。すると僕の記憶の扉は一気に開いたのだ。どんなネタをしているとかは鮮明に覚えていないが、今ではあまり好まれない「容姿の面白さ」を武器に、モノマネやリアクションで笑いを起こし、数々のスター芸人を生みだした「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」などにも出演しており、テレビ界に登場してからあれよあれよという間に人気芸能人となり、一気にスターへのし上がった。

 芸人というよりは芸能人というイメージが強かったが、しのざきさんで何度も笑わせてもらったものだ。しかしそんなしのざきさんもいつの間にかテレビで見る機会がなくなり、気が付くとバラエティ番組から姿を消していた。

 調べてみると人気絶頂だった25歳の頃に結婚をし芸能界を引退したということだった。

 僕はしのざきさんのファンでもなんでもないが、正直あの当時の芸能人がまだ芸能界にいて、しかも事務所に入って本格的に復帰するという話を聞くと、あの頃の面白さやテレビの盛り上がりがおぼろげながら蘇り、具体的な理由はないのだが胸が躍ってしまった。

 現在、若者のテレビ離れが取り沙汰されている中、僕のように過去のテレビや芸能界の盛り上がりを経験していた世代は、現代の若者と同じようにテレビから離れるのではなく、逆に盛り上がりの復活を望んでいるのではないだろうか。

 しのざきさんの復帰がニュースとして話題となるのもその影響かもしれない。

 他にもこんなニュースがある。昨今盛り上がりを見せつつある女子プロレス。今まで数々のスター選手を世に送り出しているが、その中でナンバーワンと言っても過言ではない伝説のタッグチームがある。それは長与千種とライオネス飛鳥が組んでいた「クラッシュギャルズ」だ。

 活躍していたのは1980年代中盤だが、なんと結成40周年となる今年10月に神奈川にある横浜武道館でイベントを開催するのだ。お客さんの前でライブで試合を行っていたお二人は“ライブ”にこだわっており、今回ももちろんお客さんの前でライブでイベントを行うのだ。

 しかし当時、クラッシュギャルズに黄色い声援を送っていた少女達は今や40代、50代。ライブに出向くような過去の情熱はもはや無いのではと思いきや、ネット上では「こんな日が来るなんて!」「絶対泣く!」「もうドキドキしている」などと今から待ちわびている声が寄せられているのだ。

 情報過多である今とは違い、昔は情報を得られるソースがテレビや雑誌しかなかった。もちろんテレビは家族の長である父親が一番の権限を持っており、野球が始まった日には野球以外の情報は何も得られない。なので子供たちは本屋で情報誌を立ち読みしたり、テレビを自由に見られる友達などから欲しい情報を人伝に聞き、頭の中で妄想を膨らませていたのだ。今のように聞きたくもない暴露話や、悲しませるだけのゴシップ記事などが無かった時代のテレビは憧れと夢で溢れていたのだ。

 あの頃の芸能界への高揚感やワクワク、非現実的な世界観には中毒性があると僕は思っており、僕と同世代の人たちはあの頃の感覚をもう一度味わいたくて、「過去の復活」へ敏感に反応してしまうのだ。

 いつの時代も人間の本質が変わっていないので、過去に起こったトレンドや流行は一定の周期で繰り返すというが、その一定の周期が今まさに訪れているのではないだろうか。

 いつまでも過去のテレビにこだわっているのはナンセンスと思われそうだが、そう思われても良いものは良いのだ。なので夢も希望もないテレビしか知らない世代に、あのドキドキを味わって共感してほしいのかもしれない。

 そういえばミュージシャンによる一発録りのパフォーマンスで話題となっているYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に藤井隆さんが登場し、自身の歌手デビュー曲「ナンダカンダ」を熱唱し、その動画の再生数は約1週間で500万回を越え、YouTubeチャートで2位に輝いた。

 これもやはり多くの人が懐かしさの中にある「過去の復活」への期待感を感じ取った結果なのではないだろうか。「あの頃の時代の復活」を夢見るのは決して間違っていないはずだ。だって「ナンダカンダ」の歌詞にもこう書いてある。

 “なんだかんだ夢見たって、問題ない世の中です”

 と。皆さんも諦めずに夢見て生きていきましょう。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/07/18 20:00
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