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『K.G.F:Chapter 1&2』あの『RRR』超えモンスター級インド映画の見どころポイント3選

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『K.G.F:CHAPTER 1 / K.G.F:CHAPTER 2』

 2022年のインド映画全体で『RRR』を抜き、興収1位を記録したモンスター級映画ーー日本でも、英語字幕上映という限定的な上映スタイルながら人気を博した『K.G.F:Chapter 2』と、その前作となる『K.G.F:Chapter 1』が7月14日から緊急同時公開中!!

 今作は、南インドのサンダルウッド、つまりカンナダ語映画である。日本ではどうしてもヒンディー語、テルグ語、タミル語の作品がインド映画という印象が強いかもしれないが、カンナダ語映画も年間で200本前後制作されており、映画産業は独自の発展を遂げている。

『K.G.F:Chapter 2』と同じく2022年に公開された『カンタラ』(2022)は、第95回アカデミー賞のショートリストに選出されるなど、インド映画の中でもカンナダ語映画というものが世界的に認知され始めているのだ。

『K.G.F』シリーズの監督を務めるのは、ハリウッドや1970年代のヒンディー語映画から大きな影響を受けているプラシャーント・ニール。

 ちなみに、そんなプラシャーントの待望の新作で『バーフバリ』2部作の俳優プラバースが主演を務める『サラール』が今年9月、インドだけではなく、アメリカやイギリス、インドネシアなどでも公開予定だ。実は日本でも公開予定(時期は未定)とされているだけに、プラシャーントの作家性や映画のスタイルを知る上で、『K.G.F』2部作は見逃すわけにはいかないのだ!!

【ストーリー】
CHAPTER 1

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1951年、スーリヤワルダンはコーラーラ近郊で金鉱(KGF)を発見し、採金ビジネスに乗り出す。全てを一族で管理して巨万の富を築くいっぽうで、労働者は外部から遮断された環境で奴隷のように働かされ、苦しい生活を強いられていた。同じ年にスラム街でひとりの少年が生まれる。少年は唯一の身内であった母を10歳のときに亡くし、生き残るためにマフィアの下で働き始める。ロッキーと名乗った少年は、マフィアの世界でのし上がっていく。やがて最強のマフィアとして恐れられるようになったロッキーは、ボスからKGFの実質的な支配者であるスーリヤワルダンの息子を暗殺するよう指令を受けるのだが…。

CHAPTER 2

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KGFを支配下に置いたロッキーは、新たな金鉱を発見し事業を拡大していく。しかし敵対勢力も黙ってはいなかった。スーリヤワルダンの弟で、死んだと思われていたアディーラが現れ、KGF奪還を目指し勢力を束ねていく。そしてロッキーの唯一の弱点である恋人リナをさらい人質とする。リナ救出に向かったロッキーは、アディーラに撃たれ瀕死の重傷を負う。そしてアディーラは金輸出を妨害してKGFを孤立させ、ロッキーの同盟者をせん滅していく。最大の敵に窮地に追い込まれたロッキー…果たして彼はKGFを守り、生き残ることができるのか!?

『K.G.F』ポイント①
まるで約6時間の予告編!?

 プラシャーント・ニール監督の一番の特徴ともいえるのが、独特すぎる画面構成力。カット割りから音楽の使い方も含めて、全編が予告編のようになっている。つまり、約6時間の予告編を観ているようなのだ。

 長編監督デビュー作となった『Ugramm』(2014)でもその傾向はあったものの、そのスタイルは『K.G.F』でより確立されたといえる。

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『K.G.F:CHAPTER 1 / K.G.F:CHAPTER 2』

 主演のヤシュのカリスマ性も加わって、とにかく画的なおもしろさに溢れていて、どのシーンを切り取っても見映えが良く、静止画としても動画としても、何度も観たいと思わせる魅力に溢れている。

 約6時間もあるのは、プラシャーントの描きたかったことと、その情報量が膨大だからだ。ドラマの1シーズン(全24話)にしてもちょうどよいぐらいの内容に思えるくらいのボリューム感だ。実際、主人公ロッキーの断片的にしか描かれていない子ども時代や空白の3年間など、まだまだドラマとして描ける要素はかなり残っている。『K.G.F:Chapter 3』についてもぜひ、進めてもらいたいところである。

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『K.G.F:CHAPTER 1 / K.G.F:CHAPTER 2』

 ところで『K.G.F』以降の作品、特にアクション映画においては、予告編のような演出を多用した作品が増えてきている。

 たとえば、今作にプレイバックシンガー(インド映画業界で俳優たちの代わりに歌を歌っている職業歌手のこと)として参加しているアディティ・サーガル主演のバイオレンス・アクション映画『ヴェーダ』(2022)も、同じようなスタイルの作品だった。

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『K.G.F:CHAPTER 1 / K.G.F:CHAPTER 2』

 ただでさえカット割りが多いというのに、時代が飛んだり戻ったりを繰り返すため、目がチカチカするという人もいるかもしれないし、逆にそれがジェットコースター的でいいとか、斬新だとか思う人もいるだろう。今作は、観る人によって好き嫌いが大きく分かれる作品であるのだが、何度も言うように画作りのセンスに関しては、誰もが認めざる得ないはずだ。

『K.G.F』ポイント②
「歌って踊る」ではなく、音楽がとりわけ重要な理由

 インド映画において音楽は需要な要素のひとつではあるが、今作においては、いわゆる“インド映画っぽい”とされている「歌って踊る」という意味からではない。

 インド映画だけに限らず、映画の予告編では、画力を高めるための重要な要素として音楽が機能しているわけだが、今作は全編が予告編のようになっているということもあって、全体的に音楽の重要性というのが、ほかの作品に比べてもかなり高いのだ。

 テルグ映画音楽界では、力強くて重いラヴィ・バスルールの音楽をベースに、サントシュ・ヴェンキーやサチン・バスラー、アナンヤ・バットといった、カンナダ語映画には欠かせないシンガーたちが多数参加している。

『K.G.F:Chapter 2』では、アルン・サーガルの娘としても知られるアディティ・サーガルがラップを披露する曲『The Monster Song』は、リリースと同時に人気を博した。

 またプラシャーントは、1970年代のヒンディー語映画へのリスペクトも強く、タマンナーがアイテム・ガール(ダンスシーンのみにしか登場しない俳優)として登場する『Jokae』は、70年代のエキゾチックなプレイバックシンガー、おそらくアシャ・ボスレやラタ・マンゲシュカルあたりを意識したものとなっており、そこに現代的なサウンドも組み合わせていることで、より中毒性の強い曲に仕上げている。このシーンをスクリーンで観るためだけでも劇場に行くのもアリだ(筆者は実際にそうしようと思っている)。

 余談ではあるが、60~70年代のヒンディー語映画音楽を現代ポップスやヒップホップなどとフュージョンさせるスタイルは非常に相性が良く、最近も映画『愛しのモニカ』(2022)の作中曲『Yeh Ek Zindagi』の中で、映画『キャラバン』(1971)の『Piya Tu Ab To Aaja』がサンプリングされている。また、アミターブ・バッチャンの大ファンだというカナダのアーティストのRaghavが『デスペラード』を発表。同じくアシャ・ボスレが歌う『Yaadon Ki Baaraat』(1973)の『chura liya hai tumne jo dil ko』をサンプリングした曲で、世界的に注目されている。

 一方で、ヒンディー語吹替え版では、タマンナーではなく、『ブラフマーストラ』(2022)にも出演していたモウニー・ロイの『Gali Gali』(歌はネハ・カッカー)に差し替えられている。もちろん曲は素晴らしいのだが、こちらは逆に近代的になり過ぎてしまっているので、やはり映画として観るには、オリジナルのカンナダ語版をおすすめしたい。

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