良いお笑いライブは芸人のネタだけでなく「お客さんの笑い声の質」も大きく影響する
#お笑い #馬鹿よ貴方は 新道竜巳
7月8日に座・高円寺にて全日本アマチュア芸人No.1決定戦の決勝が行われた。チケットは早くに完売し、大会の期待値の高さがうかがえた。私はこの日審査員として出演したが、盛り上がるライブの1つとしてあるのがお客さんの笑い声の質ではないだろうか。どんなに面白いネタをやってもその面白さにお客さんが気づいていなければ、会場は爆笑が起こるどころかそんなにウケないなんてこともある。
予選は動画審査で362組がエントリーし準決勝を経て12組に絞られた。決勝は惹女香花、ナユタ、夕げ、どくさいスイッチ企画、イクラボブチャンチャン、ふねしぼり、お越しの方、ぱきゃまらど、土井集合住宅、ワンウィーク、下町モルモット、ミックストマトジュースの12組。ライブシーンでもほとんど名前を見る事がないメンバーが揃った。
お笑いライブは自分の感性に合った部分がお客さんの笑い声を通してリンクすればするほど自分にとって面白いライブとなる。このメンバーの中では惹女香花の知名度が一番高く、テレビ神奈川で放送していた「ニューヨークと蛙亭のキット、くる!!」にも複数回登場したこともある。特に心地良かったのがボケ1つの最大風速が惹女香花のネタだったところでもある。
常に今までにない笑いを追求し、それを出来るだけわかりやすく見せる事でも知られている惹女香花の渾身のボケは会場のお客さんの笑い声によって台風のように起こっており、吹き飛ばされそうになった。そのボケの見せ方や言葉選びの絶妙さ、お客さんも全員がそのボケに反応して笑ったというのがこのライブの成功に導いた全てなのかと思った。
惹女香花はいろいろなボケや演出の新しさを見せてくれたがゆえにハマらない箇所も数か所あり、それなりの笑いしか起こらない。要するにちゃんと面白くなければお客さんは笑わない。だからこそ良いボケのようで良いボケではないボケの笑いの量で如実に空気が変わっていくこの空間が好きだった。学生や社会人は副業でお笑いもやっていると言ってもそのネタ表現の探求心が物凄い勉強になるレベルで見せてくれる。そのワクワクを現場の笑いで納得した瞬間に立ち会えた審査員としての私は、お客さんの笑い声を十分評価の目安にして大丈夫だなという安心感があった。
時折、出演者が友達を呼びすぎてそこまでのネタがウケ過ぎてしまったり身内ネタが共通の笑いになってしまったりする場合は、そこを審査員はお客さんの笑いを一切気にせず得点をつけなければならない事もある。準優勝のナユタが気持ち良いほどウケていたボケは1つ1つ緻密でよく作りこまれており自分でも本当に面白いボケだなと思える言葉選びと構成だったので、お客さんの笑いの量のまんまの評価をさせていただいた。
この空間が非常に心地良く、MCだったモグライダーの盛り上げも良かったというのもあるだろうが現場にいて良かったと思った。優勝はどくさいスイッチ企画、というピンだったのだが、クイズネタでここまで1人で表現できて、見やすくかつテンポよく笑わせるという神ネタを披露してくれた。このお客さんなら感度が非常に良くこれからの笑いも作っていけそうだなと思わせてくれる。上質なお笑いライブだった。ライブ後にフランスピアノのなかがわりょうと話した時に「どくさいスイッチ企画はR-1グランプリでうけていたネタをやらずに優勝したんですよ」というネタへの探求心と向上心がプロだったことへの凄さも知った。因みにR-1グランプリ2023でどくさいスイッチ企画は準々決勝まで進んでいる。
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