大谷翔平の試合でも目立つ「ピッチクロック」とは 時短策は日本プロ野球に導入できるか?
#野球 #大谷翔平
大谷翔平、ダルビッシュ有、吉田正尚、ヌートバーらWBC戦士の活躍が続くメジャーリーグだが、今季から激変したのが試合展開のスピードだ。メジャーリーグは試合時間短縮を目指し、投球するまでの時間を制限する「ピッチクロック」を導入。これが功を奏し、平均試合時間はこれまでの3時間強から一気に30分近くも短縮された。
「アメリカで野球(NBL)はナショナルパスタイム(国民的娯楽)と呼ばれていますが、NFL(アメリカンフットボール)、NBA(バスケット)、NFL(アイスホッケー)の4大スポーツと比べると圧倒的に試合時間が長く、時短が大きな課題でした。
そのため申告敬遠の導入、ワンポイントリリーフ禁止など、さまざまな策が講じられましたが、あまり効果が見られず、一時は“ホームランを打ったら1周しない”というルールが検討されたことも。これはさすがに却下されましたが、野球が生き残るためには試合時間短縮が絶対に必要との思いから、抜本的な策として導入されたのが、試合のテンポを上げるピッチクロックの導入です。
これは、投手は走者なしなら15秒以内、走者がいる場面は20秒以内に投げないと1ボールが宣告されるもの。打者も残り8秒までにバッターボックスに入って構えることが必要で、間に合わなければ1ストライクが宣告されます。大谷は4月5日の試合で、投手としてボールを、打者としてストライクを宣告され、史上初の“投打でピッチクロックに違反した選手”になりました」(フリーのスポーツライター)
7月10日に行われた日本のプロ野球のオーナー会議でも、ピッチクロックが話題となり、導入の可否が検討されることが決定。若者が“タイパ(タイムパフォーマンス)”を重視する状況を鑑みれば、野球離れを防ぐためにピッチクロックは必須かと思われるが、導入には越えねばならぬハードルがいろいろと存在する。
「アメリカと日本では根本的に野球に対する考え方が違います。メジャーはデータにはこだわりますが、プレー自体はよく言えばダイナミック、悪く言えば大雑把で、日本のプロ野球に慣れた目には雑に見えるプレーが多い。ランナーが出てもクイックモーションをしない投手もおり、イチローや大谷翔平はメジャーに行ってから盗塁数が飛躍的に増えました。
日本の野球はバントで揺さぶったり、臭いボールをファールでカットしたり、細かい技術に長けており、そういった細かいプレーへのこだわりが、WBC優勝につながったと言っても過言ではありません。しかしピッチクロックが導入されれば、試合のテンポが早まるのと引き換えに、野球が大味になるのは確実。とりあえず盗塁は激増するでしょう。それゆえネットを見ると、早急にピッチクロック導入を求める声があがる一方、強硬に導入反対を主張するコメントも多く、意見は完全に二分しています」(同上)
時間を短縮しながら精度を保つのが不可能なのは、どんな仕事も同じ。“品質”で勝負してきた日本野球にはそぐわないという意見は一理ある。また、ビジネスという観点から見ても、アメリカと日本は事情が異なっている。
「メジャーがあれだけの高年俸を選手に払えるのは、バックに莫大な放映権料があるからですが、日本はいまだに球場収入が占める割合が高い。試合時間が短くなればビールは売れなくなりますし、応援するのを楽しみにしているファンは、応援歌のサビを歌う前に打者が入れ替わるようになったら興味を失うかもしれません。応援グッズも大きな収入源ですから、これも球団には痛いはずです」(週刊誌スポーツ担当記者)
ただ、時代の流れとして、導入は避けられないというのが専門家の見方だ。
「ピッチクロックは次回のWBCで導入されることが確実視されており、ディフェンディングチャンピオンの日本は当然、対応しておくことが必要。試合時間が短くなれば、球場収入は減りますが、スタッフの労働時間も短くなるので、多少は相殺されます。そもそも選手たちも、試合が早く終われば早く飲みに行けるので、試合時間が短くなるのは大歓迎。ただ、現状でも2時間半で終わる試合はあるわけで、ピッチクロック導入で2時間を切る試合が出てくるようになると、“さすが
に早すぎる”といった声は出てくるでしょう」(前出・スポーツライター)
「プロ野球って、昔は3時間以上やってたらしいよ」と言われる日も、遠くはなさそうだ。
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