山下達郎“陳腐な言い訳”スピーチに広がる失望
#ジャニーズ #山下達郎 #性加害
シンガー・ソングライターの山下達郎が9日、自身の冠ラジオ『山下達郎サンデー・ソングブック』(TOKYO FM)に出演し、自身が所属するスマイルカンパニーと音楽プロデューサー、松尾潔氏の業務提携が終了したことについて言及した。
松尾氏といえば、EXILEらの楽曲を手がけたことで知られる売れっ子プロデューサー。彼は性加害疑惑で揺れるジャニーズ事務所を批判したことなどを理由にスマイルカンパニーとの契約解除されたが、自身を事務所に誘った山下も会社の方針に賛成だったなどと明かし、騒動になっていた。
スマイルカンパニーの前社長はジャニーズ事務所の顧問を務めた小杉理宇造氏で、山下のマネジャーだった人物だ。現社長で作曲家の周水氏は理宇造氏の長男。山下は大ヒットしたKinKi Kidsのデビュー曲『硝子の少年』の作曲をはじめ、木村拓哉や嵐などジャニーズ事務所の所属タレントに多くの楽曲を提供している。そんな山下だけに、発言に注目が集まったのだが……。
「7分間にわたるスピーチをまとめると、以下のような内容でした。曰く、多くの素晴らしいタレントを発掘・プロデュースしたジャニー喜多川氏の功績は、性加害疑惑とは別問題だ。自分は変わらずジャニー氏を尊敬する。それをジャニーズ事務所への忖度と思うならそれでも構わないし、そういう人は自分の音楽を聴かなくて結構――。多くのファンやメディア関係者にとっては想定内の受け答えだったし、核心に迫るものとは言い難かったですね」(音楽ライター)
まず問題なのは、山下のジャニー氏による性加害への認識だ。
彼は松尾氏の契約終了について、「ジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが一因であった」と言うが、ジャニー氏による過去の行いは“憶測”でも何でもなく、れっきとした“事実”である。
「ジャニー氏の性加害については、この問題を報じた『週刊文春』(文藝春秋)とジャニーズ事務所との間で行われた裁判で、2003年に事実と認定されています。加えて今回、カウアン・オカモト氏が実名で告発しているわけです。山下が『憶測』と言うのなら、これら一連の出来事を否定することになります。しかし、もはや性加害問題は事実であることが前提で、そんなところも山下の認識は世間とズレています」(同)
今回の一連の報道が始まるまで、性加害問題は漠然とした噂でしかなく、ジャニーズ事務所の業務を兼務していた山下のマネジャーも彼に裁判を含め、その内情を伝えることはなかったという。そして、一作曲家に過ぎない自分がジャニーズ事務所の内部事情など知る術がないのだから、性加害問題についてもコメントの出しようがない、と開き直る。
「知らなかったというより、わかっていても知ろうとしなかったということでしょう。これまで性加害問題を見て見ぬ振りをしてきたテレビやスポーツ紙と同じ言い草です。そうした姿勢がまさに“忖度”であるし、ジャニー氏の性加害をこれまで容認してきたわけです。山下は海外の音楽事情に造詣が深いですが、欧米ではクリエイターのこうした態度が今や許されないのは承知しているはず。山下もこんな陳腐な言い訳をするのかと、心底失望しました」(同)
今回、ラジオ番組での山下の発言に注目が集まったのは、所属タレントに楽曲を提供するなど、長きにわたってジャニーズ事務所と蜜月関係にあった彼が、ジャニー氏による性加害についての見解を明らかにすると思われたからだ。だが、その部分に関しては明言することなく、微妙にボカしている。
「性加害について『もちろん許しがたいこと』『容認しているのではありません』などと非難はするものの、そこにはジャニー氏という“主語”はなく、巧妙に一般論にすり替えています。問われているのは、ジャニー氏とその悪行についてなんですけどね。そこに触れない限り、忖度と言われても仕方がありません」(同)
そして、ジャニー氏に対しては多くの才能を見出だし、所属タレントが歌う楽曲が戦後の日本人に夢を与えてきたと称賛。ジャニー氏のプロデューサーとしての才能を認めることと、社会的かつ倫理的な意味での性加害を容認することとは全くの別問題だとしている。
「アーティストが不祥事を起こしたとしても、作品に罪はないという意見は、たしかにひとつの正論です。特に、山下のような“音楽至上主義者”ならなおさらでしょう。しかし、少年のアイドル性やタレント性を見抜くジャニー氏の特異な能力は、彼の“特別な嗜好”が深く関係しているとの声もあります。つまり、ジャニー氏の功績は性加害の犠牲の上に成り立っている、と見ることもできるわけです。そのあたりの検証もなしに、山下のように別問題と断じるのはいかがなものか。仮にジャニー氏の功績があったとしても、彼の過去の行いが断罪されようとしている今、あえてジャニー氏を称賛するのは被害者感情に配慮しない不適切な行為です」(同)
山下達郎といえば職人気質で知られ、「テレビへの顔出し出演はしない」「大規模なアリーナ級の会場でのコンサートは行わない」「著書を書かない」といったこだわりを頑なに貫き通している。日本音楽界における“良心”とも言うべき存在で、山下のファンたちは音楽だけでなく、彼のミュージシャンとしての揺るぎない信念や矜持にも信を置いてきた。
だが、今回の発言によって「晩節を汚した」とまでは言わないにしても、これまでの輝かしいキャリアが色褪せて見えてくるのは気のせいか。
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