『アイドル3.0』のスゴい“福利厚生”とキャリア支援──安心を、アイドルの輝きに変えていく
#アイドル #インタビュー
今春、新しく始動したアイドルグループ『アイドル3.0 プロジェクト』が目指す、新しいアイドル運営の在り方とは。
同プロジェクトを立ち上げた株式会社オーバースの佐藤義仁社長、澤昭人副社長と、『退職学®︎』を提唱して著書を発表し、キャリア支援や組織開発、自動生成AI活用の顧問として活躍する佐野創太氏が鼎談。『アイドル3.0 プロジェクト』の全貌に迫ると、これからの時代に輝ける、新しいアイドルグループの理想像が見えてきた。
なぜアイドルファン2人が、新アイドルグループを立ち上げたのか?
佐野創太氏(以下、佐野):『アイドル3.0 プロジェクト』を立ち上げた佐藤さんと澤さんは、ご自身もアイドルファンだそうですね。私事ですが、私はGLAYのファンになってから、2023年で24年が経ちました。
澤昭人副社長(以下、澤):はい。私はお仕事で乃木坂46のメンバーと関わる機会がありまして、そこからファンになりました。特に元メンバーの衛藤美彩さんは、共著『なぜ彼女が帳簿の右に売上と書いたら世界が変わったのか?』(PHP研究所)でご一緒して以来、推していました。
佐藤義仁社長(以下、佐藤):澤さんから、衛藤さんの写真集をもらいましたね(笑)。
澤:そう言う佐藤社長からも、町田市のアイドル・まちだガールズ・クワイアのCDをもらいましたよ。お互い、布教活動に勤しんでいました(笑)。
佐藤:私はももクロ(ももいろクローバーZ)から始まって、エビ中(私立恵比寿中学)だったり、新潟県のご当地アイドル・Negiccoだったり、まちだガールズ・クワイアなど、いろいろなアイドルにハマってきたんです。
澤:私は佐藤さんほどは沼ではないんですが(笑)、衛藤さんや、ほかの乃木坂46メンバーと書籍やラジオなどの仕事でご一緒させていただく機会が多く、アイドルって本当にすごいなと、つくづく思っていたんですね。
佐藤さんとは以前、FX(外国為替証拠金取引)の会社でご一緒していて、たまたまアイドルの話をする機会があり、意気投合したんです。そのあと、アイドルについて情報交換をする中で、暗号資産(=仮想通貨)が出てきたときに「これをアイドル運営に使えないか?」という話になりました。
佐藤:まだまだアイドル業界にはいろいろな“課題”があるけれど、暗号資産を使えば、ある程度解決できるはずだ、と。
暗号資産で、アイドルグループの運営を「民主化」する
佐野:アイドル運営において、仮想通貨を用いることでどのような効果が発揮されるのでしょうか?
澤:まず、我々のグループが大前提としている、仮想通貨によるアイドルグループ運営の仕組みについて説明させてください。我々、株式会社オーバースが発行する仮想通貨「NIDT(Nippon Idol Token)」は、今年3月末から4月中旬にIEO(Initial Exchange Offering)と呼ばれる資金調達を行いました。結果、『アイドル3.0 プロジェクト』の運営費として約10億円が集まりました。このNIDTの保有者は、オーディションや一部プロデュースへの関与、限定イベントの参加が可能になります。
佐藤:『アイドル3.0 プロジェクト』は現在、メンバーのオーディション中です。最終的に9~11人のアイドルグループになる予定ですが、4次選考を終えると候補者は100人に絞られます。この時点で候補者を明らかにし、今後の最終選考では、NIDT保有者の投票によってメンバーを選びます。
佐野:仮想通貨を保有することで、ファンがアイドル運営に大きく関われるんですね。
澤:そうですね。これまで、ファンが運営に参加するというのはなかなかできなかったことなので、新しい試みになるかと思います。
ほかに、アイドルの運営に仮想通貨を用いるメリットは、大きく分けて2つあります。ひとつは「アイドル運営の民主化」。もうひとつは「アイドルとファンの関係の持続化」です。
「アイドル運営の民主化」というのは、今ご説明したように、ファンがNIDTを保有することで直接、運営の意思決定に関われるということですね。実際にグループが立ち上がってからも、運営の意思決定にさまざまな形でNIDT保有者に関わっていただく予定です。
佐藤:また、一般の方々から活動資金を募れるということは、スポンサーを必要としない、ということでもあります。つまり、スポンサーの意向に左右されない、自由度の高いアイドル活動が期待できるんです。
ブロックチェーンによって、ファンの“熱量”を可視化する
佐野:「アイドルとファンの関係を持続化」できる、というのはどういうことでしょうか?
佐藤:アイドルグループが盛り上がっていくためには、ファンとの継続的な関わり合いが不可欠です。従来の資金調達方法だと、例えばクラウドファンディングがありますが、それだとひとつのプロジェクトで資金を集め終わったら、関係性が途絶えてしまいますよね。
佐野:なるほど。CD購入特典としての握手会参加券や、AKB48でいう「選抜総選挙」への投票券も、性質としてはクラファンに似ているのかもしれませんね。
佐藤:その点、NIDTは保有している限り、アイドルとファンの関係性が維持されます。また、ブロックチェーン(取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術)によって、ファンの投資が“熱量”として記録され、客観的数値として可視化できるのも強みですね。
佐野:まだまだ仮想通貨というと、わからない、怖い、という方も多いと思うのですが、どのようにファンの皆さんに受け入れられていると思いますか?
澤:金融の面から言うと、我々の発行するNIDTに対する信用度の高さもあると思います。日本の仮想通貨行政は非常に厳しく、厳粛な審査を通らないと新規仮想通貨の発行ができないんですよね。そこをクリアしたという点が評価されているのではと思います。
また、活動資金を市中から集めているため、その使い道を定期的に公表する必要があります。たとえばアイドル活動にいくら使われたかなど、資金の使用方法はファンの方たちにも開示されるので、それも安心して推していただくための材料になるのではないでしょうか。
現在、保有者が仮想通貨を活用するためのポータルサイトを構築中です。オーディションと共に目下、注力しているのはこの2つですね。
ファンの不安から生まれた、アイドルへの“福利厚生”
佐野:キャリア支援や人材育成などの専門家の目から見ても、『アイドル3.0 プロジェクト』は、アイドルグループとしてメンバーへの“福利厚生”の手厚さが特徴的です。退職学®︎の観点からも、アイドル卒業後のセカンドキャリア支援を大きく掲げている点に注目しています。そもそも、なぜアイドルグループを立ち上げる前から、そういったサポート面に着目したのでしょうか。
佐藤:アイドルファンとしての想いですね。先ほど「アイドル業界にはいろいろな“課題”がある」と言いましたが、アイドルを推していると、自分の推しが安心してアイドル活動をできていないのではないかと、運営サイドに対して憤りを覚えることも多々あるんです。「本当は活動がつらいんじゃないか」と思いながら推しを推すのは、ファンも不安なんですよ。
だからこそ、健全なアイドル活動のためには、運営サイドがメンバーのサポートをしっかりしなくちゃいけない。我々は、仮想通貨で得た潤沢な資金で、そういった面をカバーできればな、と思ったのです。
澤:先に申し上げた通り、私は複数の乃木坂46メンバーと関わらせていただいてきたのですが、彼女たちは現役で大活躍しているときでも、卒業後の進路について常に頭の片隅で考えているようでした。
現状、アイドルは何十年も続けていける仕事ではないので、現役のときからセカンドキャリアへの不安を抱えて活動せざるを得ない。そういった不安を、私たちの金融の知識と経験を生かして解消したいという気持ちがありました。
佐藤:また、アイドルは10代から20代前半という、一般の学生が社会に出ていくための準備期間に芸能活動をします。だから、いざグループを卒業し芸能界からも引退するようなケースでは、一般企業に入るのはなかなか難しいんですよね。そこで我々は、希望するメンバーに対しては、一般教養やPCスキルの習得など受けられよう、セカンドキャリアへのサポートをしようと考えています。
一般企業への就職はもちろんのこと、アイドル活動を経た上で、美容師やヘアメイクになりたい、という意志を持ったメンバーがいれば、それらもできる限り支援していくつもりです。
澤:『アイドル3.0 プロジェクト』は世界で活躍するアイドルを目指しているので、そのためにも英語、韓国語、中国語など、希望する語学のレッスンを必須で受けてもらう予定です。こうしたレッスン費などもやはり、NIDTで集めた資金でまかないます。
佐野:卒業後の進路の可能性も提示することで、安心してアイドル活動に打ち込めるんですね。
澤:そうですね。なお『アイドル3.0 プロジェクト』では、一定期間活動したメンバーへの退職金制度も設けており、NIDTでお支払いする予定です。ファンのみなさんの投資がメンバーに還元される仕組みをとっています。
元アイドルは就活で“無双”する
佐野:アイドルのセカンドキャリア問題の話が出ましたが、現在の新卒の就活や第二新卒の転職の市場において、アイドルグループで活動していたという経験はとても有利に働くと思うんですよ。アイドルの方々は、歌やダンスのハードなレッスンと、タフなアイドル活動を経験するので、自ずと努力する力が身についている。その上、ファンやスタッフなど多くの人と関わるので、コミュニケーション力に長けている人も多い。
佐藤:たしかにそうですね。
佐野:就活や転職市場には、アイドルがアイドルとして培ったタフネスとコミュ力を求める企業がたくさんあります。それに加えて一般教養、パソコンや語学スキルを身につければ、引く手数多になる可能性が高いです。
澤:アイドルシーンで活躍している子たちは、とにかくやる気に満ちあふれていますからね。
佐野:採用やマネジメント側としても、社員にマナーやスキルは教えられても、モチベーションだけは教えてあげることができない。実はやる気を引き出すことが一番難しいので、その素養があるのは有利でしょう。
佐藤:メンバーの卒業後に焦点を当ててお話をしてきましたが、もちろん現役の活動中も手厚くサポートしたいと考えています。特に健康管理の面では、パーソナルドクターをつけて、身体面だけでなく、メンタル面も含めたケアを行う予定です。
澤:アイドルは人に見られる職業なので、どうしても精神的にもしんどい部分は出てきますからね。また、将来の不安といった面も個々で相談できるようにしたいと思っています。
佐野:一般企業でも、まだまだメンタルサポートは進んでいないところが多いです。むしろ、こんなに手厚くサポートしてくれる会社は、大手企業や育成に力を入れている企業以外ではあまり聞いたことがありませんし、就職先としても優良だと思いますね。
また、アイドルが抱えるセカンドキャリアの問題は、プロのアスリートにも当てはまることですよね。こうしたキャリア支援の仕組みができたら、ほかの分野にも応用が利きそうです。
退路を断たなくても、アイドルは活躍できる
佐藤:ちなみに『アイドル3.0 プロジェクト』では、とにかくメンバーが安心して活動できるグループを作りたい。そのために、選抜制度も取らないことにしました。
澤:メンバー間の競争を極力減らそうと。いわゆる“序列”があってメンバー間の競争を促すと、切磋琢磨するという面はあるでしょうが、やはりストレスも大きいですから。
佐野:『アイドル3.0 プロジェクト』は金融の仕組みを使うことで、従来のアイドル像の刷新を目指していることがわかりました。これまでの大型アイドルグループは、競争という外的要因によって、いわば「頑張らされて」きた側面がある。
でも、こうやって安心して活動ができるとなると、逆に、自分自身で頑張る意味を見いだすことが必要になってきます。そういった意味で、今までとはまったく異なるアイドルが生まれる可能性があります。新しい才能に光が当たる仕組みと言えます。
佐藤:退路を断ち、崖っぷちに立つことで頑張れるのが従来のアイドルなら、これからは、安心して活動できるからこそ輝けるアイドルにも光が当たればいいなと思っています。
佐野:親御さんも安心して預けられるアイドルグループになるでしょうね。たとえば、アナウンサーになるために、アナウンサーのスクールで学ぶ学生さんは多いです。同様に最初から就職の選択肢の一つとして、アイドルになる道が選ばれるようになってもおかしくない。アイドル活動を通して努力する力とコミュ力を習得し、さらに語学も学べるんですから。
澤:まだまだこれからですが、『アイドル3.0 プロジェクト』をきっかけにアイドル界を変えていけたらうれしいですね。
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<プロフィール>
佐藤 義仁(さとう・よしひと)
オーバース代表取締役社長。松井証券株式会社取締役、株式会社SBI証券代表取締役執行役員専務、株式会社マネーパートナーズ常務取締役、フォビジャパン株式会社(現 ビットトレード株式会社)取締役など、一貫して証券、FX、暗号資産の分野において経営及び業務に携わる。2022年3月に当社を共同で設立し、代表取締役社長に就任。
澤 昭人(さわ・あきと)
オーバース取締役副社長兼CFO。公認会計士としてIPO支援や上場会社の社外役員などを歴任。2016年に乃木坂46メンバー(当時)の衛藤美彩さんと共著『なぜ彼女が帳簿の右に売上と書いたら世界が変わったのか?』をPHP研究所から出版。これがきっかけでTOKYO FMのラジオ番組『ジュグラーの波』で衛藤さん、AKB48総監督向井地美音さんと共演する。当社共同設立者。
佐野 創太(さの・そうた)
大手人材系企業で転職エージェント、求人サービスの新規事業責任者として従事したのち、退職学®︎の研究家として独立。1200名以上にキャリア相談(有料)を実施。退職者もファンになる退職広報を50社以上に提供。「時代に取り残されない組織」になるために自動生成AIの企業研修を行うAI活用メンターであり、一つの素材をWeb記事やウェビナー・研修といった複数のネタに変換するコンテンツ顧問としても活動している。1999年からGLAYファン(特にTAKUROさん)。 著書に『会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)
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