トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 大勢に従順なアーティスト

山下達郎だけじゃない!反骨心よりも大勢に従順なアーティストたち

山下達郎だけじゃない!事務所やビジネスに従順なタレントたちの画像1
松尾潔 公式ツイッターより

「15年間在籍したスマイルカンパニーとのマネージメント契約が中途で終了になりました。私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及したのが理由です」と7月1日に自身のツイッターで報告したのは、音楽プロデューサーの松尾潔氏。

 周知の通り今年3月に英BBCがジャニー喜多川氏の性加害問題を明るみにしたことが起源で、それまでにあった“臭い物に蓋をする”風潮にとどめを刺すかのように、日本国内でも様々な場面で見解を述べる著名人が現れているワケだが、松尾氏もそのひとりだった。

 自身もSMAPなどへ楽曲提供をしたことがあることからもわかるよう、所属していたスマイルカンパニーは、ジャニーズ事務所とは長年のビジネスパートナー。もっといえば、スマイルカンパニー初代社長の小杉理宇造氏は、ジャニーズ・エンタテイメントの社長、またジャニーズ事務所の顧問も担っていた人物であるため、蜜月の関係なのだ。

 簡単にいってしまえば、反骨心を持って、悪いものは悪いとコメントした在籍者をお得意様の手前、契約を終了する結果を選んだと捉えられる。

 さらに松尾氏はツイッター上で「私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です。今までのサポートに感謝します。バイバイ!」と心の内を綴っていて、この発言は多くの人をどぎまぎさせるものであった。

「山下達郎は、芸能界の独特な搾取システムにも批判的だったり、『レコード大賞』など賞レースや音楽番組への出演といった商業的な音楽業界の習わしからは距離をとっている方という印象を持っている人が多いと思います。だから、ジャニーズの素晴らしい音楽とは切り離して、その体制を批判したという本流ではないことへのコメントが受け入れられず、逆に会社の方針に賛成だった山下氏に松尾氏がショックを受けるのも頷ける。だけど、いっちゃえば山下氏は音楽職人という芯は強いけど、そこはスマイルカンパニーの一員でもある。アイドルのプロデュースにも否定的でしたが結局、KinKi Kidsや嵐、現在の木村拓哉などにも楽曲を提供しているのは、古い付き合いで恩師でもある小杉さんの意見を尊重する姿勢であって、今回のことでもその意外と組織的な一面がみえましたよね」(音楽ライター)

 特に大きな権力を持つ芸能事務所には、関係性に気を遣い、マスコミを含めた企業側が黙ってスルーする“忖度”が主流だった。

 今年3月、これまたジャニー喜多川氏のセクシャルハラスメントの問題、並びにジャニーズ事務所の在り方に、大手広告代理店のひとつ、博報堂が発行する雑誌『広告』の記事内で評論家の矢野利裕氏がコメントした件は、大きく話題となった。

 その記事の末尾には「本記事は、ビジネスパートナーであるジャニーズ事務所への配慮の観点から、博報堂広報室長の判断により一部表現を削除しています」と記されていたのだ。

 これは矢野氏への事前報告なしに、マスメディアが忖度することに疑問を呈した文言を、自社の利益のために一方的な判断で消されるという、まさに芸能界忖度の例を見せつけるかのような流れだった。

 自身のスタイルを貫いていると思いきや、やはり縛りや取り巻きの多さと複雑さから、体制を守るスタンスをとらざるを得ないパラドックスを抱えるのは、企業だけでなく芸能人にも多い。

 記憶をたどると、木村拓哉も自身の信念を貫き、それまでのジャニーズアイドルというあり方に一石を投じたパイオニアのひとりだった。

 2000年11月、当時28歳ハチャメチャに売れっ子だった木村は、交際していた歌手の工藤静香との間に第一子Cocomiを授かり、結婚することを突如宣言し、世間には衝撃が走った。

「当時はジャニーズ側も所属タレントの色恋には厳しくって、もちろん猛反対されたそうです。ご法度に近い授かり婚を決行し、ファンからも大ブーイングで、未だにキムタクのファンですら、工藤静香を含めたこの一件を快く思っていない人も多いです。ただそんな木村も、事務所の方針に従わず己を貫いていくかと思いきや、SMAP解散騒動時には事務所に留まることを決めましたから、保守的な印象がつきましたね。もちろん、結果的に妻子を持つことを容認した事務所への忠誠心という話や、静香さんの意向を汲んだという話もあるけど、“そっち側だったか”といったところ」(芸能リポーター)

 一方で、2021年3月にシンガポールへ移住した元オリエンタルラジオの中田敦彦は、芸能事務所とタレント間での不協和音を奏でていた。

「組織の中でルールに属せないという理由で、オリエンタルラジオを解散、吉本興業との契約を終了して退所しました。最近になって、自身のYouTubeチャンネルを通じて、大先輩であるダウンタウン松本人志さんへの批判的なコメントを出し、世間を連日賑わせていましたね。退所当時は“吉本にいたかった”といっていたみたいですが、頭がいいあっちゃんですから、これも建前か本音かどうかわからないですけどね」(既出・レポーター)

 そんな中田の後輩で、2021年4月から本格的に拠点をアメリカ・ニューヨークへ移した渡辺直美も、度々、吉本興業を退所するのではと騒がれているーー。

 ただ、7月1日に公開された渡辺のYouTubeライブでは『私は永遠の吉本。背中に大きく吉本ってタトゥー入っているから。嘘です。それくらい吉本が好きです!』というほど、実は組織に従順なのだ。

「渡辺はお笑い芸人の枠を飛び越え、世界中で活躍する唯一無二の存在になりつつあります。ファッションブランドをプロデュースしたり、インスタグラムのフォロワー数も日本国内でトップの1,000万人目前で、“吉本所属芸人らしくない”と思う人も多いみたい。そうやって自分自身を確立していますから、事務所の支えがなくても引く手あまたで無双状態でしょう。むしろ仲介がない分、フリーでやればもっと稼げるはず。アメリカのエージェント2社と契約していて、世界的ハイブランドからもどしどしモデルとして起用されていても、本人の希望でマネージメントは吉本興業のままなんです。一貫してお笑いがベースで、吉本ありきの自分というスタンスなんですね」(週刊誌記者)

 こうしてみてみると、世俗的に信念に基づき発言や行動をすることが賞賛される社会ムードにはなりつつあるものの、しがらみは我々が思うよりタイトそうだ。

 さて松尾氏は7月6日、日刊ゲンダイの自身の連載でより詳細な顛末を綴った。一方、山下達郎も7月9日にTOKYO FMの自身の番組で大切なお知らせをすると事務所が発表している。

 松尾氏の件があって、なおのこと“契約終了”などの見えない力がチラつき、声を上げずらくなる世の中にならないことを願うしかない。

大沢野八千代(ジャーナリスト)

1983生まれ。大手エンタメ企業、出版社で勤務後、ネットソリューション企業に転職。PR案件などを手掛けている。KALDIフリーク。

おおさわのやちよ

最終更新:2023/07/11 11:35
ページ上部へ戻る

配給映画