トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 済東鉄腸が信じる“俺”の肯定
御本出してみて、どうですか? #1

ナルシシズムが他者の尊重につながる『千葉ルー』済東鉄腸が信じる“俺”の肯定

ナルシシズムが他者の尊重につながる 『千葉ルー』済東鉄腸が信じる俺の肯定の画像1
撮影/二瓶彩、以下同

 日本国内では年間約7万点の新刊書が生まれている(公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所「出版指標年報」2021年より)。

 新刊書の場合、刊行前後に著者インタビューがさまざまな媒体に掲載される。本を手に取ってもらうための宣伝として重要な役割を果たす。ただ、むろん、本は世に出たらそれで終わりではない。時間がたって読者や評者からの反応が届けば、さらに新たな発想が生まれたり検討が進んだりすることもあるはずだ。本連載では刊行から3カ月以上が経過した書籍の著者にインタビューをしていく。

 第1回はエッセイ『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(左右社)の済東鉄腸氏。タイトル通り、引きこもりの映画オタクだった著者がルーマニア語と出会い、インターネットを通じてルーマニア語の小説を書き同国の文学界に名を残すこととなった数奇な経緯がつづられている。同書を出して、どんな変化が起きたのか――。

インターネットの良い面に目を向ける

――今年2月に刊行されたエッセイ『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(以下『千葉ルー』)はタイトルや内容のインパクトもあり、発表直後から大きな話題となっていました。

済東鉄腸(以下、済東) 今年1月頭から告知を出し始めたときに、まずTwitterで昔から自分をフォローしてくれてる人たちが「うおー!マジか!!」って感じでリツイートしてくれました。そのリツイートを見て「え、こんな人いるの?」という感じでフォロワーの外にも広がって、一気に数百人レベルでフォロワーが増えましたね。

ナルシシズムが他者の尊重につながる 『千葉ルー』済東鉄腸が信じる俺の肯定の画像2

――その後、全国紙や週刊誌の書評欄などでたびたび取り上げられ、各種ウェブメディアでも著者インタビューが掲載されるなど反響を呼んでいます。刊行から約5カ月がたって、この期間で印象に残っていることはありますか?

済東 『サラダ記念日』(河出書房新社)などで知られる歌人の俵万智さんに読んでいただいて、感想をツイートしてもらったのはめっちゃビックリしました!

 あと、言語学者・伊藤雄馬さんの著書『ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと』(集英社インターナショナル)を読んだら、『千葉ルー』に呼応する双子の兄弟みたいな感じがして。それで本の感想をTwitterでつぶやいたら、伊藤さんにも『千葉ルー』を読んでいただけて、トークショーのお誘いが来て……そんなふうに、Twitterを通じてどんどん縁がつながっていきました。

 ほかにも、僕自身は本にも書いたとおり難病があってなかなか遠出できないんですが、全国の書店さんが『千葉ルー』をどう売ってくれているのかをTwitterで見ることができて。『千葉ルー』と『ムラブリ』を一緒に並べてくれたり、読者の手に届けるために工夫して売ってくれている姿を見られて感動しましたね。

――Twitterを通じて、本に関わる人々とのつながりを確認できた。

済東 Twitterはなにより直接読者と交流できるのが素晴らしいです。俺、エゴサ大好きなんでよくやるんですけど、毎日1~2個は「評判通りだった」とか「勇気づけられた」って感想が出てきて、読んでくださってありがとうございます!! ってなります。「ここの部分が良かった」って書いてあったら、なんならそのパートを書いた時の裏話をリプライで送ったりして(笑)。それで読者の方がさらに「ブログで感想を書きました!」と言ってくれたりして、縁が出来ていくんですよね。

『千葉ルー』ではSNSやインターネットの良い面を利用してどんどん縁を作ってやっていこう、というのを書いていて、実際に俺はFacebookを通じてルーマニアの人とつながった。そんなふうにFacebookでやってたやり方を、今度はTwitterで応用している感じです。

今は、TwitterだったりAmazonのレビューや「読書メーター」など、読者の反響が完全に可視化されています。その中で、反響を軸に作者が反応をしていくことで、また別の考えをもたらしてもらうとか、“読書”自体をもっと高次の体験にしていけるかもしれない。SNSにはまだそういった可能性があるように感じています。

1234
ページ上部へ戻る

配給映画