沖縄問題を中国に政治利用される危険も…玉城デニー知事の訪中を自民党筋が危惧
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沖縄県の玉城デニー知事が鳴り物入りで今年度から立ち上げた「地域外交室」。7月3日から6日は北京、秋には台湾を訪問する予定で本格的に始動する。
県産の輸出を促進する、海外企業の誘致といった他の都道府県の経済的効果を主に狙う民間外交なら特に問題はないが、玉城知事の「地域外交室」は「アジア太平洋地域の平和維持に貢献する」と沖縄県独自の外交を推し進めようとしている。
北朝鮮からのミサイル、尖閣諸島の領有権を巡る中国との鞘当てに台湾有事と、日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、本来、国の専管事項である外交と安保には綿密な情報収集と分析力に加えて、高度な外交的駆け引きの力量が求められる。一地方自治体に過ぎない「沖縄」が一プレイヤーとして“外交”に参加することには、「スタンドプレーや火遊びでは済まされない、危うさが伴う」と自民党関係者は懸念する。
7月の北京訪問、要人との会談も
玉城知事の7月3日から6日までの訪中は、河野洋平元衆議院議長が団長を務める「日本国際貿易促進協会(国貿促)」に同行する形を取る。国貿促は2017年4月に訪中した際、北京の人民大会堂で中国の李克強首相と会談し、同行した当時の翁長雄志知事も李首相としっかり握手を交わした。
今回の玉城知事の訪中も中国の大物と会談する可能性があり、誰に会うかによって、経済交流が目的の国貿促訪中も一気に安全保障の問題が絡む生臭いものになる可能性がある。
そんな中、中国共産党の機関紙「人民日報」が6月4日付の一面で、習近平国家主席が沖縄県尖閣諸島に関連して琉球(沖縄)と中国との交流に言及する発言をしたと報じた。習氏は沖縄と関わりの深い福建省長を務めたことがある。今月1日から2日にかけ、資料館を訪れた際に、明代の釣魚島(尖閣諸島の中国名)について説明を受けると、琉球墓園、琉球館や、久米三十六姓(洪武帝の命により来琉した職能集団)など沖縄に関する言及をしたという。
習氏が玉城知事の7月の北京訪問をどこまで把握しているかは定かでないが、党の機関紙がわざわざ一面で習氏の沖縄への言及を報じることには、政治的な意図を感じる。前回の2017年4月の国貿促の訪中で一行を出迎えたのは当時の中国のナンバー2である李首相だったが、今回はナンバー1の習氏自らが一行を北京の人民大会堂で迎え、玉城知事ともしっかり握手を交わすかもしれない。
習氏にしてみれば、中国が内政問題とする台湾問題に、米国に付随する形で日本が関与を強めるのなら、沖縄の帰属問題を持ち出すことで日本に揺さぶりをかけられる。そのためにも、玉城知事を北京滞在中は厚遇し、沖縄の過重な基地負担にも理解するふりをし、日本政府との分断を図るだろう。
2013年5月10日付の産経新聞(電子版)によると、人民日報は同月8日付の紙面で、沖縄県の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」などとする論文を掲載した。まだ傍流扱いとはいえ、「沖縄地位未定論」を主張する中国の歴史研究者は90年代から台頭してきているという。
繰り返すな、素人外交の愚
繰り返すが、外交と安保は国の専管事項である。地方自治体が独自の外交をしようにも自ずと限界がある。島根県が2005年に条例で2月22日を「竹島の日」と制定し領有権の確立を目指すも、韓国の激しい反発を招き、日本各地の地方自治体で予定されていた日韓の交流イベントが相次いで中止に追い込まれる事態となり、日韓の外交問題にまで発展した。
日本の例ではないが、昨年9月に亡くなった英国のエリザベス女王の伯父で、離婚歴のある米国人のウォリス・シンプソンと結婚するために王位を放棄したエドワード8世もヒトラーのナチス・ドイツに理解を示すなど危険視された人物だった。
退位に伴い、ウィンザー公爵となり、1937年6月にシンプソン夫人と結婚。結婚直後の夏には夫人を伴いドイツを訪問、ヒトラー、ゲーリング、ゲッペルスなどのナチス政権の要人と会った。退位後、ウィンザー公夫妻はパリに住んでいたが、1940年5月にドイツ軍がフランスに侵入すると中立国のスペインに移った。
ドイツ側は英国を屈服させた暁には、ウィンザー公を傀儡の英国王に再び即位させることを検討していた。こうした動きを察知したチャーチル首相はウィンザー公をバハマ総督に任命する。夫妻は同年8月にはポルトガルからバハマに向け出港、第二次世界大戦が終了するまで留め置かれた。
チャーチルという強い指導者がいたからこそ、ウィンザー公夫妻は欧州から遠く離れたバハマに追いやられ、ナチス・ドイツに政治利用されることもなかった。
現在の沖縄にチャーチルはいない。玉城知事に今の時期の訪中が如何に危険で、中国に政治利用される可能性が高いかをきちんと伝える忠臣もいない。
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