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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『遠野物語』に着想を得た⼭⽥杏奈主演作
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.744

山田杏奈、森山未來が“山人”を演じた『山女』 日本人のアイデンティティに迫る異色作

山田杏奈とは対照的なキャラを演じた三浦透子

山田杏奈、森山未來が“山人”を演じた『山女』 日本人のアイデンティティに迫る異色作の画像5
人間くささを感じさせる春(三浦透子)と泰蔵(二ノ宮隆太郎)

 深い闇に包まれた森の夜、洞窟で野生動物を喰らう山男の横で、凛も食事を共にすることになる。凛と山男が一緒に生活するようになる重要なシーンだ。

福永「村で生まれ育った凛は、男に従わないと女は生きていけないという価値観がベースにあり、山で生きていくために山男と夫婦の関係になろうとします。でも、凛が思ったような展開にはなりません。村で育っていない山男には、凛が当たり前だと思っていた村の常識は通用しないんです」

 凛と山男とは対照的なカップルとなるのが、村の重役の孫娘・春(三浦透子)と駄賃付の泰蔵(二ノ宮隆太郎)だ。馬を連れて他の集落とを行き来する泰蔵は、凛に好意を寄せていたが、結婚を迫る春を拒むことができない。泰蔵と春のやりとりは実に人間くさく、シリアスな物語の中でおかしみを感じさせるシーンとなっている。『ドライブ・マイ・カー』(21)での好演が光る三浦透子、監督作『逃げきれた夢』が公開中の二ノ宮隆太郎が、どちらも憎めない味のあるキャラを演じている。

福永「三浦透子さんと二ノ宮隆太郎さんのやりとりはとても面白く、2人のシーンはもっと見ていたいと思わせるものがありました。村の人たちが悪者で、凛だけが正しいのかというと、決してそんなことはないわけです。物事には常に多面性がありますし、単純に白黒をつけるような描き方は避けました。僕自身は海外で生活したことで、自分が身につけていた常識が通用しなかったり、日本にいるときには気づかなかった日本文化のよさに気づくことができたりもしました。自分の知らない世界に触れることで、新しく見えてくるものがあるんじゃないでしょうか」

 山で生きることを選ぶ凛と山男、村での生活を選択する春と泰蔵。どちらの暮らしも決して楽ではないが、それぞれ違った喜びや幸せを見つけながら生きていくに違いない。

『山女』
監督/福永壮志 脚本/福永壮志、長田育恵
出演/山田杏奈、森山未來、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでん、永瀬正敏
配給/アニモプロデュース 6月30日(金)より渋谷ユーロスペース、シネスイッチ銀座 7月1日(土)新宿K’s cinemaほか全国順次公開
©YAMAONNA FILM COMMITTEE
yamaonna-movie.com

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最終更新:2023/06/29 19:00
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