『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』でショーン・コネリーが選ばれたのは必然だった
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ジョージ・ルーカスとスティーヴン・スピルバーグ、ハリウッドの頂点に君臨した二人によって創造された映画『インディ・ジョーンズ』シリーズの最新作にて完結編と目されている『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』公開を記念して、日本テレビ系『金曜ロードショー』では、シリーズ全作品を振り返り放送。今夜は第三作目『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』が登場!
インディと父親ヘンリー・ジョーンズ・シニアが手にした者は永遠の命を得られるという、キリストの聖杯を巡ってベネツィア、ベルリン、トルコ、世界中を股にかけた大冒険を繰り広げる!
1912年、13歳の少年インディ(リヴァー・フェニックス)はボーイスカウトとして活動中に洞窟の中でアステカの秘宝であるコロナドの十字架を盗掘している一団を目にする。博物館に収められるべき文化財を、富豪に売り飛ばそうとする企みを聞いたインディは彼らから十字架を奪い取り、逃げ出す。
飛び乗った列車内で盗賊たちと争いになるも、見事逃げ切ったインディは父親に十字架を見せようとするが、悪党と結託していた保安官によって十字架は奪い返される。しかしインディの「決してあきらめない」冒険者魂に魅せられた盗賊団のリーダー、フェドーラ(リチャード・ヤング)はインディを認め、自分の帽子をプレゼントする。それはのちの大冒険者、インディのトレードマークとなるソフト帽だった。
1938年のポルトガル沖、嵐の海上でインディは盗賊団を雇っていた悪辣な富豪と相対し、再び十字架を奪い返す。
「あの時の借りは返したぞ」
16年越しの雪辱を果たしたインディは旧友の博物館長マーカスにコロナドの十字架を手渡す。その後、博物館のスポンサーである大富豪ドノバン(ジュリアン・グローヴァー)から‟キリストの聖杯”を探索してほしいという依頼を受ける。
ドノバンは聖杯の在り処を示した欠けた石板を手に入れており、聖杯をあるべき場所に戻すために調査団を派遣したが、隊長が行方不明になってしまい、その行方を捜すと同時に聖杯を手にしてほしいと。行方不明になった隊長とは、インディの父、ヘンリー・ジョーンズ・シニア(ショーン・コネリー)であった。
人生を聖杯探索に注ぎ込んできたシニアは病に臥せた妻を看取ることもできず、インディとは長い間、確執があった。葛藤しつつも聖杯探索、父親捜しを引き受けたインディが自宅に戻ると部屋はめちゃくちゃに荒らされていた。
受け取ったまま忘れていたヴェネツィアからの小包を開くと、中にはシニアの手帳があった、そこには聖杯に関する情報がぎっしりと書き込まれていたのだ。
ヴェネツィアに飛んだインディたちは、シニアの助手だった考古学者エルザ・シュナイダー(アリソン・ドゥーディ)と会い、元教会だった図書館の隠し部屋から聖杯の在り処を示す石板の欠片を発見。だが謎の男たちに命を狙われる。彼らは聖杯が邪悪な者の手に渡らぬよう守護してきた「十字剣兄弟団」の構成員であった。
真の敵は聖杯を手に入れようとするナチスの残党だと知ったインディと十字剣兄弟団は和解。シニアが捕らわれている城に向かうのだが……。
1981年に公開された『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』は大ヒットを記録した。その後映画はシリーズ化するが、1作目を製作している時点でルーカスは三部作の構想を持っており、スピルバーグもそのつもりで監督をしていた。
ところが2作目の『魔宮の伝説』の評価が低調で、興行的にも期待していたほどの数字ではなかったことから、二人は幕を引く3作目をどうするか、悩むことになる。
『グレムリン』でスピルバーグと組んだクリス・コロンバスが脚本を完成させ、ロケハンが始まったが、最終的にこの脚本にルーカスとスピルバーグが不満を感じ(ロケハンしてるのに)、これは没になり、コロンバスは企画から離脱。
この段になってスピルバーグが、インディの父ヘンリー・ジョーンズ・シニアを登場させるアイデアを思いつく。長い間確執のあった父子が冒険を通じて和解するというストーリーだ。
スピルバーグ自身、両親の離婚を経験している。大声で怒鳴りあう両親の姿を見て「宇宙人がやってきて二人を仲直りさせてくれますように」と祈ったともいわれているスピルバーグの思想が、父親が家族を放り出してUFOに乗って宇宙に旅立つ『未知との遭遇』、両親が離婚寸前の家庭で子供が宇宙から来た生物を悪い大人から守ろうとする『E.T.』に反映されているように、父と子の和解の物語はスピルバーグにとって他人事ではないのだ。
ただそれだけではスピルバーグのプライベートな話になってしまうため、ルーカスは話の中心に聖杯探索を盛り込むことにする。スピルバーグのプライベートな話、ルーカスのエンターテイメント要素、二つが化学反応を起こした脚本が完成する。
キャスティングでは、シニア役にショーン・コネリーが選ばれた。
『インディ・ジョーンズ』はもともと『007』のような映画を構想して作られたのだから、映画でジェームズ・ボンドを演じたコネリーは当然のように起用された。彼が演じるシニアは最初のパートでは、後ろ姿しか映らない。観客はコネリーの後ろ姿だけ見せられてモヤモヤする。
オープニングでそのモヤモヤを払拭する大活躍を見せるのは少年時代のインディ役、リヴァー・フェニックスだ。
フェニックスの出世作『スタンド・バイ・ミー』と同年に公開された『モスキート・コースト』で共演していたハリソン・フォードが推薦する形で出演。彼のキャリアの中でも大規模予算の作品であり、唯一といってもいい大アクション映画での姿には価値がある。
フェニックスはこの役を演じるにあたってシリーズを見返すことはなく、普段のハリソン・フォードを観察して「インディではなくフォードになりきろうとした」としたと言われており、派手なアクションの中にユーモアあふれるキャラクター性を見出していたフェニックスは、月並みな表現だが天才としか言いようがない。
『最後の聖戦』の物語はキリストの聖杯を手にしたものたちが選択を迫られる。
聖杯を守護する騎士から「多数の杯の中から正しいものをひとつ選べば永遠の命。誤ったものを選べば死」と告げられる。悪党は他人に杯を選ばせた。結果朽ちて死んでしまう。インディはキリストが元大工だったことを思い出し、木製の粗末な杯を選び、すくった水を瀕死の父親に飲ませる。傷は立ちどころに塞がり、命は救われる。
『最後の聖戦』という物語は「聖杯の力でも借りなけりゃ、父親と和解なんてできない」というスピルバーグの思いが込められていた。
スピルバーグは母親と離婚し、家族を捨てていった父親を長い間憎んでいたというが、実際は母親の方が父の友人と恋愛関係になったことが原因だった(この辺のことはスピルバーグの自伝映画『フェイブルマンズ』に描かれている)。
父の晩年にスピルバーグは和解を果たす。それをとりなしたのは『魔宮の伝説』がきっかけで結婚した妻のケイト・キャプショー。よくできた話だなあ! 映画より面白いんじゃないか。
物語の上でも私生活でも問題を解決したスピルバーグがインディ・ジョーンズで描くことがなくなり、2008年の『クリスタル・スカルの王国』まで休眠状態が続くのです……。
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