お笑い賞レースブーム極まる!芸歴5年目以下の大会が超ハイレベル
#お笑い #TPの芸人礼賛
――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。今回は芸歴5年目以内限定の新設賞レース『UNDER5 AWARD 2023』決勝によせて。
今年から新たに創設された芸歴5年目以内の若手芸人の賞レース『UNDER5 AWARD 2023』。決勝戦が6月18日にルミネtheよしもとで行われ、金魚番長が優勝し「賞金100万円」をゲットした。僕は東京と大阪で行われた準決勝、そして決勝戦をすべて観させてもらったので、この連載ではおなじみになりつつある「決勝戦全組振り返り」を早速敢行したいと思う。
【三遊間】
大阪の正統派漫才コンビ。『M-1』でも準々決勝進出を果たすなど特に関西では「面白い若手」という認知はかなりある人たち。特に櫻井さんは僕が大好きな『霜降り明星のだましうち!』(ABCラジオ)のハガキ職人だったこともあり大応援している。
肝心のネタはトップバッターとして十分すぎるほどのウケ、拍手笑いも3回くらい巻き起こっていた。とにかく達者だし、準決勝とは違うネタをやっていて末恐ろしいなと思った。
【あくびぼうや】
大阪出身だけど上京してフリーで活動しているコンビ。独特なテンポの漫才は2021年の『M-1』で「ナイスアマチュア賞」を獲得して話題となった。「陰キャなのに大声でツッコむ」という、ありそうでなかったスタイルがかなりハマっていた。
どこかに属すのが嫌で自由気ままにやりたい人たちなのかと思ったら中MCで「めちゃくちゃ(スカウト)求めてます」と言ってて笑ってしまった、すぐ声がかかると思う。
【ハマノとヘンミ】
太田プロ所属のコント師。昨年のキングオブコント準々決勝でもめちゃくちゃウケていた鉄板ネタを披露。あの時よりもかなりブラッシュアップされていて面白かった。審査員のナイツ塙さんが「ちゃんとしたコントって5年目くらいまでは評価されづらいからこそ評価したい」と言っていたのが印象的。
【イチゴ】
神保町よしもと所属の愛されコンビ。僕が関わっている板橋ハウスや10億円からよく名前が出てくる。2人とも見た目のインパクトがすごいし、キャラも良い意味で気持ち悪くて一度見たら忘れない。毎回客ウケもすごくて、生で見るとさらに面白い人たちなんだろうなと思うし、2人の人となりが世間に浸透したらもっとウケるんだろうなとも思った。
祝!UNDER5決勝進出 イチゴを紹介しよう【10億円無問題】
【キャプテンバイソン】
今大会でいちばん衝撃を受けた人力舎所属のコンビ。申し訳ないがまったく存じ上げず、面白すぎて人力舎の知り合いに連絡をしたら「まさかあんなにウケるとは……」と言っていたので、なかなかのダークホースだったようだ。
かっちりした完成度の高いコントというわけではなく、お笑いの基本である「変な人」を存分に押し出して力技で笑いを取っていきつつ、最後はしっかり伏線回収をしてその日いちばんの拍手笑い、完璧だなと思った。審査員から「『キングオブコント』の決勝で戦える」とも言われていたし、今後が楽しみ。
【どんちっち】
2022年の『M-1』で3回戦突破を果たし、強烈なインパクトを残したコンビ。決勝でもそのネタをやっていた。堂々としていて貫禄があり、お客さんを次第に自分たちのペースに巻き込んでいく理想的な漫才をしていた。すげえ。
『THE SECOND』決勝と相似形を描いた決勝戦
【エナマキシマ】
ボケが日本とアメリカのダブルというコンビ。『M-1』の3回戦でも面白いなぁと思ったが、今回もめちゃくちゃ面白かった。「見た目いじり」を全くせずに、普通に強いボケで笑いを量産していた。
【ライムギ】
なつみさんのほうが3年目とは思えないほどの老け顔で笑ってしまった。声が出ていたし演技がめちゃくちゃうまかった。ここまでで大阪の漫才劇場所属の漫才師が4組登場していて、ニッポンの社長やロングコートダディなどがごそっと抜けた後も「マンゲキ」はだいぶ安泰だなと思った。
【金魚番長】
準決勝ではトップバッターだったにも関わらず、それをものともせず決勝進出。準決勝も決勝もウケ量的にはダントツだったんじゃないかと思った。どんな設定でも使えそうな強いボケを量産していて『M-1』でも楽しみ。
以上9組による決勝戦はもちろん全組大ウケで、5年目以下の大会だということを忘れるほどにハイレベルだった。ここから、あくびぼうや・キャプテンバイソン・金魚番長が最終決勝に勝ち上がり、金魚番長が見事初代王者に輝いた。どちらかというと「ノーマーク」だったあくびぼうやとキャプテンバイソンを、NSCを首席で卒業し、『M-1』でも準々決勝に進出するなど実績十分で場数もかなり踏んでいる金魚番長が圧倒した構図は、『THE SECOND』決勝のギャロップVSマシンガンズを彷彿とさせるものがあった。
「面白さ」に加えて「新しさ」や「将来性」も求められながらも、最後の最後はダントツにウケていて文句なしに面白かった金魚番長に票が集中した結果となった。
なお準決勝で敗退してしまった組の中でも、いろはラムネ、喫茶ムーン、清川雄司、群青団地、ツンツクツン万博、2番目のアポロ、レインマンズなどなど面白い人たちがたくさんいたし、昨今のお笑い界のレベルの高さに驚くばかりだ。
若手による大会ということで、始まる前までは「荒削りだけど将来性があるネタをたくさん見られる!」と思っていたのだが、フタを開けてみると全然荒削りじゃなく、しっかりと面白いネタばかりだった。
決勝戦の各ネタはYouTubeにて配信されているのでぜひチェックしてもらいたい。さらに「芸歴」ではなく「年齢」が出場条件である25歳以下限定の賞レース『UNDER 25 OWARAI CHAMPIONSHIP』も絶賛開催中で、9月に決勝が行われるのでこちらも楽しみだ。僕は予選の審査員を務めさせてもらっているのだが、予選から本当にハイレベルなので、すさまじい決勝になること間違いなしだ。
若手の賞レースが2つも創設されて、16年目以上の大会『THE SECOND』もあって、『M-1』や『キングオブコント』や『R-1』や『THE W』もあってと、芸人さんにとっては大変かもしれないが、この「大賞レース時代」に感謝しながら、これからも日々さまざまなお笑いをチェックしていきたいと思う。(編集/斎藤岬)
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