人生のターニングポイントだった『ウリナリ』収録中に若手芸人が寝てしまった理由
#芸人 #檜山豊
僕が書いているコラムは僕が元芸人ということもあり、お笑いに特化した内容を選んで書いており、それ以外のことはなるべく書かないようにしている。しかし、たまにお笑い関連のニュースやトピックが見当たらず、何を書いていいか途方に暮れてしまうことがあるのだ。今はまさにそういう時期で、ここ最近のお笑いニュースといえば、オリエンタルラジオの中田さんがダウンタウンの松本さんに対して批判的な動画を投稿したというトピックの関連記事が大半を占める。
お笑い以外のエンタメでいうと、女優の広末涼子さんとフレンチレストラン「sio」のオーナーシェフ鳥羽周作さんのW不倫問題。お二人とも不倫を認め、広末さんに関しては事務所が無期限謹慎処分という発表をし、さらには2人が継続的に交わしていた交換日記形式のラブレターも公開される事態に。
とにかく今のエンタメ業界で盛り上がっている話題といえばこの2つで、それ以外は特に目立ったものはないといえる。
こういう場合、僕はお笑いやエンタメ以外の、普段は携わらないであろうニュースやトピックを瞥見するようにしている。スポーツや政治、はたまた世界情勢など。とりあえず見てはいるのだが、これといって目にとまるものはほとんどない。なぜなら僕は元々お笑い以外に興味を持てない性質であり、軽いディスレクシア(読み書き障害)があるため、ニュース記事を最後まで読んだり見たりすることが困難で、結局のところどんな記事にも食いつくことが出来ず、脳みそからの信号に従うように眠りにつくのだ。まるで国会中継中に寝てしまう議員のように。
これは余談だが、試しに「国会中に寝てしまう議員」を検索したところ、関連記事や動画が山のように出現し、そのほとんどが批判的な意見であり、眠りを“悪”とするもので溢れかえっており、中には「居眠り議員一覧」や「地方議会の睡眠しやすいポイント」などを載せている一風変わった趣向のページも存在した。
国会中に寝られる神経を疑ってしまうという意見もあり、確かに内政を論じているタイミングで寝られるとは何とも図太い神経だが、昔財務大臣だった麻生太郎さんが自身の戦後最長任期について問われた時に「あんた、朝の9時から5時までずっと質問がないのに2ヶ月間座ってられる自信ある? できねぇだろ。じーっと質問もないのに予算委員会で座ってる。やってみな」というコメントをしたことがあった。
これは麻生さんなりに任期が長かったという話をしていて、居眠りとは直接関係ない話だが、もし自分が8時間、何もやることがない状態で椅子に座っていたら、確かに寝てしまうかもしれない。もちろん寝ちゃダメなのはわかっているが、寝てしまうということは誰にでもある。ましてや政治家の方たちのように忙しい身分なら当然かもしれない。何度も言うが、根本的に国会中に寝てしまうのはダメだ。決して擁護しているわけではないのはご理解いただきたい。
ただ、大事なタイミングで眠気に勝てないという状態に共感できるのは、僕自身が同じような経験をしているからだ。まだ芸人をしていた頃、ラッキーなことに、事務所の先輩であるウッチャンナンチャンさんの番組に出演させてもらえる機会があった。もちろんバーター(抱き合わせ出演)などではなく、番組のプロデューサーさんがホーム・チームを気に入ってくださり、番組に呼んでくれたのだ。
それは「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」(日本テレビ系)という、ウンナンさんがMCをしている超人気番組だった。僕たちが呼ばれたのは「ウリナリ解散総選挙」という企画。番組のリニューアルに伴い、レギュラーメンバーも一新しようということで、この企画が行われたのだ。僕たち若手芸人とっては大チャンス。何か爪痕を残せればレギュラーになれるかもしれない、もしダメでも準レギュラーになれるかもしれないという大舞台だ。まさに“天王山”といっても過言ではない好機だったのだ。
新レギュラーを狙う芸人は僕たちを含め総勢20組。「さまぁ~ず」さんや「よゐこ」さん、「デンジャラス」さん「TIM」など、ほぼ先輩たちで、その中になんと「ウッチャンナンチャン」さんも参加しているのだ。あと確か「リットン調査団」さんもいた。
本番の場所はホテルの広い会場で、結婚式のように丸いテーブルと椅子が用意されていた。僕たちはウンナンさんやさまぁ~ずさんがいるメインの場所から一番遠い場所が定位置となっており、ほとんど会場の端っこにいる状態だった。メインの場所で盛り上がっていても、こちらまで声は届かず、芸人が盛り上がった際に集まるような場合でも遠すぎてタイミングが狂ってしまい、番組の邪魔になりかねない。
なので容易に動くことが出来ない上、すぐそばにスタッフさんがいたため、不用意に話すこともできない。なので、自分たちの出番が来るまでその席でじっと待つことしか出来なかった。スペシャル企画のため、収録時間もやたら長く、自分たちの出番になるまでかなりの時間がかかった。ただひたすらにその時を待ち構えていたのだが、ありがたい事にその時期、僕たちは若手芸人としては忙しい日々を送らせてもらっていた。つまり、あまり寝ていない状態でその収録に臨んでしまっていたのだ。
やることない。喋れない。睡眠不足。さあ読んでいる皆さんは僕たち「ホーム・チーム」がどうなったかもうお気づきだろう。そう寝てしまったのだ。もちろんえげつない緊張感を纏っているので熟睡するなんてことは出来ない。なので背筋を伸ばしてメインの場所を見つめながら、姿勢よく寝ているのだ。違和感があるのは閉じた瞼と、脱力した顎近辺。さすがにマズイと思い目を開けると、目の前で相方の与座が同じ状態になっていたのだ。お互いがお互いを起こし寝るという状態がしばらく続き、とうとう自分たちの出番に。寝起きの頭が回転するはずもなく、なんの爪痕も残せず撃沈した。しかも近くのスタッフさんにもばっちり見られていて、ちゃんと怒られた。
人生のターニングポイントだとわかっていても寝てしまう。それほど何もせずに座り、起き続けるというのは大変なことなのだ。
ただ、何度も言うが仕事中に寝ちゃダメ。寝る代償はかなり大きく、僕たちもその後番組に呼ばれることはなかった。睡眠という人間の三大欲求に勝つことは出来ないのだ。
とまあ、予想だにしない最終着地点になってしまったが、お笑い関連のニュースやトピックがないとこういうコラムになるのだと再確認でき、とても有意義な回となった。……なったよね?
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