脱税大国ニッポン、総額100億円超えの実態
#鷲尾香一
22年度の脱税件数が大幅に増加し、脱税総額は4年度ぶりに100億円を超えた。国税庁は6月14日、「令和4年度の査察の概要」を発表した。
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sasatsu/r04_sasatsu.pdf
悪質な脱税者に対する査察調査の着手件数は前年度比29件(25.0%)増加して145件だった。処理件数は同36件(35.0%)増加して139件、このうち検察庁に告発を行った告発件数は同28件(37.3%)増加して103件となり、3年度ぶりに100件を超えた。この結果、処理件数に占める告発件数の割合である告発率は前年度比1.3ポイント上昇して74.1%と06年度以来の高水準となった。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、19年度に比べ、20年度、21年度の着手件数、処理件数、告発件数は大幅に減少した。特に、告発件数は100件を割り込み、20年度83件、21年度75件に減少していた。だが、22年度の査察は新型コロナ前の水準にまで回復した。(グラフ1)
脱税の総額は前年度比25億4800万円(25.0%)増加して127億6000万円に、このうち告発分は39億4500万円(64.9%)と大幅に増加して100億1900万円となった。
告発分の脱税額が100億円を上回るのは、18年度の111億7600万円以来だ。新型コロナの影響で査察件数が減少した20年度、21年度は告発分の脱税額が60億円台に落ち込んでいた。(グラフ2)
脱税の1件当たりの金額は前年度比700万円(7.1%)減少して9700万円だったが、告発分の1件当たりの金額では同1800万円(19.8%)増加して9700万円となった。告発分の1件当たり金額は18年度の9200万円から19年度、20年度、21年度は8000万円台に落ち込んでいたが、22年度には9000万円台に回復した。(グラフ3)
税目別の告発件数では、法人税が47件と最も多く、次いで、消費税が34件となった。消費税34件のうち16件は消費税の還付に関連したものだった。所得税での告発件数は19件だった。
税目別の脱税額では、法人税が42億7500万円と最も多く、次いで、消費税の30億1000万円、所得税の24億2400万円の順だった。所得税の脱税額は前年度比で3.1倍に増加、消費税は同81.9%、法人税は同21.5%といずれも大きく増加している。
直近3年度の告発の多かった業種では、20年度は1位が不動産業、2位が建設業だったが、21年度、22年度は連続して1位が建設業、2位が不動産業となった。22年度に告発された業者数は、建設業が22業者、不動産業が13業者となっている。建設業と不動産業が不動の1、2位を続けている。3位は20年度がバー・クラブの4業者だったが、21年度には卸売業の4業者となり、22年度では小売業の12業者と移り変わっている。
3位の小売業が12業者と2位に匹敵する業者数となっているのは、消費税の脱税関係が増加したことによる。また、4位に人材派遣業が5業者告発されている。5業者は、例年であれば3位に入る業者数だ。
22年度に告発された中には、ウェブサイト上で競艇予想情報の販売を行っている業者や、トレーディングカードゲームの小売り行っている業者などが含まれ、また、暗号資産取引を取引の仮装に使ったものなどもあった。
22年度中に告発された脱税では、61件すべてに一審判決で有罪判決が言い渡され、3人に対して実刑判決が下された。実刑判決のうち、査察事件単独で最も重いものは懲役1年4か月、他の犯罪と併合されたものは懲役2年8月だった。
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