テレビに出ていなくても年収1000万円超え…舞台だけで食べている芸人の特殊事情
#お笑い #芸人 #檜山豊
なんとなく、売れていない芸人は収入が少なく、芸事だけでは生活が出来ないというイメージを持っている人は多いはず。このコラムを読んでいる人も同じような印象を持っていると思うのだが、皆さんに質問です。収入が少ないというのはどの程度の少なさを想像していますか?
この場合“売れていない”というのはテレビへの露出が少ないという意味ではなく、芸人としての需要があまりないという意味。というのも、芸人は所属事務所によって、テレビに出ていなくともある程度のギャラがもらえる場合もあるのだ。
「人生を盛大にしくじった人から『しくじりの回避法』を学ぼう!」を基本理念に、しくじり先生が番組オリジナル教科書を使い「自分の問題点と教訓」を生徒たちに披露する人気バラエティ番組「しくじり先生 俺みたいになるな!!」の特別企画「しくじり学園 お笑い研究部」に漫才コンビ「囲碁将棋」さんが登場した回があった。
「囲碁将棋」さんと言えば芸歴16年以上の漫才師が競い合う「THE SECOND~漫才トーナメント」において、王者ギャロップさんと準決勝で戦い、「事実上の決勝戦」と言わしめた実力派漫才師である。
しくじり学園に登場したのは、まだ「THE SECOND」のファイナルが放送される前だったので今ほど知名度はなく、テレビ出演も少ない芸人であった。しかし、劇場出演はかなり多く、吉本内の劇場出演ランキングで2位に輝いたほど。しかも年間約1000ステージに出演しており、単独ライブのチケットは即完。配信でも1000枚以上のチケット売り上げを記録しており、まさに舞台芸人と言える。
番組内で、囲碁将棋の文田大介さんが生徒の松本日向さんに「僕らの今月の給料ってどのくらいだと思います?」と質問。それに対して松本さんは「20万円はありそう」と回答するのだが、これに文田さんは「5倍以上あります」とぶっちゃけたのだ。
つまり単純計算で「月100万円以上」稼いでいるということになる。これは決して売れていない芸人というカテゴリーではない。先述したテレビへの露出が少ないだけで、間違いなく売れている芸人だ。舞台出演だけで食べていけるというのは囲碁将棋さんが吉本興業に所属しているというのが大きい。ほかの芸能事務所なら、舞台に出演しているだけで年収1000万を超えることは皆無だ。もちろん、テレビに出ていなくても、営業などである程度稼いでいる芸人もいることはいるが、それも稀である。
では、本当の意味で売れていない芸人はどの程度稼いでいるのか。サンミュージックプロダクションに所属している女性お笑いコンビ「マリア」のイーちゃんが、ツイッターで「すごいのでたよー 仕事くださいー」というコメントと共に給与明細の画像を投稿した。その画像には「出演料 アメブロバナー広告1月分」という項目が一つだけ。そして、支払い金額はなんと「1円」なのだ。つまりこの月、イーちゃんさんが事務所から振り込まれた金額は「1円」なのだ。
皆さんはどう感じただろうか。この状況が特殊というわけではなく、売れていない若手芸人にはざらにあることだ。さすがに「1円」という見事な金額ではないが、僕の同期でも「103円」とか「58円」という月収をもらっている芸人は数多くいた。事務所のシステムがわからないので一概には言えないが、この「1円」という支払額は事務所から振り込まれるギャラなので、たぶんライブ等のとっぱらい(当日に直接現金でもらうギャラや交通費)は含まれていないだろう。
なので芸人としての月収はもう少しあるとは思うのだが、だからといって生活できるだけの収入はないはずだ。若手芸人が出演するライブのギャラは良くて5000円。最悪、芸人がチケットノルマ代を払って出演させてもらうものもあり、ギャラはマイナス1000円というパターンも存在している。
吉本興業に所属している芸人たちがテレビで言うので吉本興業はギャラが安いというイメージを持っている人も多いと思うが、だからといって稼げないわけではない。確かにギャラの割合は他の事務所に比べて安いのだが、その安さを補うだけの舞台が用意されているのだ。吉本興業は他の事務所と違い各地に劇場を所有しており、舞台に出演する機会が圧倒的に多く、所属芸人たちは自社のライブに出演するだけでお金と経験値を手に入れることが出来るのだ。吉本興業に所属するメリットはネームバリューだけではないのだ。
なので、吉本興業以外の事務所に所属している芸人は若手でもベテランでも売れていなければ散々なものだ。才能があるにも関わらず、お金が稼げないし、どういう風にもがいたら良いかわからないという理由で辞めていく芸人は多い。続けていれば必ず日の目を見るであろう芸人がお笑い界を去っていくのを何度も見た。芸人にとって、吉本興業のように売れていなくても芸人として生きていく道筋がある事務所は本当にありがたい。もしかしたら、それこそが吉本興業が見つけた「才能を埋もれさせない方法」なのかもしれない。
ちなみに、僕が芸人一年目に事務所からもらった年収は「1万0985円」だった。今思えば優秀な若手だ。
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