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米軍がウクライナ向け砲弾で日本に火薬調達要請?NATOに傾斜する岸田政権の危うさ

米軍がウクライナ向け砲弾で日本に火薬調達要請?NATOに傾斜する岸田政権の危うさの画像1
岸田文雄首相(Getty Images)

 先月5月19日から21日まで開催された広島G7サミットは、ウクライナのゼレンスキー大統領が参加したことで世界の注目を集めるイベントとなった。岸田首相は「世界のキシダ」となり、サミット議長国としての面目を施す以上の“外交成果”を挙げた。

 岸田首相は同月21日に行われたゼレンスキー大統領との会談で、100台規模の自衛隊車両と、自衛隊員が訓練や災害派遣の際に食べる携行食約3万食分の供与を約束した。日本は紛争当時国への武器移転を認めない防衛装備移転3原則の縛りなどがあるため、欧米のように戦車や戦闘機といった武器の供与はできない。それでも岸田首相は日本としてできる最大限の支援を約束した。

前のめりにNATOに傾斜する日本

 今月12日からドイツで始まった北大西洋条約機構(NATO)加盟国など25カ国の空軍が参加する大規模な合同演習「エアディフェンダー」には、日本の航空自衛隊がオブザーバーとして参加している。

 また、岸田首相は7月11、12の両日、バルト3国のリトアニアの首都ビリニュスで開かれるNATO首脳会議へ出席すべく調整を進めている。昨年6月29日、岸田首相はスペインのマドリードで開かれたNATO首脳会議に日本の首相として初めて参加しているので、実現すれば2年連続の出席となる。

 フランスのマクロン大統領が中国を刺激することへの懸念から反対するNATOの東京事務所開設も現在、NATO側と日本政府との調整が進められている。

 ここまでNATOに急接近し連携強化を図るのは、日本から8000キロも離れたウクライナへの支援だけが目的ではない。もしロシアが2014年のクリミア併合に続き、今度のウクライナ戦争でも勝利したりすれば、中国による台湾侵攻の動きを勢いづかせかねないからだ。その危惧があればこそ、日本はNATOを通してのウクライナ支援にも積極的になる。一方でNATOも中国の影響力拡大には警戒を強めており、インド太平洋地域の安定確保のためには日本の力はぜひ借りたいところだ。

ウクライナ向け砲弾で米軍が日本に火薬調達を要請

 そんな中、ロイターが今月2日に配信した「米軍が日本から火薬の調達検討、ウクライナ向け砲弾用」とする記事が関係者の間で物議を醸している。

https://jp.reuters.com/article/japan-exlosives-export-idJPKBN2XO03Q

 米国が陸軍の工廠で製造する155ミリ砲弾に必要なトリニトロトルエン(TNT)の調達を日本企業に打診しているというのだ。

 昨年2月24日にウクライナ戦争が始まってから、米国はこれまでに100万発以上の155ミリ砲弾をウクライナに供与してきた。しかし、ロシアとの戦いが長引き、ウクライナ軍が1日約1000発から3000発、同砲弾を消費するため、砲弾を増産しようにもTNTが不足する状況となっている。

 米軍の日本企業へのTNT調達依頼は、日本を弾薬製造の供給網に組み込む狙いもあるという。

有名無実化するのか、日本の防衛装備移転3原則

 しかし、TNTの提供は155ミリ砲弾そのもののウクライナへの提供ではないとはいえ、武器輸出を厳しく制限する日本の防衛装備移転3原則に抵触しないのだろうか?

 輸出を管理する経済産業省はロイターの取材に対し、「火薬類は必ずしも3原則の対象にならない。外為法(外国為替及び外国貿易法)に基づき審査し、問題がなければ輸出を許可する。一般に入手可能な火薬であれば、用途が砲弾であっても民生用として審査し、案件ごとに精査する」と回答している。これが屁理屈に聞こえるのは筆者だけなのだろうか?

 岸田首相は今年3月26日の防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式で訓示し、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と述べ、強い危機感を示すと同時に防衛力強化の必要性を訴えた。

 ロシアの理不尽な侵略により苦しむウクライナに対し、日本はできうる限り、最大限の支援をすべきだ。しかし、ショック・ドクトリン(惨事便乗型資本主義)ではないが、ウクライナ戦争という大惨事を隠れ蓑に、防衛費増額を含めさまざまなことが国会での十分な審議もないままに既成事実化されてはいないだろうか? 防衛装備移転3原則も知らぬ間に、有名無実化されてしまうような気がしてならない。

会社員兼フリーランス・ジャーナリスト。政治、経済、社会ネタを気の向くままに執筆

みつけたろう

最終更新:2023/06/15 13:00
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