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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 『サンクチュアリ -聖域-』が魅せた物語の強さ

Netflixドラマ『サンクチュアリ -聖域-』が魅せた物語の強さとは?

Netflix『サンクチュアリ -聖域-』より

Netflixで世界配信中のドラマ『インフォーマ』。その原作を務めた沖田臥竜氏が、同じくNetflixで配信中のあるドラマに強く胸を打たれたという。野望を抱き角界入りした不良少年が、さまざまな壁にぶつかりつつも、人間的成長を見せながら、真の強さを身に付けていく物語。『インフォーマ』との接点もあったその作品に、相撲にもドラマ作りにも一家言ある沖田氏がハマった理由はなんだったのか――。

講演会を通して交わる人生、生まれる作品への影響

 ドラマに救われることがある。小説に救われることがある。人を感動させ、魅了させる作品に出会っていなければ、今の私はいなかっただろう。

 亡き父の影響で、小さな時、私は相撲が大好きな小学生だった。どれだけ遊びに夢中になっていても、大相撲の場所中は5時半には家に帰り、テレビに齧(かじ)り付いた。まだYouTubeもDVDさえない時代。結び前の取り組みから欠かすことなく、小さな胸をわくわくさせて相撲中継を観ていた。父が応援していたのは大横綱の北の湖で、私も父と同じように北の湖を応援し、同横綱の引退後は弟弟子の北天佑を応援していた。

 実家は商売を営んでいたのだが、日が沈むと父とよく、大相撲中継観戦の興奮冷めやらぬ中で相撲をとっていた。中学生になってからは、相撲熱も冷め、テレビで観戦することもなくなったが、なんの因果だろうか。20歳を過ぎると、塀の中で流れる相撲中継をラジオで聞かされることになった。

 厳密に突き詰めた見方をすると、相撲は国技ではない。そもそも日本に国技と呼ばれる競技は定められていない。だが、日本特有の重要な文化としての側面もある国技は何かと考えるならば、相撲となることから、刑務所や拘置所などの矯正施設と呼ばれるところでは、必ず相撲中継が流されていた。

 少々前置きが長くなってしまった。つまり私は、相撲を題材にしたドラマを観て語る際には、実はそれなりの相撲の知識があるのだぞと、すまない、言いたくなってしまったのだ。

 メディア業界で仕事をしていれば、メディアで発表される前のスクープなどの情報が必然的に耳に入るようになるのと同じように、映像の仕事をやらせてもらうようになってからは、今、あの映画が撮影中だ、あのドラマが撮られているなど、と聞くようになる。現在話題のNetflixオリジナルドラマ『サンクチュアリ -聖域-』についても、だいぶ前から撮影をしているという話を聞いていた。

 一方で、ドラマ『インフォーマ』にも出演してくれている一ノ瀬ワタルさんが、ドラマで力士役を務めるために、役作りとしてウエイトを増やしたということも耳にしていた。実際、『インフォーマ』の撮影現場に現れた一ノ瀬さんは、想像以上に大きく、鍛え上げた身体をしていたのだ。

 しかし、私は勝手に『サンクチュアリ』は、そのタイトルからアクションものと思っており、一ノ瀬さんが出演している相撲を題材にした作品とは別ものだと長い間思い込んでいた中、

 「ああ~、一ノ瀬さんが撮っている相撲のドラマが『サンクチュアリ』だったのか!」

 と気づき、この作品を見始めたのだが、なぜ、こんなにも“一生懸命”が映し出される物語は泣けるのだろうか。すまん、私の中では『スラムダンク』すら超えてしまった。そして、なぜか「東京に生きてぇ!」と駆り立てられた。すでに行っているのだが……。

 女性記者が相撲部屋に取材に行き、目頭を抑え、目薬をさしながら、夜中まで原稿を書く姿。わかる、わかると、それだけで共感を受け、なんて言うか、書き手はみんなそうやって頑張っているんだと思うと泣けてきた。

 一ノ瀬さんだけでなく、『インフォーマ』で名演技をみせてくれた室田真宏さんも出ているし、俳優の木下ほうかにお願いされて撮ったYouTubeドラマで私がキャスティングした荒岡龍星くんも出ていて、私の胸は高鳴っていた。私が原作や監修を務めたドラマに出てくれている俳優部の人を見ると、どうしても「頑張れ!」と応援したくなるのが人情というものだろう。

 すべてが全力で何もかもよかった。脚本における伏線の回収技術も完璧だった。要所、要所のギャクセンスも最高だった。同時に私も負けてはいられないと強く思った作品であった。

 スポコンドラマで普通、あれだけ泣けないだろう。私は小説を読み、救われて、それ依頼、自分で小説を執筆し、それが映像化されることを励みにして生きてきた。それは『ムショぼけ』や『インフォーマ』で叶ったが、ただ『サンクチュアリ』を見てからは、まだまだ小説を書いていかなければならないと強く思わされることになったのだ。

 さらに『サンクチュアリ』は、タイへの出張直前に見た作品だったが、日本に戻ったら、新たな映像的な刺激を求めて、映画館に足を運びたいと思わされた作品であった。こんな思いはいつ以来だろうか。

(文=沖田臥竜/作家)

 


『サンクチュアリ -聖域-』予告

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!

 

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/06/12 20:37
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