オズワルド伊藤の“観客注意”どころではない?女子高生が芸人に罵声を浴びせた事件
#芸人 #オズワルド #檜山豊
少し前に、お笑いコンビ、オズワルドの伊藤俊介さんがツイッターでこんなツイートをした。
「直接お詫びする手段がなくTwitterで失礼します
本日祇園花月の15:00公演にいらっしゃった皆様、遅れてきて普通のトーンで会話し始めたお客様への僕の反射的な一言で、電車でよく見るヤバいおじさん登場した時の緊張感生みだしてしまい誠に申し訳ありませんでした!二度とないのでまたお越しください!」
このツイートに対して「あれは仕方ないです。マナー違反です」や「私はその公演を見たものです。私もあのお客さんの声が物凄く気になりました」「正直あのお客さん気になってしまったので、言ってくれて感謝でした!」などのコメントが寄せられており、どうやらネタ中に遅れてきて他の観客に迷惑になるほどの音量で会話をしているマナー違反の観客に対して伊藤さんが強めに注意し、かなり険悪な雰囲気になってしまったということのようだ。
そのお客さんは悪気などなくお笑いを見ることを楽しみにしすぎてテンションが上がってしまい、周りのことを考えずに大声で話してしまったのかもしれないし、漫才の声が大きいので、その声に負けないように話さないと聞こえなかったから話したのかもしれないし、はたまた観劇慣れしておらず、テレビを見ているような感覚で、つい普通に話してしまったのかもしれない。
一番ありそうなのが、遅刻してきて他のお客さんのように漫才に集中する態勢になっておらず、つい普通のテンションで喋ってしまっていたというパターン。
まあいずれにせよマナー違反であり、漫才に集中したいお客様からしたら迷惑以外のなにものでもない。あくまでも険悪な雰囲気になったというのは僕の憶測でしかないのだが、その場にいた他の観客から上記のようなコメントが寄せられたということは、本当に迷惑で、伊藤さんが本気で注意したのは伝わってくる。
もしかしたら注意されたお客さんは、不貞腐れたり文句を言い返したので、あまりいい空気感にならなかったのかもしれない。でもお客さんからすれば、こっちはお金を払ってるんだからという気持ちもわからなくもない。金払ってるんだから注意なんかしてないで笑わせろとか、漫才に集中させないそっちが悪いんだろとか。
芸人は「お笑い好き」にとっては憧れの存在だが、「なんとなく見に来た人」には蔑まれやすい存在だ。そんな存在が偉そうにしていたら気に食わない人もいるだろう。しかも、漫才などは生で見せる機会が多いのでお客さんとのトラブルは結構頻繁に起きるものだ。
僕がまだ芸人をしており、ライブに頻繁に出演していた2000年代前半はお客さんの大半が若い女性だった。当時のお客さんはお笑い芸人をアイドル視していることが多く、お笑い全般が好きな「お笑い好き」ではなく、固定の芸人を目当てに会場に来る「芸人好き」という感じだった。なので目当ての芸人以外には興味がなく、目当ての芸人が終わると会場を出てしまうなど日常茶飯事。最前列がぽっかり空いてしまうこともあった。
さらに、そのようなお客さんたちはもれなく観劇マナーがなっていない。途中退場もさることながら、漫才中に「○○くーん」や「かっこいいー」など笑いとは関係のない声援を送ったり、最前列にいながら友達同士で話したり。極めつけは、当時よく出演していた「シアターD」というライブハウスでのこと。その劇場は客席と舞台との段差がほとんどなく、手を伸ばせば舞台を触れるような状態だった。なので、最前列に座っている女性たちは目の前の舞台をテーブル代わりにし、飲み物を置いたり、自分が見たい芸人でないときに鏡を置いて化粧したりと、無法地帯になっていたのだ。
もちろん、そのような行為は芸人たちにとって許し難いものであったが、知名度が低い芸人たちはファン獲得のためにとにかく我慢するしかなかった。ちなみに僕は売れていない時期でも舞台に置かれている飲み物を蹴り返したり、声援に対して「ネタ聞け!」と怒ったりしていたので、ファンがなかなかできなかった。
ちなみに今回のように芸人が怒るのではなく、ファンが芸人を怒ることもあった。これも「シアターD」で起こった事件なのだが、女子高生に絶大なる人気を誇る若手イケメンコンビがいた。そのイケメンコンビが出演するライブには必ずファンの女子高生たちが最前列に陣取り、ネタ中にトイレに行ったり、舞台をテーブル代わりにしたり、まあまあの音量で私語をするのが当たり前になっていた。
ある日、僕らがそのイケメンコンビと一緒のライブに出演することになったのだ。噂には聞いていたのだが、実際にその光景を目の前にするとかなりの衝撃だった。僕は、とりあえず漫才中は最前列を睨みつけ、舞台に置いてある飲み物を蹴散らし、私語を注意し、見事その女子高生たちに嫌われた。
そして、問題はライブのエンディングで起こったのだ。ある芸人が一発ギャグを披露し、MCの芸人が「他に一発ギャグやりたい人いる?」と芸人たちに聞いた。するとイケメンコンビのツッコミの人が「じゃあモノマネします」と前に出たのだ。「一発ギャグの流れだったのにモノマネ?」と舞台上にいた全芸人が思ったのだが、いち早く当時「号泣」というコンビを組んでいた「島田秀平」さんが「いや、モノマネじゃなくて一発ギャグだから!」みたいな感じのツッコミを入れた。その瞬間、最前列にいた女子高生たちが「うるせ~よ!」「モノマネ止めんじゃね~よ!」「入ってくんなよ!」と罵声を浴びせ始めたのだ。
島田さんはあまりにも驚き「すみません」を連呼。当事者のイケメンコンビのツッコミさんもバツが悪そうな表情を浮かべていた。しかも、後日聞いた話なのだが、島田さんが会場を出ようとエレベーターで1階まで降りると、最前列にいた女子高生たちが島田さんが出てくるのを待ち構えていたという。エレベーターを降りた瞬間に女子高生たちに取り囲まれ、先ほど同様、罵声を浴びせられ、、中心でひたすら謝罪したそうだ。
今考えるととんでもない事件である。
これほどではないが、オズワルドの伊藤さんの場合も注意せざるを得ない状況だったのだろう。しかし昔の僕も、今の伊藤さんも注意する方法ではなく、他にやり方があったのではないだろうか。
例えば、学校の先生風に私語が終わるまで待ち「静かになるまで○○分かかりました~」や、その私語をしている人の話に一緒になって参加してしまうとか、問題の観客を使って笑いを取る方法はいくらでもある。漫才師という職業にプライドを持ち、媚びへつらわない姿勢はプロとしてとても良い事だが、プライドを持ちつつも、全ての状況を笑いに変えられる方が漫才師としてのあるべき姿なのではないだろうか。
とまあこんな偉そうに意見を述べているが、漫才中に私語されたら今でも怒ってしまう確率98%。なかなか大人になり切れない。人間として成長しなければと思う今日この頃。
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