爆問・太田は”笑い”の追及の手を緩めない…だから若手に慕われる
#爆笑問題 #TPの芸人礼賛
――お笑い大好きプロデューサー・高橋雄作(TP)が見た、芸人たちの“実像”をつづる。今回は、恒例となった『爆笑問題カーボーイ』の「“サラ川風”オリジナル川柳」によせて。
5月25日、「2022年サラっと一句!わたしの川柳コンクール」のベスト10が発表された。今の流行や世相をユーモアを交えて詠み上げる川柳が多数集まることで人気の「サラ川」、昨年までは「サラリーマン川柳」として親しまれてきたため、その名称のほうがピンとくる人も多いのではないだろうか。今年から正式名称が変更となり「サラリーマン」というワードが撤廃された。「老若男女問わず、幅広い方々にご案内でき、より長くご愛顧いただける名称を目指した」というのが変更理由だそうだが、この名称変更こそ「今の世相」を最も表してるなと思った。
ちなみに、今年のベスト3は以下の通り。
第3位「店員が 手とり足とり セルフレジ」 三階から目薬(40代)
第2位「ヤクルト1000 探し疲れて よく寝れる」 三代目ヒゲだるま(40代)
第1位「また値上げ 節約生活 もう音上げ」 健康奉仕(50代)
3つとも世相を反映させつつユーモアもしっかり入っていて、「笑点」なら間違いなく座布団がもらえる”ウマい”川柳だ。
僕は毎年この時期になると「もう『サラ川』の季節かぁ」と思うほどに「サラ川」が大好きなのだが、この連載は「TPの芸人礼賛」であるため「サラ川」の良さを語るのはこれくらいにしておいて……実は本家の「サラ川」とセットで楽しみにしているイベントがある
爆笑問題・太田さんが発表する「“サラ川風”のオリジナル川柳」である。
ここ数年、太田さんは自身のラジオ『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で、本家の「サラ川」が発表されると必ず、自身が考えた「“サラ川風”のオリジナル川柳」を発表するのが恒例となっている。『カーボーイ』リスナーにはかなりおなじみとなってきたイベントだが、この川柳のクオリティが驚くほど高いのだ。本家に混ざっていても遜色ないくらい、いや、もしかしたら本家超えをしている作品さえあると思う。さらに言うと、川柳の「質」もさることながら「数」もすごいのだ。ウマい川柳なんて1句思いつくだけでも大変なのに、毎年20~30句もの川柳を作って番組内で発表している。
これが始まったのは2020年。同年の「サラ川」が発表されたときに、コロナ禍真っ只中だったにも関わらず、応募のタイミング的にコロナ関連の句が全くなかったことに違和感を覚えた太田さんが「コロナ」をテーマに自作の川柳を番組内で発表したのだ。そのときの作品がこちら。
「在宅で 妻のオフィスの 窓際に」
「新型で 我、旧型と 思い知る」
「スマホ見て こっそり消した 感染路」
説明の必要がないほどに、ユーモアを交えながら「あの頃のコロナ禍」を見事に詠んでいる。ちなみに僕は翌2021年の
「クソオヤジ 叫ぶ我が家の 変異株」
も唸った。世相とユーモアに加えてリズム感も最高。さらに2022年、
「薦められ ネトフリ探す テレビ欄」
も良すぎる。どの句にも「おじさんの哀愁」が漂っているのが、30代中盤の僕にもしっかり刺さっているのだろう。
十七音という縛りの中で練り上げられた笑い
というわけで今年も本家「サラ川」が発表された直後、5月30日の『爆笑問題カーボーイ』にて「太田のサラ川2023」が発表された。言わずもがな名句揃いだったので、ここで紹介させてもらいたい。こんな名作たちが埋もれていくのは本当にもったいないと思うし、お笑い界の損失だ。勝手な使命感に駆られて全29句の中から特に印象に残った5句を選んで紹介しようと思ったが、どれも良すぎてどうしても絞れなかったのでこちらの6句をご紹介。
「アクリルを 外しホントの 壁を知る」
「コロナ明け 俺の扱い 5類以下」
「信者には なってくれない 我が二世」
「ソロキャンプ 家と大して 変わらない」
「YOASOBIが 好きと言われて うろたえる」
「大谷は 今日も活躍 なお俺は」
マジですごい。1年間この日のために考えてきたかのような質、そして量なのだ。これを聞かされる田中さんは田中さんで、ピンと来ない作品には平気で「どういう意味?」と聞いたり、審査委員長ヅラをしているのがまた面白い。
ではなぜ太田さんはこんな大変な作業をしているのだろうか。太田さんは本編で「田中を喜ばせたいだけですから、褒められたいだけ」と語っているが、それは照れ隠しに違いない。僕の推測だが、漫才師が年に一度『M-1』という「ルールに縛られたネタ」と向き合うように、太田さんも年に一度、漫才とはまた違ったルールの中で、自分の笑いを表現したいのではないだろうか。
漫才やトークや書籍など、太田さんの才能を堪能できるシーンは数多く存在するけど、僕はこの川柳こそが、太田さんの才能を最も「原液のまま」感じられるツールなのではと思う。漫才だってもちろん世相とユーモアを入れ込んでいるが、その出来事をしっかり説明してからボケるまである程度の時間を要する。一方この川柳は、基本的に「5・7・5」の17音というものすごく厳しいルールの中に世相とユーモアを詰め込んで完成させなければならないため、一切の無駄がなく濃度が高くてめちゃくちゃぜいたくなのだ。太田さん毎年必ずやってくださいね、こんなに楽しみにしてる人がいます。
ここで一句詠んで締めたいところなのだが、本当に思いつかない。あらためて太田さんの偉大さに感服したところで、来年の「サラ川」に応募できるように、今から準備を進めたいと思う。(編集/斎藤岬)
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