ナポリ市街地の地下で新発見! 日本の技術で発掘調査に新展開
#テクノロジー #鷲尾香一
名古屋大学とイタリア・ナポリ大学の共同研究チームは5月18日、宇宙線イメージングによりナポリ市街地の地下でギリシャ時代の埋葬室を発見したと発表した。
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2023/05/post-506.html
発表によると、紀元前1000年後半頃にギリシャ人によって建設された建物、道路、水道橋、墓地などの古代ネアポリスの遺跡は、現在のナポリの街並みの地下10メートルに埋もれている。しかし、ナポリのような大都市の人口密集地では、建物や道路の安全性に配慮する必要があり、発掘調査は困難だった。
16世紀以降に作られた貯水槽や、第二次世界大戦中の防空壕などの地下構造がこれらの遺跡を横断している場合には、地上から地下遺構の調査ができるため、ナポリのサニタ地区には。紀元前6~3世紀の古代ネクロポリスの2つの貴族の埋設室が存在することが知られている。
さらに、近年の地下遺構の3D測量による調査からそれらの周辺にも、別の埋葬室が存在するのではないか、という仮説が立てられていた。
そこで研究チームは、この仮説を検証するために、宇宙線イメージングによる未知の埋葬室の探査を行った。
宇宙線イメージングとは、大気上空で生成される素粒子ミューオンが持つ高い透過力を利用して、X線レントゲン撮影と同じ原理でピラミッドや火山などの巨大な物体の内部を可視化する技術。非破壊で地下構造を可視化できるため、地震波や掘削により穴をあけるボアホールのような調査方法が難しい都市環境に適している。
宇宙線の測定は、写真フィルム型の検出器「原子核乾版」により行われた。原子核乾版の分析は、名古屋大学が独自に開発している超高速自動飛跡読み取り装置を用いて行われる。
原子核乾版は軽量で非常にコンパクトな上、電源を必要としない。そのため、狭い場所や粉塵が多い地下遺跡やトンネルの内部などの過酷な環境下での使用に適している。
名古屋大学の研究グループは、この原子核乾版を用いた宇宙線イメージにより、過去にエジプトのクフ王のピラミッド内部に2つの未知の空間を発見している。
研究チームは原子核乾版に加えて、宇宙線の観測で得られる宇宙線イメージから未知の埋葬室を探索するために、すでに知られている地下構造から期待される宇宙線イメージのシミュレーションを行った。
シミュレーションのために、地上からアクセス可能なすべての地下構造のレーザースキャンを行い、正確な地下空間の3Dモデルを作成した。
その結果、地下10メートルに位置する2~3メートルの大きさの新しい埋葬室を発見した。
名古屋大学の研究グループは、「今回の成果は、宇宙線考古学という宇宙線イメージングと考古学研究との文理融合研究をさらに進めるもの」と評価している。
今回の調査では、新たに発見した埋葬室のほかにも、地下の排水ネットワークや未知の空洞が示唆される領域を検知しており、「宇宙線イメージングが地下構造の把握に極めて有効な手段であることが実証された」としている。
さらに、「国内で年間約9000件もの陥没事故の原因となる地下空洞を宇宙線イメージングによって探査・検知することで、事故を未然に防ぐ新しい防災技術への応用にもつながる」と期待している。
この研究成果は、4月3日付イギリス科学誌「ScientificReports」に掲載された。
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