「売れる前の方が楽しかった」元芸人が見た売れる前の希望と売れてからの絶望
#ドラマ #オードリー #南海キャンディーズ #だが情熱はある
売れない若手芸人は当然ながら売れることを目指している。しかし、人生を投げ出してまで売れようと頑張ったはずなのに、なぜかブレーク後の芸人から「売れる前のほうが楽しかった……」という発言を耳にすることがある。
5月28日に放送された南海キャンディーズ・山里亮太とオードリー・若林正恭の半生を描くドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)第8話では、そんな矛盾が描かれた。売れない芸人を経験した筆者が振り返ってみたい。
『M-1グランプリ2004』の準優勝を経て一躍、人気芸人の仲間入りを果たした南海キャンディーズ。しかし、山里(森本慎太郎/SixTONES)は思い描いた通りの活躍ができず、相方のしずちゃん(富田望生)ばかりがフィーチャーされることにわだかまりを覚える。
「自分がネタを書いているのに……」。
コンビとしての価値を高めようと、しずちゃんをプロデュースしようとするも空回り。次第にモラハラ癖がまたぞろ顔をのぞかせる。
「しずちゃんは得体の知れない変な人間だって自覚を持って」。
「私は普通の人間だ」。
マネージャーの高山(坂井真紀)が間に入ることで致命傷は回避できたものの、コンビ関係は悪化。しずちゃんへの映画『フラガール』の出演オファーを揉み消そうとするなど、相方の足を引っ張る暴挙を起こしてしまう。本業の漫才でもM-1で見せた会心のネタを超えることができず、下降気味。山里ひとり、負のスパイラルに陥ってしまう。
一方の若林(髙橋海人/King & Prince)は、相変わらずブレークとはほど遠い日々を過ごしていた。しかし、これまでと違うのは楽しそうにしているということだ。与えられた仕事をこなすだけの日々から「トークを鍛えたい」と自らライブを企画し、能動的に動いていた。
「小声トーク」と名付けられたトークライブは、なんと春日の自宅“むつみ荘”を会場にした、オードリーの歴史には欠かせない史実だ。
売れない芸人の方が楽しい理由と、それでも芸人は売れないといけない理由
「ぶっちゃけ売れる前の方が楽しかった」
この言葉は、売れない芸人だった筆者が売れていった仲間たちから何度か聞かされた言葉だ。理由は単純で、理想と現実の違いらしい。
憧れたはずのテレビでは、要求されたことに応えるのに必死で、自分のやりたいことはほぼできない。人間関係の義理やしがらみも多く、プライベートな時間も減ってしまう。
尊敬していた先輩たちですら生き残るのに必死で、憧れの芸人ライフを満喫している人間などほとんど、いないことに気づかされてしまうのだ。
ドラマでは山里の理想と現実の違いが描かれたが、しずちゃんにはしずちゃんの苦しみがあったはずだし、全てが順風満帆だったわけではない。「売れる前の方が楽しかった」――この言葉は売れてない芸人への気遣いの意味もあるかも知れないが、筆者には本音に聞こえた。もちろん「売れなきゃよかった」なんて言葉を吐き出す芸人は見たことないが。
一方で、売れていない芸人は楽しい。金もないしやりたくないバイトに時間を取られたりストレスもあるが、それ以上に希望があるのだ。
売れたらこんなお笑いをやるんだ、憧れの先輩と絡むんだ、女優やアイドルとだって付き合える、現実を知らない芸人たちは、好き放題に夢を描ける。売れてなくても、意外とちやほやしてくれる人たちが周りにいたりして、自尊心だって保たれちゃったりする。希望に満ちた芸人は辛さよりも楽しさの方が圧倒的に多い。今話の若林はこの状態だったのだろう。
しかし、これは「希望を持てたら」というのが絶対条件になってくる。何年も芸人をやっていると下からの突き上げがあったり、次第に自分が売れない現実が見えてきてしまう。こうなってしまうと地獄。金もないし未来もない。芸人を辞めようにも一般社会が怖い。中途半端に築き上げた現在を捨てるのが怖い。八方塞がりである。
売れない芸人のほうが売れた芸人より楽しい、こういった側面は存在するのだが、売れないほうが良いということは絶対にない。
最終回も近い第9話では、若林が「ズレ漫才」にたどり着く。ブレーク前の一番キラキラした状態のオードリーを拝めそうだ。
●前回まではこちらから!
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