三井住友銀行、初任給引き上げで新卒確保も…金融業界の深刻な体質
#金融
3年ぶりの行動制限なしのゴールデンウィークも終わり、新社会人の中にはGWを満喫するあまり初めての給料を思わず遣い過ぎてしまった向きもあるかもしれない。今年度は大手企業を中心に賃上げの動きが強まる中、初任給を引き上げる企業が相次いだ。
そんな中、メガバンクの三井住友銀行もこの4月に入行した新卒の初任給を5万円引き上げた。大卒は25万5,000円となっている。それまでメガバンクの大卒初任給は、各行横並びの20万5,000円だった。高給で知られるメガバンクだが、こと初任給に限れば一般的な企業と同水準で、決して高いとは言えなかった。
「とはいえ、メガバンクは社宅や補助金といった住宅補助など福利厚生が充実しているので、若いうちから貯蓄も可能。しかも若手の場合、他業種に比べて昇給のペースも早いんです。毎年、基本給が3万~5万円程度上がるので、順調に昇進すればボーナスも年間200万円近くになり、30歳前には早くも年収900万円に達する者も。何だかんだいって、やっぱり銀行員は金銭的に恵まれているんです」(経済部記者)
そんな高待遇のメガバンクにあって、三井住友銀が初任給を5万円もアップするのは、優秀な人材の確保のために他ならない。
とりわけデジタル人材の需要が高まっており、背景にはデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務の効率化がメガバンクのみならず、金融機関にとって急務となっていることがある。DXとはデジタル技術を活用して製品やサービス、ビジネスプロセスを変革することにより、新たな価値を生み出していく活動を指す。
「金融の世界でもインターネットの利用が進んでいるため、リアルな店舗や人員が重荷になっています。さらにIT化に伴い、新たなビジネスが登場するなど事業環境も変化しており、IT技術を駆使した従来とは異なる金融サービスを提供するフィンテック企業が台頭。メガバンクと競合するライバルも、従来の金融業界だけに留まらなくなってきています。これらの課題に対応するためにも、メガバンクとってDXへの取り組みは、生き残りを懸けた“構造改革”なんです」(同)
だからこそ、メガバンク各行とも優秀なデジタル人材が喉から手が出るほど欲しいわけだが、悩ましいのはその確保がままならないこと。
「当然、中途採用に頼ることになるのですが、目まぐるしく変化する業界で働いてきたデジタル人材は、保守的でスピード感に欠ける金融業界とは極めて相性が悪く、採用できたとしても定着率がよくない。面倒でも自前で育成したほうが、結局は効率的だということになるんです。今回の初任給アップには、そんな三井住友銀の苦しい事情が窺えます」(同)
金融業界の後進性を示す事例として、こんな笑えない話がある。
「FRIDAYデジタル」(講談社)が報じたところによると、地方銀行や信用金庫の中には個人のメールアドレスがなく、未だに顧客とのやり取りは電話やFAXが主流だったりするのだそう。そもそも顧客へのメール送信が禁止されており、必要な場合は上司の許可が必要で、実はインターネットへの接続も制限されているという。
「DX化やIT化は何もメガバンクだけに限ったことではなく、地銀や信金の間でもブームです。彼らはDXを新たなビジネスチャンスと捉えており、顧客にもDX化を提案していますが、自分たちは旧態依然としたアナログ対応なのだからチグハグと言うしかありません。さすがにメガバンクではこうしたことはあり得ませんが、他業界に比べてデジタル化が遅れているのは推して知るべしです」(同)
せっかく大枚はたいて新卒者を採用しても、金融業界の体質が変わらなければ優秀なデジタル人材が育つはずもない。教育が必要なのは若手ではなく、上層部ではないのか。
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