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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 映画  > 映画『最後まで行く』、日本映画の真骨頂

映画『最後まで行く』…本家・韓国を超え、世界に見せつけた日本映画の真骨頂

大ヒット韓国映画のリメイクとして、藤井道人監督がメガホンを取った『最後まで行く』が公開された。当サイトでもおなじみの、ドラマ『インフォーマ』などで藤井監督とタッグを組んで来た作家の沖田臥竜氏は、同作にも所作指導として参加。一方で、完成作をあえて試写などで見ることなく、公開後、いち観客として劇場で見てきたという。そんな沖田氏が抱いた鑑賞後の想いとは――。

講演会を通して交わる人生、生まれる作品への影響

 必ずしも良い作品が、いわゆる“賞レース”において正当な評価を受けるとは限らない。それは例えば、私が主戦場としている文芸においてもそうだ。日本でいえば、最高峰と称される直木賞や芥川賞で、必ずしも腰を抜かすような作品が毎年、受賞しているとは限らない。映画でいえば、カンヌなどの三大映画祭やアカデミー賞。厚かましくて申し訳ないが、少なくとも私はそう感じてしまっている。

 リメイクが、オリジナルを凌駕するケースがどれだけ存在するだろうか。

 私は小さいときから、映画館でドキドキわくわくして来た少年だった。観たい映画が劇場で公開されていると、それだけで嬉しい気持ちになるし、観に行けるのが凄く楽しみだった。初めてのデートはだいたい映画館だった。うまくいかないとき、仕事で疲れたとき、いつも私は映画で元気をもらったり、作品からスリルや感動を与えられたりしてきた。忙しくて映画館に行く時間がないときや、映画館で見たい作品がないときは、DVD屋をはしごして無造作に作品を借りまくり、気分転換してきたくらいだ。映画に助けられてきた自分だったので、もしも私の作品が映像化されたら、もう人生に思い残すことはないと考えたこともあった。

 私は作品づくりの仕事に関わるとき、表舞台に立つことなく、裏方仕事に徹するなどして、目立つことは極力避けたいと思っているのだが、ほんの少しでもこの作品に携われたことを私は誇りに思っている。

 この作品に関して、何かたいしたことをしたわけではない。だけど、エンドロールで流れたクレジットの中に私の名前を見つけたとき、そこに何ものにも変え難い喜びがあった。

 ありきたりの感想を私が記しても、たいして面白くないだろう。だから、この作品の評価を、ここでは具体的にはあえて書かない。ただ、日本には藤井道人という監督、そして主演を務めた岡田准一さん、綾野剛さん……。見終わったあと、日本には、世界に通用する監督と俳優部が存在していることをまじまじと見せつけられたのは事実だ。

 作品づくりには、いつも苦しみが先にあって、私の場合、自分の小説の映像化が決まったとき、そこで喜びはマックスとなる。なぜならば、そこからが大変だからだ。そうした苦悩の中で完成していくのが、物語なのだと私は思っている。

 いつも越えなければならないのは、過去の自分自身の作品で、ライバルなんて自分以外にいない。そんな私がぜひ、映画館で『最後まで行く』を見てください!というのはおこがましい話である。だがあえて言おう。この映画は、映画館で観るべき作品だ。

 『最後まで行く』で藤井道人監督は、また新しい領域に足を踏み入れたと言っても決して言い過ぎではないだろう。

(文=沖田臥竜/作家)

映画『最後まで行く』
監督:藤井道人/出演:岡田准一、綾野剛、広末涼子、杉本哲太、柄本明ほか、
公式サイトはこちら

年の瀬の夜。刑事・工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため、雨の中で車を飛ばす。 心の中は焦りで一杯になっていた。さらに妻から着信が入り、母が亡くなった事を知らされ言葉を失う。……その時。彼の乗る車は目の前に現れた一人の男をはね飛ばしてしまった。必死に遺体を車のトランクに入れ立ち去る。そして母の葬儀場に辿り着いた工藤は、車ではねた男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みた。……その時、スマホに一通のメッセージが。「お前は人を殺した。知っているぞ」腰を抜かすほど驚く工藤。「死体をどこへやった?言え」 メッセージの送り主は、県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)。追われる工藤と、追う矢崎。果たして、前代未聞の96時間の逃走劇の結末は?

 

小説『インフォーマ』
沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
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週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!

 

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/06/01 09:17
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