『インディ・ジョーンズ2』は暴力的!? 怒りのスピルバーグが勝ち取ったもの
#金曜ロードショー #しばりやトーマス #金ロー
シリーズ最新作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』公開を記念して放送される日本テレビ系『金曜ロードショー』のインディ特集。今夜はシリーズ第2作目の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』です。インドを舞台に邪教集団とインディが伝説の秘石を巡って争奪戦を繰り広げる!
1935年、中国・上海のクラブで考古学者インディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)は手に入れた清の初代皇帝・ヌルハチの遺骨と巨大なダイヤを取引するべく、暗黒街の顔役と交渉する。顔役は遺骨を奪い取るのが目的で、毒を盛った酒をインディに飲ませる。
銃撃戦のドサクサに紛れ解毒剤とダイヤを取り返し、クラブの歌姫、ウィリー(ケイト・キャプショー)を巻き込んで助手の少年ショーティー(キー・ホイ・クアン)とともに脱出。飛行機で逃げ出すことに成功するが、それは顔役の息がかかった会社の飛行機だった。
パイロットはインディらを置き去りにして逃げ出し、なんとかゴムボートで脱出したインディらは急流を下ってインドの村にたどり着く。その村はヒンドゥー教の神様、シヴァ神を象った秘石サンカラ・ストーンを祀っていたが、邪神カーリーを信仰する邪教集団によって石と子供たちを連れ去られてしまっており、村には大人と老人しかいなかった。
貧しい村人たちから食事を振舞われ、救世主だと祭り上げられたインディたちは子供たちと石を取り戻すために邪教集団の根拠地である宮殿に向かう。
宮殿は若き藩主ザリム・シン(ラジ・シン)によって統括されており、駐屯していたイギリス軍将校とともに歓待を受けるインディらは表向き穏やかに見える彼らの正体が気になって仕方がない。
その日の夜、暗殺者に命を狙われたインディはウィリーの部屋の隠し通路を見つけ、罠を掻い潜り邪教集団の根拠地を発見する。そこでは巨魁の司祭モラ・ラム(アムリーシュ・プリー)が片手で人間の心臓をえぐり取り、カーリー神にそれを捧げ、子供たちは宝石の発掘に駆り出されていた。
捕まってしまったインディは司祭によって「悪魔の血」を飲まされ、洗脳されてしまう。司祭の言いなりにされたインディはウィリーをいけにえとして溶岩の海に落とそうとするのであった。
『レイダース/失われた聖櫃《アーク》』のヒットを受けて製作された続編だが、1作目の時点で原案のジョージ・ルーカスは3部作にする構想を立てており、盟友スピルバーグにも伝えていた。
スピルバーグはパラマウント・ピクチャーズから予算の超過やスケジュールを守ることを絶対条件にされていたため、『レイダース』では色んなアイデアを封印せざるを得なかった。なので本作では前回使わなかったアイデアを盛り込むことに成功。「息も尽かせぬ面白さ」と表現された1作目に匹敵する、これ全編見せ場だらけの映画だ。
上海のクラブで落としたダイヤがあっちこっちにはじかれるのを必死に追うインディのユーモアあふれるドタバタ、飛行機から脱出してヒマラヤ山脈を滑り落ちたボートが川を下ってインドにたどり着くといった無茶苦茶な場面、罠を外すために虫塗れになりながら解除スイッチを押すケイト・キャプショーの熱演……(頑張りすぎ!)。
洗脳されたインディが悪い顔になってウィリーをいけにえに捧げようとするシーンは「ダークサイドに落ちたハン・ソロ」みたいで『スター・ウォーズ』のパロディかな?(ここの「悪魔の血」を飲まされる場面は、のちに日本中を震撼させるテロを起こしたオウム真理教が、信者に教祖の血液入りの液体を飲ませていた「血のイニシエーション」を想像させる。事件後にこれらの行為が報道された時、「あっコレ『魔宮の伝説』で観たやつだ!」と思ったもの。カルト教団を描いた映画が、現実のカルト教団に影響を与えるとは……スピルバーグ、おそるべし!)
トロッコの追いかけっこ、吊り橋でのクライマックスなど、どこを切っても見せ場しかない!
こうして娯楽映画として見せ場だらけとなった『魔宮の伝説』だが、厳しい評価も受けた。物語のトーンがなぜか暗めなのだ。
明るい冒険活劇だった1作目と比較しても2作目が暗めなのは、製作者の私生活が影響していたと言われている。ルーカスは配偶者と離婚の話し合いをしている最中で、その間に作っていたのが『スター・ウォーズ/ジェダイの復讐』『魔宮の伝説』という……方やスピルバーグは、恋人のエイミー・アーヴィングと上手くいったりいかなかったり。
互いに女性問題がうまくいかなかった時期なので、劇中インディとウィリーがやたらと揉めているのは二人の私生活がうまくいかなかったのを再現していたのかも?
前作のヒロイン、マリオンは行動的でインディ顔負けのアクションを見せていたのに、今回のウィリーはきゃあきゃあとヒステリックに泣きわめくばかりで、アクションを起こす場面がほとんどない。
ルーカスとスピルバーグ、どちらも私生活で女性問題に悩み苦しんでいたが故にこのようなヒロイン像になったとしか思えない!
そして2作目はやたらとグロテスクだ。インドでの料理のシーンにはけったいな虫料理が皿に並び、目玉入りのスープやら猿の脳みそを食らうなどといった、強烈なグルメの数々に悲鳴を上げた観客は数知れず。
子供に暴力を振るうといった場面は「暴力的」とのそしりを受けた。今ではスピルバーグお得意のスリルを高めるための、凶悪な描写として受け止められるだろうが、当時はまだそのトーンが受け入れられていなかった。なので本作はR指定にされかけた。
子供に見せるために本作をつくっていたスピルバーグはこれに反発、レイティングを決める団体とかけあって全年齢対象(G)とR(観覧制限)の間にPG-13(13歳未満は親の付き添い、助言が必要)というレイティングを作らせた。
当時スピルバーグは『魔宮の伝説』と『グレムリン』の製作に関わっていてR指定にされたらたまらないと団体と戦い、新レイティングを勝ち取った。
そして『魔宮の伝説』で知り合ったスピルバーグとケイト・キャプショーは1991年に結婚するのであった。
映画界に革命を起こした男は私生活でも幸せを手に入れた! アーヴィングとは1989年に離婚し、1億ドルという慰謝料が世間を騒がせた。
大金は払ったけど別の幸せを手に入れる、という展開は金や名誉よりも他の大切なものを手にするという『魔宮の伝説』のオチに似ている。こういうの、転んでもタダでは起きない、っていうのかな? 違うか!
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