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『news zero』AI特集の“失礼すぎる”企画に取材受けた海外アーティストが怒りの抗議

『news zero』AI特集の“失礼すぎる”企画に取材受けた海外アーティストが怒りの抗議の画像
『news zero』公式Twitterより

 日本テレビ系の報道番組『news zero』が画像生成AIについて特集したが、取材を受けたアーティストがその放送内容に猛抗議し。番組の曜日レギュラーを務めるメディアアーティストの落合陽一氏にも飛び火するなど波紋を呼んでいる。

 問題となったのは、16日の放送で特集された画像生成AIによる問題の特集。テキストによる指示でAIが画像生成するツールは、既存の画像データから特徴を学習し、指示の特徴に合った画像を生成する仕組みだが、一部では特定のアーティストを指定して模倣させることができる。そのため、無断で画風・作風を“盗用”できてしまい、こうしたAIによる権利侵害は大きな問題となりつつある。

 実際にアメリカでは許諾なく絵をマネされたとするアーティストたちが集団訴訟を起こしている例もあり、番組では、訴訟を起こしたひとりであるアーティストのカーラ・オルティスさんに取材。「同意、クレジット表記、補償も何もない」「何十年もかけた努力、長年のトレーニング、そのすべてが搾取され、悪用されたのです」と訴える場面などが放送された。

 ところが、この放送に対してオルティスさんが怒りをあらわに。最大の問題となっているのが特集冒頭の街頭インタビューで、女神のような女性が描かれたオルティスさんの絵と、その絵をAIに模倣させて生成した画像を並べ、街行く人に「人間とAI、どちらの絵が好きか?」と尋ねるという内容だった。街の人たちの声として「好みなのはAI。リアルなのは人間が描いたほうだけど、AIのほうが“映える”」「若者向けは(AIのほう)だよね」「俺もAIのほうが好き」といった意見が紹介され、AIが生成した画像のクオリティの高さが強調された。

 これについて、オルティスさんは23日付の自身のTwitterで『news zero』のツイートを引用しながら抗議文を発表。「日本テレビの『news zero』は私の同意なく、私に知らせることもなく、私の絵とAIが生成した画像のどちらがよいかを聞く街頭インタビューを行いました。しかしこのインタビューでは、AIがあの画像を生成できたのは私の画風を盗んだからだという文脈を人々に説明していません。私はこのような形で私の作品が悪用されることに同意していないのです」「これまで世界中のニュースメディアから取材を受けましたが、これほど傷つけられ、搾取的だったことはどのニュース番組でもありませんでした」と、番組側の編集の仕方や街頭インタビュー企画に強い怒りを示した。

 オルティスさんは取材クルーに対しては「とても親切で素晴らしかった」と絶賛しており、同じ取材クルーによる別の日本テレビ系ニュースで流れたインタビュー映像については「適切な内容になっている」とも説明。そのうえで改めて「しかし、『news zero』は残念です。二度とアーティストをこのように扱うことがなくなりますように!」と訴えた。

 さらに、矛先はコメンテーターとして番組に出演していた落合氏にも向けられた。番組でオルティスさんのインタビュー映像などが流れた後、落合氏は「これからのアーティスト、著作権ビジネスで生きていく人は、単価を上げるか、コピーされること前提でAIと一緒に作るか、コピーされたことを売りにして生きていくか、物理的にコピーしにくいものを作るかくらいしかなくて、そうやって作品を作っていく人が生き残るんだと思いますから、それはそれでしょうがないかなと思うんですけど。それが今のリアルです」とコメント。アーティスト側が対抗手段を取る必要があるという主張で、そうしなければ淘汰されても仕方ないという印象を受けかねない言葉だった。

 これに対しても、オルティスさんは「私の日本人の友人が訳してくれた落合氏の侮辱的なコメントが、誤解であることを願いますが」としながら、「落合氏は私の訴えを却下し、その部分について誰かが反論することもなく、さも事実かのように発表されていました」「落合氏は、生成AIの学習のために、世界中の何百万ものアーティストが盗作されている実態を無視しています。日本のアーティストも現在進行形で苦しめられていることも」と猛批判し、落合氏は無断で作品を盗用するテクノロジー側に立ち、アーティスト側には「役に立たない解決策」しか提示していないと訴えた。

 この批判を受けて、落合氏もTwitterで弁解。長文の英文を綴り、「AIと著作権侵害に関するあなたの懸念については、私も当然だと考えています。AI技術を利用して他者の著作物を無断で複製・模倣するケースがあることは否定できません。これはアーティストの権利を明らかに侵害しており、早急に対処する必要があります」「しかし、芸術におけるAIを肯定的に活用できる可能性を探ることも重要だと考えます」「著作権侵害をすることなく、クリエイティブの強化のためにAIを使うことができるような釣り合いが取れる着地点を見つける必要があります」などと真意を説明。

 その一方で、「番組で、同意なくあなたの作品をいいと思うかどうか街頭アンケートを取ったことについては、深刻な問題であると私も同意します」「あなたの絵があのように使用されたことは申し訳ない」と、街頭インタビュー企画に関して番組に代わって謝罪した。

 このツイートに対し、オルティスさんも反応。落合氏の説明に感謝し、街頭インタビュー企画に対する意見が同じであったことを喜んだうえで、納得できない落合氏の説明に対しては疑問を呈し、こうした議論を『news zero』は取り上げるべきではとの提案もしている。

 生成AIをめぐる問題については、著作権侵害を訴えるオルティスさんの懸念も、法律が時代に追いついていないが、前向きな活用法も考えるべきという落合氏の主張も双方に理があり、今後も議論を続けていくべき問題だろう。だが、『news zero』の街頭インタビューについては、落合氏も一切擁護しておらず、当人に無断で行われたことを考えれば、失礼な企画になっていたことは否定しようがない。

 同番組をめぐっては、昨年9月の放送で『東京ガールズコレクション』にモデルとして出演した13歳のウクライナ人少女に対して“お涙頂戴”演出にするための発言を番組側が強要した疑いがあるとも一部週刊誌で報じられている。それ以外にも「編集で発言の意図が歪められた」との訴えがあるなど、結論ありきの番組構成になっているのではと指摘する声も出ている。

 今回の番組内容についても、著作権侵害に苦しむ当事者に対して真摯な報道姿勢だったのか問われる部分があり、『news zero』が今後どういう対応を見せるのか注目されるところだ。

SNSや動画サイト、芸能、時事問題、事件など幅広いジャンルを手がけるフリーライター。雑誌へのレギュラー執筆から始まり、活動歴は15年以上にわたる。

さとうゆうま

最終更新:2023/05/25 21:00
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