千鳥の“デニム炎上”騒動の難しさ…芸人とデザイナーが理解し合うのは不可能?
#千鳥 #檜山豊
皆さんもそろそろ飽きてきているかもしれないが、またも芸人の炎上騒ぎがあった。今回炎上の主要人物となったのは、レギュラー番組を何本も持ち、今や押しも押されもしない人気芸人「千鳥」さんだ。
炎上の要因となった出来事は5月4日に放送された「テレビ千鳥」(テレビ朝日系)の中で行われた「春服を買いたいんじゃ!」という企画内で起こった。この洋服を買うシリーズはファッションに疎いと言われている大悟さんをおしゃれなお店に連れていき、私服を選び自腹で買うという企画で、選んでいる最中に洋服を使った大喜利が展開される、「テレビ千鳥」でも人気な企画だ。
4日の放送でセレクトショップの「STUDIOUS」を訪れた際に、大悟さんがファッションブランド「John Lawrence Sullivan(ジョンローレンスサリバン)」のデニムを着用するシーンがあった。そのデニムはフロント部分の腰から裾まで大きな2つのジッパーがあしらわれるという独特なデザイン。そのデニムを履き試着室から出てきた大悟さんは自身のコーディネートを「正面チャック2枚ち〇ぽ出し変質者やん!」とデザインをイジリながらボケたのだ。
通常このコーナーでは試着した洋服を絶妙な例えや表現でいじるのがお決まりとなっていて、千鳥のお二人からすれば、いつも通りイジったにすぎない。
この放送から数日過ぎた5月15日、ネタにされたデニムのブランド「John Lawrence Sullivan(ジョンローレンスサリバン」のデザイナーをしている柳川荒士さんが、自身のインスタグラムで千鳥のお二人や「テレビ千鳥」をタグ付けして下記のようなコメントを綴り、怒りをあらわにしたのだ。
「何年もの時間を費やし、社内スタッフ、営業やPR、そして何より工場などの方々の協力を得てブランドのシグネイチャーアイテムへと育ててきたデニムジーンズが、テレビ番組でこのような扱い方をされた事が残念で仕方ない。創設から20年、妥協することなく少しずつ築き上げてきたブランドイメージを、自分達の笑いの為に一瞬にして踏み躙られた事が本当に悔しい。これからも店頭でこの商品を売っていくスタッフの気持ち、何よりこの商品を買ってくれたお客様の気持ちを考えると本当に心が痛い」
この投稿には1000件を超えるコメントが寄せられ、「デザイナーとして怒るのは真っ当やなと思う」「人が一生懸命やっていることを馬鹿にされたら、やっぱり腹が立つでしょうね」など柳川さんに同調する意見がある一方で、「お笑いが窮屈になってしまう」「服に対する感想は自由」という千鳥さんを擁護する声も上がっている。
さらには「この商品を履いているものです。爆笑しました」「ブランドや服はとても好きで、愛用していますがデザイナーの器がこんなに小さいとは思いませんでした」と、ブランドのファンから思わぬ角度の意見が寄せられた。
この騒動に対して芸人の「ふかわりょう」さんも自身がMCを務める「バラいろダンディ」(TOKYO MX)で言及した。ふかわさんとしてはこの騒動は誰が悪いということではなく、千鳥さんの影響力や発言力はもはや若手の頃とは比べ物にならないほど大きなものになっており、その千鳥さん従来の形で力を発揮するのは難しいのではないかという意見を述べていた。
確かにこの炎上騒ぎは、誰が悪いと決めるのは難しい。千鳥さんはお笑い芸人としての仕事をきちんとこなしただけだし、柳川さんも命懸けで作ったアイテムをバカにされたような気がして許せなかったのは当たり前だと思う。お互い0から1を生みだすという意味では芸人もデザイナーも共通点はあると思うが、芸人の「面白ければなんでもあり」という感覚は芸人以外の職業では理解し難いものであり、逆にデザイナーさんの生みだしたアイテムへの愛情も他の職業では計り知れないものだろう。なので同じようにイノベーションが求められる仕事だが、本当の意味で理解し合うのは不可能に近い。
だからどちらが悪いとか、どちらが加害者でどちらが被害者など議論するのはナンセンスだ。
ちなみに僕が思うに、今回唯一の被害者だと言えるのは「話題のデニムを買っていた人」なのではないだろうか。先述したネットにあがっている「この商品を履いているものです。爆笑しました」と言えるくらいメンタルが強い方なら問題はないが、メンタルがそこまで強くない人間からしたら、ここまで話題になると自分ではカッコイイと思っていても人の目を気にしてしまい履けなくなってしまうのではないだろうか。
この出来事に対して、まずユーザーが声を上げ、それに対してデザイナーの柳川さんが回答するという形であればここまで騒ぎにはならなかった。しかし柳川さんが公に声を上げてしまったが故にニュースとして取り上げられてしまい、ただのバラエティ番組のひとこまで済まなくなってしまったのだ。ニュースになることにより多くの人の目にこのアイテムが晒され、このアイテムが「笑いもの」になっていることを知らないでいられた人さえも知ってしまったのだ。
先ほども書いたように柳川さんが怒る気持ちもわかるのだが、公ではなく、裏で番組やテレビ局へ抗議すればここまで話題にならず、ブランドイメージも保ちつつ、ユーザーも履き続けられたのではないだろうか。ユーザーの中には柳川さんに対して「言うな言うな! 俺普通に履いてるのに」と、このデニムの存在が面白おかしく広まってしまうのを嫌がった人もいるかもしれない。
これはあくまで僕の独断と偏見なので、誰が何と言おうと履き続けるというブランド愛溢れる人達ばかりの可能性もある。そもそもファッションは誰かに好かれる為ではなく、自分が好きな服を着るものだ。その定義を再確認できる出来事だったのかもしれない。
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