『だが、情熱はある』ツッコミはちょっと前までじゃない方の役割だった
#お笑い #オードリー #南海キャンディーズ #だが情熱はある
フットボールアワー・後藤輝基、バイきんぐ・小峠英二、パンサー・向井慧、少し特殊なケースではあるがぺこぱ・松陰寺太勇など、ボケからツッコミへと転向した芸人は意外なほど多い。
南海キャンディーズ・山里亮太とオードリー・若林正恭の反省を描くドラマ『だが、情熱はある』(日本テレビ系)第6話は、まさにそういったテーマだった。ツッコミとして活躍している両名だが、過去にはボケとして活動する時期を経てブレークに至っている。
芸人にとって役割を変えるというのはどういうことなのだろうか。過去には、あのダウンタウンだって逆を試したことがあるという。
「面白い方がボケをやる」という時代
禁断の相方強奪でしずちゃん(富田望生)と南海キャンディーズを結成した山里(森本慎太郎、SixTONES)だが、ネタの方向性に迷っていた。どうしてもボケがやりたい山里は、しずちゃんのボケにボケを被せるという奇策を用いるもどうしてもうまくいかない。ウケないことをしずちゃんのせいにし始めるなど、悪い癖をのぞかせる。
そんななか、しずちゃんが漫才スタイルの変更を提案しようとすると、山里は強い拒否反応を見せる。
「俺がネタ書いてるのにツッコミやれって?」
「俺だってボケたい。面白いと思われたい」
このセリフ、今のお笑いしか知らない人には違和感があるのではないだろうか。冒頭で挙げたツッコミ芸人たちはもちろん、千鳥・ノブ、かまいたち・濱家隆一、霜降り明星・粗品など、昨今のお笑い界ではツッコミがかなり重要な役割を占めている。
これはバラエティ番組の作られ方が変わってきたことが、大きく要因しているのだが、間違っても“ツッコミ芸人は面白くない”という印象はないだろう。
しかし、南海キャンディーズが結成された2003年頃は確かに、その傾向がまだあった。相方を引き立てるために存在するツッコミ芸人も多く、影の薄い役割だった。
「面白い方がボケをやる」傾向が圧倒的に強かったわけだ。だが、奇しくも同じ年の『M-1グランプリ』でフットボールアワーが優勝したあたりから少しずつ風向きは変わってきたように思う。もちろん山里や若林もツッコミ芸人の地位を上げた立役者の1人だ。
◾️山里は本当に折れたのか?
話をドラマに戻そう。紆余曲折を経て山里は、「面白いと思われたい」より「売れたい」を優先し、ツッコミになる決意を固める。
「南海キャンディーズはしずちゃんだよ。俺は面白い君の隣にいる人でいい」
ドラマ上では山里に意識改革が生まれ、ブレークへの大きな一歩を踏み出しめでたしめでたしといったところだ。が、実際はそれよりもう少し複雑な感情を抱いていたように思う。
南海キャンディーズ以前の男女コンビは、夫婦漫才を除くとブスだデブだとイジるパターンが大半だった(今のご時世では考えられないが)。南海キャンディーズの新しさは、何よりも強烈なキャラのしずちゃんを立てたことだ。山里が過剰に自分を下に置き、自由奔放に振る舞うしずちゃんに付き合い、時にしたからいさめる。女性を盛り立てたことが何より新しかった。
この辺に山里の「面白いと思われたい」というプライドが見える気がする。前例にしたがってツッコミ役に回るのではなく、何か自分なりのスパイスを、何か自分にもキャラをと足掻いた結果、こういった新たな形を生み出したのではないだろうか。
結果として大成功だったわけだが、「全てはしずちゃんのために」とは違う気がする。そんな山里だからこそ昨今の確固たる地位を築けたのではないだろうか。
サトミツとの出会い
一方の若林(髙橋海人、King & Prince)は、もう少し歩みが遅い。
『エンタの神様』(日テレ系)のオーディションに合格するも、いつまで経ってもオンエアされずお蔵入り。わずかな浮上を見せるも、相変わらずな毎日を送っていた。
そんなある日、出会ったのがのちの盟友となるわくわくテント・鈴木足秋(水沢林太郎)だ。通称・すずたりは、出会った初日にナイスミドル(現オードリー)の本質を見抜く。
「ナイスミドルってなんで、あっちがツッコミなの?」
若林にも山里同様「面白い方がボケをやる」という認識があったのだろう。
この問いかけにピンとこず、「俺がネタを書いてるから? ボケだから?」と見当違いの受け答えをしてしまう。すずたりとの出会いがツッコミ転向への布石となった。ちなみにすずたりのモデルは、どきどきキャンプ・佐藤満春と見て間違いない。佐藤は放送作家としての顔も持っており、オードリーのラジオ番組の座付き作家として活躍している。
今夜放送の第7話では、ついに二組が『M-1グランプリ』に挑戦する。
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