剛腕の組合長が率いる鴨川漁協が市政を混乱させている!? 3セク舞台にトラブル頻発
#鴨川市
昨年10月期に日本テレビ系で放送された、奈緒と堤真一のW主演ドラマ『ファーストペンギン!』。魚の直販業者「お魚ボックス」をめぐる物語だったが、特に地元の漁業協同組合を牛耳り、その権力を振りかざし、主人公たちを苦しめる梅沢冨美夫演じる組合長が“嫌な奴“すぎて視聴者から大きな反感を買い、梅沢自身のもとにも視聴者から苦情が寄せられたという。
一方、実社会でも、千葉県鴨川市の漁協の組合長が、その力を背景に鴨川市政まで混乱させていることが、筆者の取材で明らかになった。
「鴨川市漁業協同組合の松本ぬい子氏は全国で初の女性組合長なんですが、気の荒い漁師たちを相手に長年にわたって豪腕をふるい、組合を運営してきた。さらに組合だけでなく、現市長の長谷川孝夫氏を市長選で全面支援し、当選に貢献した。そのため、長谷川市長は松本氏に頭が上がらない。そうした隠然たる力をもって、市と漁協が出資する鴨川市の第3セクター『鴨川マリン開発』を実質支配し、経営の舵を取っている。ただ、一部から“私物化”と批判されるほど、その手腕に疑問を抱かれている。たとえば、同社から業務委託を受けて、フィッシャリーナを維持管理する『KGM』に対する数々の対応は、“同社への妨害工作”とも取れるもので、市民を呆れさせてます」(元鴨川市議)
千葉県鴨川市といえば、全国的に知名度がある日本最大の民間病院「亀田総合病院」や、レジャー施設「鴨川シーワールド」を抱えているが、漁業も盛んで市の基幹産業の一つになっている。
「鴨川市漁協は組合員数は約1400名。組合長は3年制で組合員の選挙で決めるんですが、松本氏は10年以上も組合長を続けている。ただし、2年前に“次は◯◯さん“と後継指名していたんですが、その後、突然続投宣言するなど、言うことがコロコロ変わる。決して人望があるとは言えず、できるなら関わりたくないと思っている組合員も多い」(漁協組合員)
組合員の一人は「組合長になるには、本来、時間と金がかかるもの。その点、松本氏の実家は大きな船団を持っている。だから、長年、組合長を務めているんですが、漁協関係者や市政関係者たちの話に耳を傾けないとの評判で、組合員たちの中には頭を抱えている人が少なくないようです」と言う。
そんな松本氏が、第3セクターである鴨川マリン開発を牛耳り、結果、裁判にまで発展しているという。
「鴨川マリン開発から、フィッシャリーナ施設の維持管理業務委託を受けているKGMは、マリン開発から一方的に委託契約解除されことをめぐり係争中。さらに、委託契約解除後も漁協の土地をKGMが不法占拠しているとして、漁協が同社に対して土地の明け渡しを求める裁判を起こしたんですが、千葉地裁木更津支部は2月16日までに市漁協側の請求を棄却、マリン開発が敗訴しています」(全国紙記者)
「フィッシャリーナ鴨川」という名のプレジャーボート係留施設を運営する鴨川マリン開発は、平成元年(1989年)に鴨川市と漁協が株主になり、地元から反対の声も上がる中、資本金3000万円で設立。無謀にもホテル建設まで含めた約116億円の予算規模でスタートした。
「しかし、その計画はずさんで、10数年の間に借入金と累積赤字で計画がとん挫。倒産寸前だったんですが、マリン開発の土地を鴨川市が4億円、漁協が2億円を出して買い上げたことで倒産は免れた。そして、今後同じようなことが起こらないようにと、当時の本多利夫市長が知人の亀田郁夫氏(前市長)を通してKGMにフィッシャリーナの運営を委託した。KGMは自己資金で、漁協の土地の上に係留施設とクラブハウスを建設。平成13年(2001年)から20年間、マリン開発から管理委託を受ける契約になっていたんです」(市政関係者)
さらに、鴨川マリン開発とKGMは、令和3年(2021年)3月に5年間の契約延長を締結していたが、同年に長谷川孝夫氏が市長に就任すると、マリン開発の代表取締役社長にも就いた同市長と松本漁協組合長が連名でマリン開発の臨時株主総会を招集。KGMに対して、契約解除を申し入れた。
「長谷川氏は市長になった段階で、鴨川マリン開発の社長に就任。さらに、松本氏が副社長になったことで両者が手を組んで、亀田前市長の影響下にあるKGMを排除すべく行動を起こしたのでしょう」と言うのは前出の市政関係者。
「対するKGMは理不尽な契約解除に対して、契約継続を主張してマリン開発に訴訟を起こした(係争中)。そのほか、KGMが当事者になっている、フィッシャリーナに関する訴訟は3件ありますが、一部のマリーナ契約者から提訴された裁判はKGMが勝訴。係留施設とクラブハウスを建てた土地を漁協が返還を求めた訴訟についても、前述したとおり、漁協の請求を棄却されました」(同)
地元のミニコミ新聞「沿線ジャーナル」には「善意を持って係留施設を設置したKGMにとって、契約解除は理解の範囲を超えてもの。何がねじれ現象なのか?検証する必要がある」と報じ、「一部の船のオーナーとの裁判はKGMの完全勝訴となった。そのほか、マリン開発がKGMを訴えていた仮処分申請等も取り下げられるなどKGM有利な展開と思われる」と報じている。また、毎日新聞の千葉県版では、令和2年(2020年)の11月の紙面で「鴨川市漁業協同組合長松本ぬい子組合長は、鴨川マリン開発が県に行う“フィッシャリーナ鴨川“の令和3年度の占有許可申請について、漁港を管理する立場として承諾しないことを県に通知した」と報じている。
あるKGM社員は「松本氏率いる漁協は、マリン開発の敷地内に別の航行届出看板を設置。マリーナの不法係留者らと敷地内に居座って、KGM職員を威圧。その証拠写真は何枚も撮ってます」と言う。
さらに前述の通り、鴨川マリン開発は現在、KGMと業務委託契約の解除をめぐって係争中だが、一方で漁協と業務委託契約を締結。そのねじれ状況が背景にあるのか、松本氏は、かつて、KGMに対して訴訟を起こすも敗訴した一部の船艇オ―ナーらとともにKGM職員を威圧したとして、裁判所から警告を受けている。
鴨川マリン開発の役員でもあり、株主法人の代表でもある松本氏の行為が、一部で疑念や批判の対象になっているのは間違いない。官民一体となって地方経済を支えるべき長谷川市政だが、松本氏の存在によって混乱を招いているというのだ。
そんな松本氏に取材すべく鴨川漁協に取材を申し込んだが、「裁判中なのでコメントできない」と取材拒否。松本氏が市政を混乱させているという情報については、「言いたい人が言っているだけ」との答えだった。
だが、最近もこんな情報が耳に入ってきた。
「4月下旬、鴨川市はマリン開発から4億円で買い取った土地に商業施設をオープンした。同時に、漁協がマリン開発から2億円で買い取った土地を、市は譲渡してもらい駐車場にしたいのですが、松本氏は網干場に使用するからといって売らない。当然、長谷川市長は松本氏には何も言えません」(前出の市政関係者)
筆者は、漁協が譲渡を渋っている土地を見てきたが、更地になっていて網干場に使用された形跡はなかった。専用駐車場がないと同商業施設の発展性は限定される。なぜ、漁協が協力的でないのかが不可思議だ。市にとっても、市民にとっても、残念な話だろう。
(文=本多 圭)
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