スローライフ系マンガの金字塔『異世界のんびり農家』の圧倒的なテンポ感
#マンガ #吉松ゴリラ
マンガ歴30年。人生のほとんどをマンガにつぎ込んできた男が、注目の異世界マンガ作品をピックアップしてご紹介。あくまでこれは、吉松ゴリラの超個人的主観である――。
異世界のんびり農家!
世にスローライフ系の異世界漫画は数あれど、ここまでスローライフに特化したマンガは数少ない。スローライフ系マンガの先駆けとなった、金字塔的マンガ。
主人公は異世界に転生した青年。前世で体が弱く病院暮らしが長かった彼は、転生時、神に健康な肉体を希望する。また転生先の異世界は剣と魔法の世界ながら、人付き合いが苦手な彼が望んだ場所は森の奥深く。その森の深淵で、転生前の病弱な肉体では叶わなかった牧歌的農業生活を始める。
彼が手にする「万能農具」は、斧の形にすれば一振りで大木を切り倒し、クワにして土を耕せばその地は栄養たっぷりの肥沃な大地となり、作物の成長速度も圧倒的に速くなる。この農具系チートの農具を片手に、森をガンガン開拓していきながら、多くの仲間たちとこの地を発展させていく。
異世界のんびり農家の魅力!
「異世界のんびり農家」の最大の魅力は、ファンタジー世界のドタバタ劇を見せながらも、実際の農業についても詳しく描かれているところ。畑を耕し、種をまき、作物を収穫する様子や、飼い犬や鶏との暮らし、畜産など、実際の農業の手順や技術を学ぶことが出来る。またストーリーを通して、のんびりとした生活を送ることで得られる心の豊かさや、農業を通じて得られる人間関係、地域社会への貢献などが描かれているのも特徴だ。
最初は一人で住んでいた森の奥地に、一人、また一人と人が増え、家ができ、村となって、家族が増える。一人でたしなんでいた食事はいつの間にか家族と囲む食卓となり、さらに開拓が進み人口が増え、収穫を祝して祭りが行われ、村人たちが舞い踊る。村と村を通じて行う貿易から、さらにたくさんの人と人との繋がりができ、絆による心の充足が描かれる。
大切なものが、物から人へ、人から心へと様変わりし、物語を通じて、現代社会に生きる私たちが忘れがちな、自然との共生や人とのつながり、そして自給自足の大切さを再認識することができる。それがあくまでコミカルにポップに描かれており、「田舎のスローライフの楽しさ」を十二分に教えてくれる。
ここがスゴい!異世界のんびり農家!
この「異世界のんびり農家」の特徴の一つに、その圧倒的なテンポ感が挙げられる。そう、ストーリー進行が圧倒的に早いのだ。
通常の漫画は、ストーリーが「起承転結」によって進行する。「トラブルが起き」「その解決の為に思考を巡らし」「施策に走り解決に至る」。通常、何話か消費するストーリーが、この「異世界のんびり農家」の場合、1コマでそのトラブルが解決される。
吹き出しによるナレーションにより、「こういう問題が起きた」「だから、こうした」「そうすると、それによりこういう問題が起こってしまった」という「起」と「結」の連続でトラブルが解決され、即次の展開に進む。「承」と「転」を省いたこの展開が数ページに渡って繰り返される事もあり、村の「開拓」と「トラブル」と「解決」がガンガン進む。あっという間にインフラが整っていく様は読んでいて爽快。
ストーリーマンガにありがちな「ストーリーが遅滞してストレスが溜まる」という煩わしさが一切ないこのマンガ、読み始めたら最後まで一気読み出来るほど、息つく暇もないほど次々と魅力的な展開が起こっていく。
是非、最後までご一読頂きたい。
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