『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』ジェームズ・ガン監督の凸凹チームも今回が見納め?
#映画 #ディズニー #バフィー吉川
バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第14回目は、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』をget ready for movie!
2014年にスタートした映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズも、これでいったんの区切り。新たに設立される「DCスタジオ」の共同会長兼CEOに、同作の監督ジェームズ・ガンが就任したこともあり、ガンが手掛ける今シリーズは正真正銘の完結ということだ。
しかし『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』というチーム自体が解体されたわけではなく、コミックと同じようにメンバーを入れ替えながら今後も宇宙に存在しているだけに、ロケット・ラクーンやグルートといったキャラクターたちは、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が続く限り、今後もなんらかの形で登場してくるはず。
また『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』という作品がMCUに与えた影響は大きく、地球上が舞台であったMCU内において、宇宙という概念を取り込むことに一役買ったシリーズでもある。それによって、圧倒的にMCUの世界観が拡張されたといえる。
一度マーベルから離れていた時期もあったり、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018)のような集合映画においては、ガンは製作総指揮とはされているものの、実質的にはその手から離れているだけに、その後の展開において、つじつまを合わせるのが難しい部分もあったかもしれない。だが、うまく馴染ませながらもガン独自の色も出すことに成功している。
また主人公のスター・ロードことピーター・クィルが80年代に地球から連れ去られたという設定から、80年代カルチャーを愛しており、たびたび80年代のドラマや音楽ネタが盛り込まれているという独特のおもしろさも加わった。キャラクター構造の面では、逆にコミック版シリーズにも影響を与えているほど。
そのほかにも、登場するキャラクターが全員個性的で、その凸凹チームというコミック版をさらにコメディテイストに料理しすぎたような設定も、多くの人を魅了したに違いない。
カルト映画監督として知られていたガンだが、このシリーズに携わったこと、またDC側の『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(2021)やドラマ『ピースメーカー』などの影響もあり、“決して交わらない凸凹チームの大活躍”を描くのが得意な監督として世に印象付けたといえるだろう。
【ストーリー】
アベンジャーズの一員として世界を救った《ガーディアンズ》の、最後にして最大のお祭り騒ぎ!サノスとの戦いで最愛の恋人を失ったショックから立ち直れないピーターが率いるガーディアンズに、銀河を完璧な世界に作り変えようとする最凶の敵が現れ、ロケットは命を失う危機に…。大切な仲間の命を救うカギは、ロケットの過去に隠されていた。全銀河の運命とチームの存続を懸けた、最強の落ちこぼれチームvs最凶の完璧主義者の感動のラスト・バトルが今、始まる……。
ロケット・ラクーンのオリジンとアダム・ウォーロックの登場を”今”描いたワケ
可愛らしいアライグマがレーザー銃やバズーカを振り回す斬新さが人気を博したキャラクター、ロケット・ラクーン。それは、コミック版でも映画版でも同じだ。
今作の中でキーポイントとなっているのは、シリーズの中で断片的に語られてきたロケットの過去だ。そして、ロケットが自分自身を改めて知るというオリジンを描いている。
ロケットの初登場は70年代に出版された『Marvel Preview #7』。ロケットは宇宙を舞台としたミニシリーズや読み切り作品などを転々としたあと、映画の元にもなっている2008年版『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』から正式なメンバーとして活躍し始めた。ほかにも『Rocket』や『Rocket Raccoon and Groot』といったスピンオフコミックも定期的に出版されており、長年にわたり高い人気を誇っているキャラクター。
そんなロケットのオリジンを描くということで、ロケットファン必見の作品となっていることは間違いないのだが、今作ではもうひとり重要なキャラクターが初登場を果たしている。
それはアダム・ウォーロックだ。ウォーロックの登場に関してはこれまでにも“伏線”が張られていた。本来であればサノスとの闘うさだめのキャラクターということもあり、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』よりも以前に登場させる予定だったのが、結果的にサノス亡きあとの今になって、とうとうというか、今さら登場したわけだが、完全に出遅れたキャラクターという感じがしてならないし、ヒーロー映画に向いているとは思えないウィル・ポールターが演じているというのも個人的には違和感がある。
しかし、監督のガンがうまかったのは、そんなウォーロックの出遅れ感、場違い感というのを作品の空気として反映させていたことだ。今作の中でウォーロックは明らかに“場違い感”がありながらも、最終的には『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の世界観に馴染んでいる。
おそらくガンが今作で目指したことは、シリーズとしての完結というのは前提にありながらも、今後に続くキャラクターの引き継ぎだったといえるだろう。
ガモーラ、マンティス、ドラックス、ネビュラを演じた俳優たちは、今作で『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』を卒業することがわかっている(俳優がリキャストされる可能性はあるが)ため、ある程度の卒業や旅立ちらしい描写がされているが、ロケットやウォーロックといったキャラクターは、どういった形でも再登場が可能な余地を残している。
つまりガンは、今作が最後だからといって、徹底的に娯楽作として消費はしなかった。キャラクターのオリジンを描き、新キャラクターを馴染ませるという、一定の尺を使ってDisney+のドラマシリーズ枠で描くようなことをしているのは、ガンがマーベルから離れる“置き土産”となっているのだ。
『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』
監督:ジェームズ・ガン
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:クリス・プラット、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼル、ゾーイ・サルダナ、カレン・ギラン、デイヴ・バウティスタほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023
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