広島大が日本初、日本のてんかんの発症率を算出
#鷲尾香一
広島大学の研究チームは5月1日、日本で初めて、てんかんの年齢・性別・暦年ごとの有病率と発症率を発表した。日本のてんかんの発症率について算出した報告はこれまでになく、初めてとなる。
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/76731
てんかんは、脳内の細胞に発生する異常な神経活動によって発作をきたす神経疾患の症状。乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発症する可能性があり、患者数の多い神経疾患のひとつだ。
発表文によると、先進国での有病率は一般人口1000人あたり4~8人、発症率は一般人口10万人あたり1年間で約45~49人と報告されているが、日本におけるてんかんの有病率、発症率に関する全国規模の疫学調査研究報告はこれまでほとんどない。
そこで、研究グループは全国の健康保険組合に12年1月から19年12月の8年間に在籍記録を有するすべての加入者(被扶養者を含む)986万4278人のレセプト(医療報酬明細書)データを解析した。対象者は健康保険組合加入者であることから、年齢は74歳以下で40~50代が全体の約3割を占めている。
研究グループはレセプトの傷病名情報、医薬品情報、診療行為情報、てんかん指導料などの情報から「てんかん患者」を判定するためのアルゴリズムを開発し、解析した。その結果抽出されたてんかん患者数は7万7312人だった。
この結果、てんかん有病率は人口1000人あたり6.0人(男性6.1人、女性5.8人)で、これまでに報告されている先進国での有病率の人口1000人あたり4~8人と同水準だった。
12年から19年有病率の経年変化は人口1000人あたり5.4~6.0人(男性5.4~6.1人、女性5.4~5.8人)と微増傾向だったが、男女差はほとんどなかった。年代別では、70~74歳が他の年代と比較して最も高い値を示し、1000人あたり9.2人、次いで10歳代が15~19歳で1000人あたり8.6人、10~14歳が同7.9人と高い値を示した。(グラフ)
てんかん発症率は、1年に10万人年あたり72.1人(男性70.7人、女性73.7人)で、女性の方がやや高かった。これまで報告されている先進国におけるてんかん発症率の1年に10万人年あたり45~49人と比べて約1.5倍高く、日本人は先進国の中ではてんかんの発症率が高いことが判明した。
年代別では0歳のてんかん発症率が最も高く、1年に10万人年あたり199.8人、次いで70~74歳の発症率の同179.4人が他の年代よりも著しく高かった。発症は1~69歳までは極端に多くなく、0歳と70歳以降が高いことがわかった。
有病率と発症率の関係では、0~4歳は有病率が低いものの、発症率は0歳で高い半面、有10歳代は有病率が高いものの、発症率は低く、有病率が高い70~74歳では発症率も高いという結果となっている。
研究グループでは、「患者の規模(有病率と発症率)を把握することは保健医療戦略を考える上で重要であり、研究では、全国地域を網羅する大規模一般集団を対象とした解析結果に基づくてんかんの疫学的実態を提示した」とした上で、研究結果が「患者さんへの政策に生かされることを期待し、研究を続け発信をしたいと考えている」と述べている。
研究結果は、JournalofEpidemiologyに掲載された。
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