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NHKが儲かれば民放が風邪を引く? 受信料徴収強化で「テレビ離れ」加速の矛盾

NHKが儲かれば民放が風邪を引く? 受信料徴収強化でテレビ離れが加速する強烈な矛盾の画像1
NHK(Getty Images)

 NHKの受信料徴収キャンペーンの勢いが止まらない。4月からは受信料未払い者に対し、割増金を請求できる制度がスタート。悪質と判断された場合、2倍の割増金を請求できるようになったほか、有識者会議でスマホを持つ人からの受信料徴収の可能性が指摘されるなど、徴収強化に躍起になっている。

 NHKが未払い者の“逃げ得”を防ぐ努力をするのは当然だろうが、民放各局のテレビマンの目は極めて冷ややかだ。

「かつてテレビ業界は人気企業ランキングの上位に必ず入り、テレビ局社員といえば羨望の眼差しで見つめられたものですが、今の若者に話を聞くと『テレビは見ない』『そもそもテレビを持っていない』というのが当たり前。

 理由を聞けば、多くが受信料を理由のひとつに挙げます。NHKの受信料は地上波のみだと1カ月で約1300円、BSまで入れると2300円で、一人暮らしの若者にはなかなかの負担です。一方で、動画配信サービスは1000円以下のものも多いですから、そちらを選ぶのは必然でしょう。

 それに若者たちは、NHKの局員が超高給取りであることを知っています。自分たちが少ないお金をやりくりして払う受信料が“上級国民”の懐に収まるとわかれば、テレビを持つのがバカらしく感じるのは当然のこと。“ネットがあるから”とか、”スマホで十分だから“など、テレビ離れの理由はいろいろと叫ばれますが、民放の社員は誰もが、NHKの受信料を払いたくないからというのも要因のひとつになっていると思っていますよ」(キー局関係者)

 最近、巷にはNHKとの受信契約が不要なチューナーレステレビも出回っているが、「そんな面倒なものを買うぐらいなら、スマホやパソコンで十分」(20代男性)というのが若者の本音。かつてテレビは“娯楽の王様”と呼ばれたが、現場の危機感は相当なものだという。

「業界内ではすでに世帯視聴率は参考にされませんが、世間が興味あるのは、相変わらず世帯視聴率。WBCでは40%台の数字がバンバン出て、久々に景気が良い話題が飛び交いましたが、ここ1~2年は週間視聴率ランキングのトップが15%を切ることも多く、BEST10まで広げると2ケタを割ることも少なくありません。

 現在放送中の木村拓哉のドラマ『風間公親 -教場 0-』(フジテレビ系)は初回こそ12%台でしたが、3回目以降は9%台まで低下。先日スタートした松本人志と中居正広のバラエティー『まつもtoなかい』(フジテレビ系)は、初回は20%くらい行くのではという楽観的な見方もありましたが、結果は10.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)に終わり、業界に衝撃が走りました。

 NHKの受信料は放送法で定められた制度なので、民放各局が受信料問題について声をあげることはありませんが、公共放送の存在が放送文化を廃れさせる結果につながるなら、それはまさに“本末転倒”です。一番手っ取り早いのはスクランブル化の導入ですが、そろそろ受信料制度について真剣に議論する段階に差し掛かっています」(フリージャーナリスト)

 庶民にとって、月2300円がどれだけの負担なのか、年収1000万円超のNHK局員にはわかるまい……。

藤井利男(ライター)

1973年生まれ、東京都出身。大学卒業後に週刊誌編集、ネットニュース編集に携わった後、独立。フリーランスのジャーナリストとして、殺人、未解決事件、死刑囚、刑務所、少年院、自殺、貧困、差別、依存症といったテーマに取り組み続けてきた。趣味はダークツーリズム。

ふじいとしお

最終更新:2023/05/12 19:47
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