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BE:FIRST「Smile Again」RYUHEIの”君は綺麗だ”で見えた白昼夢

BE:FIRST「Smile Again」RYUHEIの君は綺麗だで見えた白昼夢の画像1
BE:FIRST 公式サイトより

 BE:FIRST、 3rd Single「Smile Again」が盤として発売されたのは去る先月の26日の事。所謂配信勢であるおっさんは、その2日前である24日に当曲を耳にしており、文筆稼業のセオリーと申しますか事物の理(ことわり)として鉄は熱い内に打つべきで機を見るに敏なのだからそらまあ1日も早く入稿するべきであるのはようく分かっているのだが、駄目だったのだ。書けんかったのだ。

 しかもその理由は実に情けのない事に、何とおっさん、それはまるで当曲が主題として掲げる(オフィには”シングルリード曲としては初となるラブソング”との記述あり)愛だの恋だのポールダノ(とはザ・バットマンのリドラーでありフェイブルマンズのサミーの父ちゃんであり言いたかっただけ)にすっかりお熱となってしまい、思う通りに筆が進まず、ここ数日間に渡って書いちゃ消し、書いちゃ消しを繰り返していたのである。ウブかと。純情かと。

 そうなのだ。おっさんことショウムライターはウブでいてそして純情でもありついでに可憐ですらあるのだ。こんな事を言うと途端に俺の事が可愛く愛おしく見えて仕方なくなるだろうがビーファの面々にゃちと劣る事も自覚しているからどうか安心して欲しいし怒らないで欲しい。

 つう訳で何を隠そうおっさんはロマンチ(ティ)ストであり、恋に恋するウブ純可憐ボーイを未だその胸から追い出す事が出来ないでいるのだ。

 そんな最中に当曲の発表、そしてそれがボーイに対して優しく語り掛ける様にそして包み込む様に作用しちまったもんだから俺のボーイは大覚醒。稼業としての記事と当曲が凄まじくツボってしまったが故のラブレターとが混同してしまい、纏め切れずにいたと言う訳だ。

 こりゃあ、アカンて。

 初めは部屋のスピーカーで聴いていた。そしてMVも観た。何だか違和感を感じたと言うか、ムズムズした。おっさんは清涼感のある冒頭のサウンドとそしてMVで描かれる青々とした空模様を観て、ふと思ったのだ。

 これは室内で聴くべき楽曲ではないのではないか?と。

 晴れた日におっさんは、当曲を携えて外へ出た。見上げた太陽が鋭く視神経を刺激するが、風は穏やかであった。

 耳元でRYUHEIが”君は綺麗だ”と呟き、一拍を置いたその瞬間。

 Wikipediaよりの引用であるが、日中、目覚めている状態で、現実で起きているかのような空想や想像を夢のように映像として見る非現実的な体験、または、そのような非現実的な幻想にふけっている状態。

が、訪れた。所謂白昼夢と言うヤツだ。ふっと身体が浮き上がり、太陽に吸い込まれていくかの様な感覚、或いは陽の光が身体を透過し、空気中へと溶け出していくかの様な感覚であった。

 何つう快感、そして浄化作用だろうか。やっぱそうだった。これは屋外で聴いた方が効きが良い類のシロモノであったし、そうした諸条件を揃える事で極上のトリップソングへと化けるシロモノでもあったのだ。

 即ち当曲メロディや歌詞が美しいのは一聴してお分かりの通りであるが、表面上からは分からないくらい、肉体的で躍動的な音楽的快感が詰まりに詰まっている楽曲でもあったという事である。しかもたった3分半(弱)の間に、全てが。

 もうど頭からワンコーラスまでの場面展開とメンバーの配置、そしてメンバーそれぞれの声色のチューニング、全ての要素が美しくぴったりとハマっている様がおっさんには快感、そして浄化でしかないのだ。

 冒頭の遠鳴りするコーラスと柔らかく重ねられたシンセに始まり、シンコペーションするキックに合わせて鳴らされる和音の浮遊感が後押しする中、正に夢と現実の狭間を揺蕩うかの如くなJUNONのボーカルからもう凄え。マジで寝起きでレコーディングに向かったんじゃないかというくらい脱力していて、それでいて現実に存在しながら意識は未だ夢の世界という、浮世離れした色気に満ち満ちた歌唱での導入。

 続いては、コード音が鳴らされる以外の音はミュートされるというほぼ独唱とも言える環境下で圧倒的な歌声を響かせるSHUNTO。おっさんが当曲で1番刺さったポイントである。

 歌詞にある”手”と”温度”即ち”体温をしっかりと感じさせてくれる、力強く高らかな発声でもって場面展開をリードしてくれるその声は、直前のJUNONの中性的な表現との対比、そして太さと伸びやかさを兼ね備えているが故に当パートや当曲2サビのリード、そしてアルバム『BE:1』の「Milli-Billi」や「Move On」の印象的な低音という、まるで1つの身体に天使と悪魔或いはジキルとハイドが共存しているという二重人格的な魅力がある。

 今に至るまでの活動では、実に多種多様な音程と自分の声に向き合った結果であろう、実に実に雄弁な歌唱であった。

 メロウな曲調に敢えて自分の個性であるざらりとした発声をぶつけに行くというパンキッシュな解釈でもって切り込んでくるリズムトラックと共にサビへ向けて曲を盛り立てるRYOKI。

 このまま勢い良くあの曇り空を割る様なサビが大輪を咲かすのかと思わせつつ、そこで先に記した一瞬のRYUHEIの呟きが入ると言うギミック。ここも刺さりまくった。マジか気持ちいいー!!!!となった。

 ある種の諦観というか、その思いがその対象に届く事は決してないのであろう事を認めてしまっているかの様な憂いを帯びた声色。最年少に何つう表現をさせるのだSKY-HIよとおっさんは思った。

 それまでは終始モノクロ寄りのというかアブストラクト(抽象的)というかベールが掛かった様な音色で紡がれたトラックも、突如サビで華やかに色を帯びる。立体的な音色で鳴らされる4つ打ちのキックに合わせ、言葉通りに曲は単色から極彩色へ、全ての音が躍動しているかの様だ。高らかに伸びる”Smile Again”のフレーズとシンコペーションするその後のメロディとの掛け合いもサイコーに気持ちいい。

 LEOがファルセットを交え柔らかくそして対象を愛おしむ様にキーフレーズである”君は綺麗だ”を歌い上げると、冒頭のコーラスがリフレインされる。冒頭で遠鳴りしていたのは、ここで効果的に鳴らす為の伏線であったのだ。何とニクく、そして気持ちいい演出だろうか。やっぱこう書くしかない。快感である。

 続いてMANATO、SOTA、RYOKIが中心となって1Aとは全く違うメロディをテンポ良くリレーしていくパートであるが、喉にエフェクターでも移植したんじゃないかしらと思うくらいのドスを利かせたラップが印象的なSOTAが、こちらではソフトな声色を自在に使い分け、MANATOとの掛け合いを繰り広げる。

 後半ではRYOKIがエモーショナルな、というか歌詞と合わせると実に切迫した感情を痛切に表現する歌唱を聴かせ、その後当曲で1番音程譜割り共々複雑な展開を見せるパートをMANATOがさらりと乗りこなすというこれまた快感。

 リフレインするBメロではRYUHEIが、1番の”君は綺麗だ”とは打って変わって感情たっぷりに”You’re my only one”を歌い上げ、再びのサビ。ここでは掛け合う日本語詞を先に記した通り、ハードな歌唱を得意とするSOTAと RYOKIが担当するというニクくそしてテクい配置が見られるという、またもや快感が訪れ、Cメロ後半で2Aをリードしたトリオが最後のサビへの助走を付ける。

 それまで実はサビ前半、即ちコーラスがリフレインする前のパートでは上物が鳴らされていないという引き算の構造も驚きであったが、ラスサビでは全部乗せ。サビ後半のコーラス部で印象的に鳴っていたミュート気味のアルペジオがようやく、サビ前半のメロディと合流を果たすという快感やSHUNTOによるここの”君は綺麗だ”のみ歌い尻にアレンジが加えられるなどの快感など、もうポイントだらけでおっさんは大変だよ。

 そうなのだ、たった3分半に満たない楽曲にも関わらず、おっさんにとってこの曲は気持ちいいポイントが多過ぎた事と、記した通り一聴してメロウで聴きやすいんだけど実は……な魅力つうか魔力的な部分に音楽好きのおっさんはやられ、音楽的なポイントをつらつらと解説したものの歌詞は歌詞でまた色々と掻き立てられ過ぎるくらい切なく、でもやっぱ届かないというかそもそもそんな届くだの届かないだのポールダノ(とはザ・バッry)みたいな単純な思いつうか想いではない事がありありと分かる分かるゥ分かるぞウウウゥゥな歌詞におっさんの純ボーイもやられ、つい今日まで時間を要してしまったという内幕なのであった。

 そしてこの場を借りて私、ショウムライターはVIVA LA ROCK 2023にて御本人達にインタビューをさせて頂きまして、ご視聴下さった方々と機会を下さったビバラ運営の皆様ときっかけを下さったサイゾー編集部の方々に心よりの御礼を申し上げたく存じます。

 本当にいつも、楽しい現場を、ありがとうございます。

 

 

庄村聡泰(コラムニスト・スタイリスト)

ロックバンド[Alexandros]のドラマーとして2010〜21年に活動。バンド時代の収入ほぼ全てを注ぎ込むほど傾倒した音楽や洋服を中心に、映画やマンガ、アニメやグルメ、世界各地の珍スポットなどのさまざまなカルチャーに精通し、これらの知識と経験を生かしてライフスタイル提案型ファッションブランド「スナック NGL」を始動。また、歌劇な過激団 @furaku_taru の制作総指揮を務めるなどプロデュース活動や、#サトヤスタイリングとしてファッションスタイリングや、#ショウムライターとして音楽や映画をはじめさまざまなメディアでインタビューやコラムを執筆。自ら映画にも出演するなど精力的な活動を広げている。 #サトヤスタイリング #ショウムライター インタビュー

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庄村聡泰のホームページ

しょうむらさとやす

最終更新:2023/05/11 12:00
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