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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 母と娘の愛憎まみれの関係を描く韓国映画
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.737

憎しみ合いながら、母と娘はなぜ同居するのか? 映画『同じ下着を着るふたりの女』

停電の夜に繰り広げられる母と娘のクライマックス

憎しみ合いながら、母と娘はなぜ同居するのか? 映画『同じ下着を着るふたりの女』の画像5
撮影現場でのキム・セイン監督

 母と娘の関係を赤裸々に描いた本作が公開されたことで、キム・セイン監督と母親の関係に波風は立たなかったのだろうか。

キム・セイン「この映画が韓国で公開されることは、私にとっては恐怖でもあったんです。私の母がこの映画を観て、映画の中のフィクションと現実を混同してしまったらどうしようと不安でした。でも、母はちゃんとフィクションはフィクションとして受け止め、映画を最後まで観てくれました。そして中年女性が主人公になっていることを気に入ってくれたようです。韓国では映画もTVドラマも、若い女性が主人公になることがほとんどで、中年女性は脇役扱いだからです。自分と同世代の女性が描かれていることを、母は喜んでくれたようです。ただ、母は『これは映画で、実際とは違うのよ』と知り合いに触れ回らなくてはいけなかったようです(笑)」

 現実のキム・セイン監督と母親の関係は良好のようだが、劇中のスギョンとイジョンの母娘関係はどうなるのか。スーパーマーケットの駐車場で起きた事故の真相も含めて、気になるところだ。キム・セイン監督は物語のクライマックスを、団地内が停電となり、真っ暗闇に覆われるという予想外の設定の中で描いてみせている。

キム・セイン「脚本段階から、停電にするという設定は考えていました。同じ環境にずっといると、なかなか本音で話し合う機会がないものです。女子校生なら、初めて友達の家に遊びに行った日や修学旅行などでお泊まりする夜に、お互いの秘密を打ち明け合ったりするものです。それで、映画でも環境を変える必要があるなと思ったんです。娘のイジョンは、母親に事故のことを謝ってほしいわけではありません。母親に自分は愛されているのかをただ確かめたいだけなんです。いつも母親の怒っている顔しか見ていなかったイジョンは、停電の夜にそれまでとは違った母親と対峙することになるんです。お互いに傷つけ合い、苦しんできた母と娘が初めて本音を語り合うのには、お互いの顔の表情が見えないほうがいいんじゃないかと思ったんです」

 母と娘の愛憎まみれの関係を139分にわたって描いた『同じ下着を着るふたりの女』。この容易ならざる関係性は、女性はもちろん、男性にも観てほしい。母親を絶対視してきた息子たちは、母親の知られざる顔に驚きを覚えるに違いない。

『同じ下着を着るふたりの女』
監督・脚本/キム・セイン
出演/イム・ジホ、ヤン・マルボク、ヤン・フンジュ、チョン・ボラム
配給/Foggy 5月13日(土)より渋谷イメージ・フォーラムほか全国順次公開
movie.foggycinema.com/onajishitagi

【パンドラ映画館】過去の記事はこちら

最終更新:2023/05/11 19:00
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