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『ブラフマーストラ』は『RRR』の監督も大絶賛! インド発、ヒンドゥー神話×アメコミヒーローの新ユニバース

ヒンドゥー神話とヒーローの組み合わせは定番中の定番!

『ブラフマーストラ』は『RRR』の監督も大絶賛! インド発、ヒンドゥー神話×アメコミヒーローの新ユニバースの画像4
『ブラフマーストラ』© Star India Private Limited.

 インドのヒーローものというと、ヒンドゥー神話を掛け合わせるスタイルは定番といったところで、『ブラフマーストラ』の設定自体はめずらしいものでもない。

 ヒンドゥー神話自体が、宇宙規模の再生や破壊創造などを描いていたりするだけに、ファンタジーなどの物語として取り込みやすい側面もある。

 ヒンドゥー神話をギミック的に反映させたヒーロー映画といえば、先日新作の製作が発表された『クリッシュ』や、今後公開される『Hanu Man』、プラバース主演の『Adipurush』などもそうだ。

 古くは『シャクティマーン』というインド産スーパーマン的な作品もあるが、こちらもインドでは年内に新作映画が公開される予定だったりして、全体的にヒーローブームが到来しつつあることがわかる。

 また、ヒンドゥー神話と聞くと、どうも宗教色の強さを感じるかもしれないが、決してそんなことはない。例えばアメリカ映画は何かとキリスト教やクリスチャンの思想が描かれたりするが、あくまでバックグラウンドとしてであり、ストーリーの本筋には直接的に関わらないことも多い。

 今作は、下敷きとなっているヒンドゥー神話部分を見せようとしているのではなく、ファンタジーとしてしっかりとコーティングしている。ヒンドゥー神話はあくまでスパイス的なものだと思った方がいい。

 特に今作の場合は、正義と悪の能力バトルとして観ることが目的とされているだけに、必要以上に神話部分を深堀りして宗教的思考や概念と結び付けようとすると、娯楽の邪魔をする“雑念”になりかねない。

 アヤーン監督は、この作品を通して何を言いたかったのか。それは、何ものにも勝るのは「愛の力」だということなのではないか。恋愛映画を撮ってきたアヤーンらしい定義づけなのかもしれないが、普通に考えるとかなり王道の、とてつもなくクサい話だ。

 それを堂々とやってのけるのも一周回って清々しいが、主演のランビール・カプールとヒロインのアーリヤー・バットが現実で本当の夫婦になっているのだから、妙な説得力が加わっている。

 今やハリウッドが委託するほどにCG技術が発展してきたインドだが、技術の進歩によって、娯楽アクションやヒーロー映画が量産される流れは、手放しで喜べる状態とも言い難い。2000年以降のハリウッドの悪い流れをなぞっているようでもあり、筆者としては心配になる部分も正直、あったりもする。

 ただ、最近ではそういった娯楽思考の流れを補うかのように、インド映画人がヨーロッパ映画、特にスペイン映画を研究していたりもする。それだけに、それらを踏まえて今後どう発展していくかは楽しみだといえるだろう。

『ブラフマーストラ』
5月12日 (金)から全国ロードショー

監督・脚本:アヤーン・ムカルジー
出演:ランビール・カプール、アーリヤー・バット、アミターブ・バッチャン、シャー・ルク・カーン、モウニー・ロイ、ナーガールジュナ・アッキネーニほか
2022年/インド/ヒンディー語/167分/シネスコ/5.1ch
原題:Brahmastra Part One:Shiva/字幕翻訳:浅井華林/提供:ツイン、Hulu/配給:ツイン
公式サイト:brahmastra-movie.com

 

バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

毎週10本以上の新作映画を鑑賞する映画評論家・映画ライター。映画サイト「Buffys Movie & Money!」を運営するほか、ウェブメディアで映画コラム執筆中。NHK『ABUソングフェスティバル』選曲・VTR監修。著書に『発掘!未公開映画研究所』(つむぎ書房/2021年)。

Twitter:@MovieBuffys

Buffys Movie & Money!

ばふぃーよしかわ

最終更新:2023/05/12 20:00
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