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「あの」とにかく明るい安村がイギリスで大ブレイク…に見る新しさ

とにかく明るい安村「ホワイ・ジャパニーズ・ピーポー!」

 最近見たなかで一番ハッピーな映像は何かと問われたら、私は今後しばらくの間、「とにかく明るい安村がイギリスの番組でバカウケしているやつ」と答えるだろう。

 改めて確認すると、現地では4月22日に放送されたらしいオーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に、安村はTonikakuとして出演。「安心してください、はいてますよ」のネタを披露し、審査員や観客からの喝采を受けた。ネタはもちろん、審査員との“平場”のコミュニケーションも片言の英語で会場を虜にするTonikaku=安村。ちょっと感動すら覚える。言語や文化の壁よりも、有吉の壁のほうが高いのかもしれない。

 そんな安村が、2日の『ラヴィット!』(TBS系)に“緊急来日”していた。番組では、安村を英国で大人気のコメディアン、Tonikakuとしてとして紹介。安村もその設定に乗り、あたかも外国人コメディアンのように登場するのだった。

「グッドモーニング、ジャパン!」

 安村は続けて、例の「安心してください」のネタを、『ブリテンズ・ゴット・タレント』バージョン、すべて片言の英語で披露した。スタジオの面々も決め台詞のあとに「パンツ!」と連呼する。現地さながらの盛り上がりだった。

 その後も安村は、「トニー!」などとヤジが止まらない周囲を「ホワイ・ジャパニーズ・ピーポー!」と制したり。なぜ英国の番組に出演したのか問われて「ヨシモト・ノ・イコー」と答えたり。『ラヴィット!』恒例のビリビリの罰ゲームを受け痛がるタレントを見て「クレイジー・ジャパン……」と神妙な面持ちを見せたり。外国人コメディアンの“緊急来日”コントを続けるのだった。とても面白かった。

 今後しばらく、安村はこの話題でテレビ番組に呼ばれたりするのだろう。新しい情報を求めるメディア。かつてブレイクしたネタ「安心してください」であっても、英国で大人気というパッケージでくるまれれば、新しい情報になる。安村からTonikakuへ。その差分が新しさになる。

 テレビのなかで一度でもブレイクすることの意味の大きさを思う。SNSなどを見ると「あの安村が海外で爆笑をかっさらった」といった反応が多いように思うが、一度ブレイクしているから「あの安村」になる。「あの安村」は一里塚になる。「あの安村」からの差分に私たちは新しさを感じ、面白がる。

 たぶん、日本のテレビでまったく知られていないコメディアンが海外のオーディション番組で喝采を受けても、ここまでにはならないだろう。実際、そういった芸人はこれまでにも何人かいて、逆輸入的に日本の番組に出るケースがあった。が、安村ほどの盛り上がりはこれまで見せてこなかったように思う。「あの」がないからだ。

 考えてみれば、メディアで活躍するタレントは、定期的に「あの」を積み重ね、差分をつくり、新しさを生んでいる。最初の「あの」が次の「あの」を生み、その「あの」がさらに次の「あの」を生む。たとえば、「あの武勇伝の人」が「あのPERFECT HUMANの人」になり、「あのYouTubeの人」になるように。そして、「あのYouTubeの人」を足がかりに、次の「あの」につなげようとしているように。

 「あの安村」は「あのTonikaku」になった。もちろん、そのうち次の「あの」に移り変わっていくだろう。が、いましばらくは、「とにかく明るい安村がイギリスの番組でバカウケしているやつ」の余韻に浸りたい。

飲用てれび(テレビウォッチャー)

関西在住のテレビウォッチャー。

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いんようてれび

最終更新:2023/05/09 08:00
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