米国債、デフォルト(債務不履行)の危険性いよいよ現実味
#鷲尾香一
米国債がデフォルト(債務不履行)に陥る危険性が現実味を帯びてきた。米財務省は5月1日、連邦債務上限が引き上げられなければ、早ければ6月1日にも政府の債務支払いを履行できなくなる恐れがあるとの見通しを示した。
筆者はその危険性について、2月18日の「米国債、デフォルトに陥る可能性―デッドラインは6月中旬」で、米国債のデフォルトが現実味を帯びれば、株式市場は暴落、国債価格は急落し、急激なドル売りによるドル安・円高が進行するなど、世界の株式、債券、為替市場は大混乱に陥るだろうと指摘した。
この記事で、米国では債務上限の変更は毎年のように行われているため、人々の関心は低いが、今回の危機は22年11月の中間選挙の結果、米国議会の上下院で“ねじれ議会”となっており、米国債がデフォルトする可能性は高いと指摘した。
「債務上限」は米連邦政府が借金できる上限額を指す。米国では議会が政府の借入額を決定する権限を持っており、議会が債務上限額の範囲内で財務省が国債などを発行して、資金調達を行う。
債務上限に達すると原則として新規の国債発行が禁止される。そこで、米財務省は公務員退職・障害基金の国債購入停止や為替安定化基金への投資停止などの特別措置を発動し、緊急避難的に米国債のデフォルトを回避する。
イエレン米財務省長官は1月19日、21年末に設定された政府の債務上限額約31兆4000億ドル(約4100兆円)の上限に達したことを公表し、すでに特別措置を発動し、緊急避難的に米国債のデフォルトの回避を続けている。
これを受け、2月7日にはバイデン大統領一が般教書演説の中で、債務上限引き上げ問題で米国がデフォルトに陥る事態は招かないと強調し、議会に上限引き上げを呼び掛けた。
下院議長に就任した共和党のケビン・マッカーシー議員は、24年の大統領選挙を控え、新型コロナウイルス対策を含め、大きく膨れ上がった歳出に対して、債務上限の引き上げと引き換えに社会保障費やメディケア給付などを含めた歳出削減を求めており、ねじれ議会の下で債務上限引き上げの大きな障害となっている。
1月に政府の債務が上限に達したことを公表した際、イエレン長官は特別措置と財務省の手元資金、4月15日に予定される連邦税収を合わせれば、6月中旬までは債務返済や歳出を継続することができるとしていた。
ところが、4月の連邦税収の結果をもとにイエレン財務長官が5月1日に議会に宛てた書簡では「6月初旬、早ければ6月1日」にも全ての米国政府の支払い義務を果たすことが困難になるとの具体的な見通しが示された。
同日、バイデン米大統領は米債務不履行(デフォルト)の選択肢を排除するようマッカーシー下院議長に呼びかけ、「共和党議員の一角によるデフォルトの脅しは“極めて無責任”で、そうした脅しを排除することが不可欠」とし、米国がデフォルトに陥る事態となれば、「金利やクレジットカード金利の上昇を招き、住宅ローン金利は急上昇する」と警告した。
米国ではこれまで米国債がデフォルトに陥ったことはない。このため、最終的には両者が歩み寄り、債務上限の引き上げが行われると楽観視する向きは多い。だが、米国債がデフォルト直前まで債務上限の引き上げ交渉が難航すれば、世界中の各市場は大きく動揺するだろう。
米国では銀行の経営破綻が相次ぎ、金融システム不安が増大している。そこに財政問題が加われば、経済や各市場に対する影響は計り知れないものになる可能性を秘めている。
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