いつもここから山田一成のツイートは現代人の癒やし?他の芸人が真似できない才能
#いつもここから #ツイート #檜山豊
皆さんは「いつもここから」という芸人をご存知だろうか? 「山田一成」さんと「菊池秀規」さんの2人からなるコンビであり、主に人間観察を基にした「あるあるネタ」を基本としている。代表的なネタとしては、スケッチブックを使い、少し悲しく面白いシチュエーションを羅列していく「悲しいとき」や、特攻服を着て暴走族に扮し、バイクのハンドル部分だけを持ち乗っている体で次々と怒りの「あるあるネタ」を発表していく「どけどけ」などがある。
どちらのネタも「かないしとき~」や「どけどけ~どけどけ~邪魔だ邪魔だ邪魔だ~どけどけ~」「○○してえのかバカヤロウコノヤロウメェ」など思わず言いたくなるようなリズム感とポップなフレーズを使用しており、ネタの内容は思い出せないが、そのフレーズや言い回しは脳裏に焼き付いている人も多くいるだろう。
お笑い以外でも、NHKで放送されている幼児向けのテレビ番組「ピタゴラスイッチ」にて「アルゴリズムたいそう」「アルゴリズムこうしん」で様々な人たちと体操するというコーナーも持っている。
現在活動中のお笑い芸人たちが出演しているバラエティ番組やネタ番組などにはあまり出演せず、活動の場所は「いつもここから」さん独特の場所であり、他の芸人たちとは一線を画している。
今、この「いつもここから」山田一成さんのTwitterの投稿が多くの人に絶賛され、反響を呼んでいるのだ。中には表示回数100万回を超えるツイートもあり、人気のツイートでは“いいね”の数が8万を超えている。
今回は、このいつもここから山田さんのツイートを元芸人目線で分析していく。「いつもここから」さんとは芸人としてスタートした時期が同じで、ライブや番組などでよく一緒になった。そのときに僕が「いつもここから」さんに抱いていた印象は「芝居やセリフ回しがなんと下手なのだろうか」というものだった。山田さん、菊池さん共にお世辞にもセリフ回しが上手いと言えるものではなく、セリフで笑いを取るタイプのネタをやっているのに悲しいくらい滑舌が悪いと思っていた。
しかし、そのたどたどしさが逆に好感を持たれ、あれよあれよと人気芸人になっていった。そんな二人を見たとき、昔「大人計画」の主宰である「松尾スズキ」さんが、演技は下手な方がお客さんが目が離せなくなり、芝居に集中すると言っていた原理を思い出した。
しかし、そのたどたどしさとは違い、「いつもここから」さんの「あるあるネタ」は秀逸だった。先述したが、何といってもネタのパッケージのポピュラリティーは他の芸人の追随を許さなかった。一目見るだけで脳裏に焼き付くあの感じは、当時の芸人たちが欲しくて仕方がなかった才能のひとつだった。
そして、もう一つはネタのクオリティの高さだ。「悲しいとき」の頃はそこまで感じなかったが、「どけどけ」のネタは本当に妙妙たるもので、オムニバス形式で一つずつ発表していくスタイルで、そのタイトルとなるボケの面白さはもちろんのこと、そのボケを噛み砕き広げる追加ボケが元のボケを加速的に面白くしていった。
その着眼点と掘り下げ方、そして一瞬で想像出来る言葉選びが「いつもここから」さんの強みであり、他の芸人が真似できない才能であったのだ。
さて本題だが、そんな山田さんのツイートが何故人気があるのか。それは間違いなく芸人の本分であるネタと同じくらい力を入れてツイートをしているからだろう。芸人のツイッターは面白いツイートをする人は多いが、さすがにネタと同等のクオリティではない。
しかし、山田さんのツイートを見る限り、本ネタと違わない品質で呟いているのだ。ちなみにこれは憶測でしかないが山田さんはTwitterというものをきちんと研究し、Twitterならではの「あるあるネタ」にしているのではないだろうか。本ネタでやっているようなボケではなく、もう少し見ている人の近くで起きているような“こぢんまり”としているボケになっている。
例えば
「この人と仲良くなれたらいいなって人としゃべる時、普通に話した方がきっとうまくいくのに力み過ぎて、変なところで声大きくなっちゃったり、妙にそわそわして目が泳いだり、テンパって余計な一言口走って『ああもうこれで完全に嫌われた』とか勝手に一人で落ち込んじゃうような人にドーナツあげたい」や
「メールとかリプとか、何度も書き直してから送ったけど返事がなかなか来ないと何か不安になってきて、『こんなこと書かなきゃ良かった』とか『違う内容のが良かったかも』とか思い始めて「そうですね」の『ね』つけない方が良かったかもとか、そんな細かい事まで気にちしゃうような人にドーナツあげたい」
といった、そこまで強烈ではなく誰でも一度は思ったり考えたようなことをネタにすることにより、見ている人との共感性が強まり、自然と“いいね”が付きやすくなる。
他にも形を変えて
「どけどけー!『アットホームな雰囲気の楽しい職場です』って求人募集があったんだ!バカヤロコノヤロメェ それならみんな辞めそうもないのに何でずっと募集してんだ!『みんな無口のしがらみのない職場です』だったらきっと一定の層が喜んで応募してくるぞ!」や
「悲しいときー!「こんな事に感動して泣くなんていい人だ」みたいな事言われたけど、ただ花粉症なだけのときー!」
など、呟きたいことのジャンルによって本ネタなども使い分け、見ている人を飽きさせないようにもしている。しかも、現代のSNSにおけるエンターテインメントはただ発信するだけではなく、見ている人からのコメントや反応があることにより成立する。共感性が高まると自然とコメントする人の割合も増え、エンターテインメントとしての価値を上げるのだ。
さらに、山田さんはこのハイクオリティな「あるあるネタツイート」をたまにではなく、定期的に呟くのだ。呟く内容が本ネタレベルで面白く、“いいね”をするほど共感出来て、それを定期的に見せてくれる。これだけの条件が揃っていれば人気が出て当たり前なのだ。
そして人気が出る決定的な理由は、見ている人が共感している部分が「些細な悩み」だったり「気にしている事」だということ。自分がした些細な行動が良かったのか悪かったのかわからず、心のどっかに引っかかっていたり、なんだか忘れられなくなってしまうということは生活している中で良くあること。大きな悩みではないのでいずれ忘れ去っていくのだが、山田さんのツイートはそんな小さなモヤモヤを笑いで昇華し解消してくれるのだ。
いずれ忘れてしまうことでも、忘れるより解消される方が何倍も良い。山田さんのツイートはそういう効果もあるのではないだろうか。
ストレス社会の現代において、少しでもストレスを軽減できるものに人々は食いつき癒しを求める。「いつもここから」が磨き続けてきた「あるあるネタ」はここにきて、現代人の癒しとなり、人々の『心の健康』を保つ薬になっているのかもしれない。
山田さんのツイートを見て「いつもここから」元気をもらっているという人も少なくないだろう。「いつもここから」という風変わりな名前が、時代と共に意味を持ち、ここにきてとてもしっくりきた気がするのは僕だけだろうか。
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