『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はマリオよりドンキーコングがお好き?
#映画 #任天堂 #マリオ #バフィー吉川
バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第13回目は、全世界で話題の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』をget ready for movie!
日本を代表する国民的キャラクター、スーパーマリオがついにアニメ映画化!
日本が誇るあのマリオがアメリカで映画化されることに不安があった人もいたかもしれない。だが、日本とほぼ同時期にアメリカでも「マリオ」シリーズは遊べる環境にあったことから、マリオに対する愛着は日本とそれほど変わらないのだろう。
実際にアメリカやカナダでは、『The Adventures of Super Mario Bros. 3』や『The Super Mario Bros. Super Show!』、『Super Mario World』といった日本未放送のアニメ作品がいくつも制作されている。
ちなみに、マリオの映画化と聞くと思い出してしまうのは実写作品の『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』(1993)である。いちおう『スーパーマリオブラザーズ』を題材とする作品で、主演のマリオ(中年男性)とルイージがブルックリン在住の配管工という設定。ネタバレになるので詳しくは伏せるが、おそらくオリジナルのオマージュと思われるシーンもあったりして、偶然なのかもしれないが何かと共通点はある。
マリオファンからは賛否両論(?)だった『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』の場合、ゲームの世界観をそのまま表現するのではなく、現代社会と無理にリンクさせようとしたのが難点だったのだろう。限られた技術の中でマリオの映画化にチャレンジしたこと自体は評価すべき点であると筆者は思ってはいるが、いろいろと違和感のある作品に仕上がっていたことは間違いなかった。
その後もマリオの実写化は何度か企画されていたものの、毎回難航したのも、そういった導入部分に違和感が発生してしまうからだったのだろう。
それが昨今、マーベルやDCなどが良くも悪くも映画においても「マルチバース(多元宇宙)」設定を普及させてきたことで、堅苦しく考えず「マルチバースだからなんでもアリ」という考え方にユーザー自体が巻き込まれつつある。例えば、今作で言えば「なぜこの世界にハテナブロックがあるのか、どういった原理なのか?」といったことは別に考えなくてもよくなっている。
また脚本のマシュー・フォーゲルは、以前に『レゴ® ムービー2』(2019)も手掛けており、マルチバースやメタ的な設定を活かすのがうまい脚本家である。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(2023)のジェフ・ラブネスなどのように、今後そういった分野に強い脚本家は忙しくなってくるはずだ。
任天堂はこのほかにも『F-ZERO』や『ゼルダの伝説』、『スター・フォックス』といった作品を映画化しようと企画してきたものの、実現には至っておらず、比較的映像化しやすいであろう『メトロイド』ですらいまだに映画化されていない。その中で、セガは『ソニック・ザ・ムービー』(2020)のユニバース化や『スペースチャンネル5』など、ほかの自社作品の映画化を進めている。
ソニーもプレイステーション・プロダクションズとして『アンチャーテッド』(2022)や『グランツーリスモ』などを映画化し、『ロックマン』や『バイオショック』などがNetflixで映画化。ゲームの映画化ラッシュに遅れをとっていた任天堂にとって、今作が公開3週間で世界興収1000億円突破という、ゲーム化作品の中では圧倒的な記録を出した影響力は大きいだろう。保留中のほかの任天堂作品の映画化が動き出す可能性があるのと同時に、それに刺激されたことで、今後さらにゲームの映画化が進むだろう。
続編やリメイク、コミックの映画化がハリウッド映画を占めているという映画業界全体を考えると、必ずしも良い傾向とは言えないかもしれないが……。
【ストーリー】
ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージ。謎の土管で迷いこんだのは、魔法に満ちた新世界。はなればなれになってしまった兄弟が、絆の力で世界の危機に立ち向かう……。
もうひとりの主人公は、みんな大好きドンキーコング!!
マリオやルイージ、ピーチ姫、超個性派俳優ジャック・ブラックによるクセの強いクッパといったキャラクターが活躍する、子どもも大人も楽しめるアドベンチャー作品に仕上がっている今作。
一方で、今作を観て誰もが思うのが、「ドンキーコングが目立ちすぎているのでは?」ということだろう。あくまでマリオが主人公ということで花は持たせてはいるが、なんだかんだで全編にドンキーコング愛が溢れている。
今回、任天堂と共同で制作したイルミネーションという会社は、絵本作家ドクター・スースの作品に影響を受けていることもあって、人間のキャラクターよりも動物のキャラクターのほうに愛着があるというのもあるのかもしれないが、それだけではない何かを感じる。
それは何かというと、答えは単純で、アメリカ人はゴリラのキャラクターが(たぶん)大好きなのだ!!
実際、アメリカにはハンナ・バーベラの『ゴリラのゴンちゃん』をはじめ、『フラッシュ』のグロッド、『スポーン』のサイゴーなどなど、アメコミやアニメにおいて多くのゴリラのキャラクターが存在している。その中でもドンキーコングは、『キングコング』に続いて、2番目に愛されているゴリラだといえる。
また、ドンキーコングがアニメーションとして蘇るのは、1997年から放送されていたCG作品の『Donkey Kong Country』(日本でも『ドンキーコング』として1999年に逆輸入された)以来というのも大きい。
というわけで、アメリカ国民が動くドンキーコングを欲していたからなのか、今作ではドンキーコングの活躍がやたらと描かれている。ほかにもクランキーコングやファンキーコングなども登場し、世界観を広げようとしている狙いも感じられる。
ちなみに正式な発表はないものの、すでにドンキーコングの単独映画も噂されているほど。
その点では、アメリカで映画化されたマリオ作品“らしさ”思い知らされるだろう(仮に日本が映画化していたとしたら、これほどまでにドンキーコングに尺を使うだろうか……?)。
とはいっても、日本にもドンキーコングファンは多いはず。つまり、ドンキーコングファンには2倍楽しい作品になっているのだ。
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
2023年4月28日(金)から全国公開
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ(イルミネーション)、 宮本茂(任天堂)
声の出演:クリス・プラット、アニャ・テイラー=ジョイ、チャーリー・デイ、ジャック・ブラック、キーガン=マイケル・キーセス・ローゲン、フレッド・アーミセン、ケヴィン・マイケル・リチャードソン、セバスティアン・マニスカルコほか
日本語版吹替声優: (マリオ) 宮野真守、(ピーチ姫)志田有彩、
(ルイージ)畠中祐、(クッパ)三宅健太、(キノピオ)関智一、(ドンキーコング)武田幸史
公式HP:http://mario-movie.jp/
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