トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『インフォーマ』から予備校生への伝言

『インフォーマ』から予備校生への伝言

沖田臥竜氏

現在、Netflixで世界配信中のドラマ『インフォーマ』。その原作小説(サイゾー文芸部より刊行)の作者である沖田臥竜氏が5月に大手予備校で講演を行うという。勉強とは無縁の中卒の不良でありながら、夢だった小説家になることができた同氏が、一流大学合格を目指す若者たちに伝えたいこととは何なのか?

5月20日、河合塾の天王寺校で講演会を開催

 基本的に“その他大勢”に埋もれてしまうのが嫌だと思って生きてきたつもりだった。だがこうして振り返ってみると、平凡だがささやかな暮らしに恋焦がれたりするのだ。実に厚かましい話である。

 さて、前置きはこれくらいで。

 きたる5月20日13時、河合塾の天王寺校(大阪)にて行われる文化講演会で講演することになった(詳細はこちら)。

 中卒のクソが講演だと…と聞こえてきそうであるが、黙れ黙れである。決して、刑務所のことを「大学だ!」なんて呼んでいる人種と一緒にするなである。あんなところ、悪いことさえすれば、老若男女問わず入所させてくれるのだ。一応、試験というか裁判はあるが、その気になれば勉強などせずとも強引に入所させてくれる。大学とは大違いなのだ。

 少し話がそれるが、現在、監修をしているある海外ドラマで、俳優部の人が刑務所を「大学」と呼ぶシーンがあった。対して私は、その画面には合わない比喩だと思ったので、「大学はないんじゃないですか~」と果敢にも意見したのだが、海外の監督に軽く却下されてしまった……余談であった。

 実はこう見えて私は、小学校1年生から塾に通っていたりする。私の地元、兵庫県尼崎では有名な木村塾というところだ。ここの一期生は何を隠そう私なのだ。このコラムの文章から漂う知的さを見ても、小1から塾に通っていた秀才ぶりがプンプンしてくるだろう…というのは冗談で、通っていたのは本当だが、一切勉強をしなかった。それも頑なにだ。じゃあ何をしていたかというと、塾に通った6年間、授業の邪魔しかしていない。何だったら、それを見兼ねて、マンツーマン授業の家庭教師をつけられたこともあるが、サシになっても、勉強なんて微塵もしていなかった。

 しいて成果と言うならば、大学生だった家庭教師のあんちゃんと修復不可能なくらい仲が悪くなったくらいだ。そういえば、中3の時の担任の先生は、若くて熱苦しいほどの熱血漢だったが、私を受け持ってしまったばかりに自信を喪失してしまい、中学校から小学校の教師へと転職してしまうくらいだった。私からしたら若気の至りというヤツである。環境によって、グレるグレないというのはウソであることを私は証明し続けた。

 ただ、ふと思うときがある。もしもあの時、ちょっとでも勉強していれば、今の人生はもっと変わっていたのかもしれないな、と。そうしていれば、ささやかもしれないが、冒頭で触れた平凡な幸せを手に入れることだって、できていたかもしれない……と、書いていて思う。多分、無理だな。

 少なくともちょっと勉強したくらいでは、こうして大手予備校の文化講演会で講演してほしいと言われることはなかったのは確かだ。

 人生において、頑張らないといけないときは確かにあって、すぐに結果に繋がらなくとも頑張り続けていれば、自分への評価が変わっていくことがあるのだ。テレビに出て有名になった、何かを成し遂げて自分の存在が知れわたった……たとえば、今だったら、YouTubeでもTikTokでも、有名になるきっかけは何でもよい。そして、仮に人気が出て変わるのは、世間であって自分自身ではない。何かで有名になってみろ。それでも見てる景色は同じだぞ。

 もし、そこで変われる人間がいたとしたら、それは申し訳ないが、足元すら見えなくなってしまっているのではないか。

 私は、確かに塾に通っても頑なに勉強しなかった。それは今も昔も変えることのできない現実だ。誰のせいでも誰かのためでもない。全ては自分のためにやっていると言い切れる人間こそが尊いのではないだろうか。

 それにしても、予備校生の諸君はよろしいな~。大学に受かれば、楽しいキャンパスライフですか。テニスサークルなんか入っちゃたりして、よろしおまんな……と、こんなことを言える講師が果たしているだろうか。なぜ、少なくとも私が沖田臥竜として知られるようになったかと言うと、人の真似をするのが大嫌いだったからだと思う。みんなの見ている前で、一生懸命やってる素振りがかっこ悪く感じたのだ。人が話している言葉を、自分の言葉のように話す人間を恥ずかしく思えたのだ。

 感性とはそれぞれで、世界観とは本来、人の数だけなくてはならない。他人と同じような考えになることに自分自身で疑問を抱かないのは、ネット社会にどっぷりと浸かってしまい、思考力を低下させてしまっいるからではないのか。私が言いたいのは、よく使われている「攻める」ではない。どれだけ今を面白くできるかだ。面白く生きていく果てには、哀しみもあれば、喜びもある。常に考えているからこそ、人とは表現が変わってくるのである。それはつまり、見たもの聞いたものを正しく分析する能力にも繋がっていくのだ。

 文化講演会では、どうせならば聞いたことのない話をしたいと思う。それを面白いと予備校生の人たちに思ってもらえるのが、私の仕事ではないだろうか。

 ありきたりの「だから今を頑張ろう」みたいなセリフ聞き飽きただろう。

 では、予備校生諸君。準備は良いだろうか。

(文=沖田臥竜/作家)

河合塾文化講演会の詳細は【こちら】

 

小説『インフォーマ』

沖田臥竜/サイゾー文芸/税込1320円
amazonでの購入はこちら

週刊誌記者、三島寛治の日常はひとりの男によって一変させられる。その男の名は木原慶次郎。クセのあるヤクザではあったが、木原が口にした事柄が次々と現実になる。木原の奔放な言動に反発を覚えながらも、その情報力に魅了された三島は木原と行動をともにするようになる。そして、殺人も厭わない冷酷な集団と対峙することに‥‥。社会の表から裏まで各種情報を網羅し、それを自在に操ることで実体社会を意のままに動かす謎の集団「インフォーマ」とはいったい何者なのか⁉パンデミック、暴力団抗争、永田町の権力闘争、未解決殺人事件…実在の事件や出来事を織り交ぜ生まれた「リアル・フィクション」の決定版!


ドラマ『インフォーマ』
現在は、Netflixで全世界配信中


4分で振り返る『インフォーマ』第1話~第5話 | Netflix Japan
 
桐谷健太演じる主人公で、裏社会・政治・芸能など、あらゆる情報に精通するカリスマ的情報屋“インフォーマ”木原慶次郎と、佐野玲於(GENERATIONS)演じる週刊誌「タイムズ」記者・三島寛治が、警察・ヤクザ・裏社会の住人たちを巻き込み謎の連続殺人事件を追うクライムサスペンス。事件の背後に存在する謎の集団のリーダーで、木原の因縁の相手となる男を、事務所移籍後初のドラマ出演となる森田剛が演じる。

作家・小説家・クリエイター・ドラマ『インフォーマ』シリーズの原作・監修者。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)がドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)、『ブラザーズ』(角川春樹事務所)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

最終更新:2023/05/01 12:21
ページ上部へ戻る

配給映画