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日刊サイゾー トップ > インタビュー  > 石山蓮華、推しとつながり続けるために
「推しからもらった光で、社会を照らしたい」

電線愛好家・石山蓮華、推し=好きなものとつながり続けるために

盛らずに嘘をつかずに、
関心を手放さないこと。

電線愛好家・石山蓮華、推し=好きなものとつながり続けるためにの画像4

──推しから受けた光でまた別のところを照らす、それこそ未来への光も考えていくというのは、推すことの醍醐味のような気がしました。楽しみもある一方で、電線に関わる無視できない社会問題に対して、石山さんはどういう行動を取られているんですか?

石山:正直、常に社会問題を気にかけているわけではありません。「ここぞ」と思ったときに、自分でできることをする。ひとつ意識しているのは、盛らずに嘘をつかずにやっていきたいと思っています。たとえば東日本大震災のことであれば、原発の状況への関心を手放さない。はっきりした行動が取れるわけではないですが、聞かれたときに答えられるように自分の意見を持っておく、本やニュースに目を通すなど、小さなことでも自分にできることを積み重ねていこうと思っています。

電線愛好家・石山蓮華、推し=好きなものとつながり続けるためにの画像5

──好きなもののネガティブな情報を見ないようにするのではなく、知った上で自分にできることを考える、というのは大事なことですよね。

石山:モヤモヤを抱えて、対処しないまま押し通すと、いつのまにか傷口が広がって痛くなってくるという経験をしてきたので、傷はしっかり見たほうがいいですね。そして、すぐに答えを出そうとするのではなく、信頼している人にモヤモヤを話してみたり書き出してみたりして、手当てをすることが大事なのかなと思います。

──推しているなかで、倦怠期が訪れるときもあります。石山さんも電線との倦怠期があり、「はっきりしたブレイクポイントはわからず抜けていた」と書かれていましたが、いま振り返ってみてどのように乗り越えられたと思われますか?

石山:物理的な話なんですけど、私は電線をカメラで撮って愛でるタイプなので、逆に撮ることをやめてみたんです。いつからか撮ることが目的になってしまっていたので、ただ見るようにしてみたら、違った角度の魅力を見つけられるようになりました。あとは、盛り上がっていない時の自分の気持ちに素直になって、一度距離を取ってみる。“強火”こそ尊い関係性だと思いがちですが、いろんな温もりがあっていいですよね。前は、どこかに行ったら必ず電線を撮ってSNSにアップすることを自分に課していたんですけど、今はいったんSNSを目的にしないようにしています。楽しい範囲で、自分の気持ちに素直に、できることをやりたいですね。

──石山さんのように表に出られる方だと、推しの魅力を発信する機会もあり、自分だけで愛でるのではなく、他者の期待に応えることへの葛藤もあるのではないかと思います。本著でも「女優『なのに』電線が好き」という「キャラ付け」や「ギャップ売り」に対する葛藤を率直に綴られていましたが、他者への発信と自分の中で大切に愛でることの両立は、どのようにされているのですか?

石山:出始めは、前の事務所の方が電線好きをおもしろがってくれて、メディアへのパッケージングとして“コンサバ×電線”というインパクトで売り出そうとしていたんです。でも、それこそ、自分に嘘をつき続けることがしんどくなってしまって。“女性=若さ、明るさ、素直”みたいな世間的なイメージの“女子”を着飾ってみることも、最初は楽しかったんですが、だんだんと疑問を覚えるようになり、そこを売り物にしなくても自分のままで電線愛を語りたいと思うようになりました。いっときは、反動でボーイッシュな格好をしたりメイクを薄くしたりしたんですけど、今は「自分のままなら、なんでもいいか」と思っています。

──前作の『犬もどき読書日記』で、他者のまなざしをどこまで取り入れるか、という葛藤について語られていましたよね。

石山:犬はどんな犬種、年齢であっても、その存在だけで可愛い。自分の軸を“犬みたいに生きる”にすると、その日によってコンディションが違うのも受け入れられるし、他者を犬だと思って見るとどんな人にも可愛げがあることに気づくんです。社会的に正しい姿にあまり縛られず、そこからはみ出てしまった自分も守るようにすることが両立の軸にある気がします。自分の思いを大事に選択して、むかつくことがあったらニコニコしなくてもいい。自分のままでいたら自然と味方が増えてきて、こうやって新しい挑戦の機会もいただけたので、今のところは自分のままで頑張りたいです。

羽佐田瑶子(ライター)

ライター。主に映画、女性にまつわるインタビューやコラムをカルチャーメディアで執筆。『映画の中の女同士』、QJ webにて漫画エッセイを連載中。興味はジェンダーと岡崎京子と女性アイドルについて。

Twitter:@yoko_hasada

はさだようこ

最終更新:2023/05/16 13:00
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