『ハロウィン THE END』シリーズ13作目にしてついに完結、ブギーマンというメタファー
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バフィー吉川の「For More Movie Please!」
第12回目は、ブギーマンでお馴染みの『ハロウィン THE END』をget ready for movie!
現代の闇をそのまま描いたかのような社会派ホラー「ハロウィン」シリーズ。そんな社会派の要素を現代の社会問題と組み合わせることで、より際立たせたのが2018年から始まった、デヴィッド・ゴードン・グリーンによる「ハロウィン」シリーズだ。
そんなデヴィッド版「ハロウィン」シリーズの13作目にして完結編となるのが、4月14日から公開中の『ハロウィン THE END』である。どうも日本ではシリーズものホラーの勢いが下火のようで、前作『ハロウィンKILLS』(2021)やリブート版『キャンディマン』(2020)の不調もあってか、全米でヒットしたはずの『スクリーム』(2022)も未公開のままソフトスルーになるという信じられない事態が起きている。
「ハロウィン」シリーズも過去に『ハロウィンⅢ』(1982)~『ハロウィン6 最後の戦い』(1995)までは、イベント上映を除けば未公開のままソフトスルーになっているだけに、日本で劇場公開されるかと不安にもなったが、とりあえず劇場公開されたことには一安心。
前作『ハロウィンKILLS』でついにブギーマンことマイケル・マイヤーズを最後まで追い詰めたが、肝心なところで詰めが甘く逆転されてしまったことから、暴力ではマイケルに勝てないという結論が出たのだが、ならばどう倒すのか……。
可能性が残されているとすれば、愛とでもいうのだろうか。と思っていたら、今作の中で親切にも愛では倒せないという回答もしてくれている。
ローリーとマイケルの因縁の対決は決着がつくのだろうか。どうやったら今作が本当に完結となるのだろうか……。その結末を見届けてもらいたい。
【ストーリー】
殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズが再びハドンフィールドを恐怖に陥れた事件から4年が経ち、街は少しずつ平穏な日常を取り戻しつつあった。マイケルの凶刃から生き延びたローリー・ストロードは孫娘のアリソンと暮らしながら回顧録を執筆し、40年以上にわたりマイケルに囚われ続けた人生を解放しようとしていた。しかし、暗い過去をもつ青年コーリーが、4年間、忽然と姿を消していたマイケルと遭遇したことをきっかけに、新たな恐怖が連鎖し始める。ついにローリーは、長年の因縁に決着をつけるべく、マイケルと最後の対峙を決意する……!!
ブギーマンは目に見え、実在するメタファー
少しネタバレになってしまうが、今作の冒頭は2019年からはじまる。2019年というと、設定としては『ハロウィン』(2018)と『ハロウィンKILLS』の間だ。21歳のベビーシッターのコーリー・カニンガムが少年の子守をしていると、その少年が突然姿を消し、「助けて!」と叫びだす。このときにコーリーが思い浮かべたのはブギーマンの存在だ。ハドンフィールドという町に住む人々は常にブギーマンの存在に恐怖しており、それが都市伝説ではなく、実際に起きていることだと知っているからこそ、必要以上に不安を掻き立てられるのだ。
それは結果的に少年のイタズラで、コーリーは部屋に閉じ込められてしまう。コーリーはこの時に必要に外に出たいと叫び、ドアを蹴り飛ばすと、外にいた少年は転落し、死んでしまう。脈略もない事件に思えるかもしれないが、この事件はブギーマンへの具体的な恐怖がもたらした事件であり、いかにハドンフィールドの人々の心にその恐怖や不安が根付いていることを表していて、直接的でなくてもブギーマンへの恐怖や不安が二次被害を巻き起こし、それが現在進行形であるということを啓示しているのだ。
そして、その事件から4年後が今作の舞台となっている。
以前、『ハロウィンKILLS』を紹介した際に、2018年版のテーマが「因縁」とするならば、『ハロウィンKILLS』のテーマは「暴力」と書いたが、今作のテーマは「継承」または「呪縛」といえるだろう。
実は、最後のテーマが「継承」になることは、2018年版のラストで伏線が張られていた。それはローリーの孫、アリソンの手元にあったナイフが必要以上に映されていたからだ。
「継承」というテーマは、今までにも『ハロウィン4 ブギーマン復活』(1988)から『ハロウィン5 ブギーマン逆襲』(1989)にかけてジェイミー・ロードという少女を通して描かれていたが、今作はそれをより具体的に、そして現代的なアプローチから描いたものといえるだろう。
アリソンがジェイミー的な立ち位置でもあるが、少年を転落死させてしまったコーリーもまたジェイミー的であるといえる。立ち位置は同じでも、そこまでに至る経緯や環境が異なる2人が出会い、物語が展開されていく流れからも、恐怖や不安を対照的にどう消費していくかということを描いていて、監督のデヴィッド・ゴードン・グリーンがいかに「ハロウィン」シリーズのテーマを理解しているかということが伝わってくる。
マイケル・マイヤーズはブギーマンのほかに“ザ・シェイプ”という名前があり、これは「かたち」という意味だ。それは邪悪、暴力、狂気、怒り、哀しみなど、目に見えないものの「かたち」を全て表しているのではないだろうか。
つまりマイケル・マイヤーズは目に見え、実在するメタファーなのだ……。
これで本当に完結なのかという疑問も残るが、デヴィッド・ゴードン・グリーン版は完結に違いないだろう。とてつもない違和感を残しながらも綺麗に終わってくれている。
とはいえ『13日の金曜日』や『悪魔のいけにえ』などのように、全てがつながっているわけではない。実際に今作も1作目の『ハロウィン』(1978)の続編という設定(1981年の『ハロウィンII』に少し足を突っ込んでる感じもするが……)であり、『ハロウィンH20』(1998)も時系列が異なっているし、ロブ・ゾンビ版『ハロウィン』(2007)に至ってはシリーズとは完全に孤立した内容になっている。
ホラーアイコンとしてブギーマンが存在している以上、時代に合わせた新たな解釈で、またいつかブギーマンは復活するだろう。
『ハロウィン THE END』
全国公開中
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ポール・ブラッド・ローガン、クリス・ベルニエ、デヴィッド・ゴードン・グリーン、ダニー・マクブライド
出演:ジェイミー・リー・カーティス、アンディ・マティチャック、ローハン・キャンベル、ウィル・パットン、カイル・リチャーズ、ジェームズ・ジュード・コートニーほか
2022年/アメリカ/カラー/スコープサイズ/英語/原題:HALLOWEEN ENDS/111分/R15+
配給:パルコ ユニバーサル映画
Ⓒ2022 UNIVERSAL STUDIOS
公式サイト: https://halloween-movie.jp/
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